New Eyes Niigata #12 アロナ

New Eyes Niigata

2026.09.25

目に映るもの、出会う人、そして日々の生活……海外から新潟にやってきた人たちは、今、この街でどんなことを思い、感じているのでしょう。シリーズ『New Eyes Niigata』では、海外出身の皆さんが歩んできたこれまでの人生の物語を振り返りながら、彼らが「新潟」という新しい環境で見つけた、小さな発見や気づきをお伝えしてきました。

 

本企画ラストの第12回目は、セネガル・ダカール出身のアロナさんです。2016年に来日し、現在は船のメンテナンスをお仕事にしています。アニメの世界に憧れて日本へ飛び込んで来たというアロナさん。どのような経緯で新潟へ移住したのでしょうか。来日当時のエピソードから新潟での生活、そして現在の目標に至るまでの歩みをうかがってきました。

 

 

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu

 

亀仙人に会えると信じて来日。東京の喧騒から逃れ、新潟で壁を越えるまで。

――2016年にセネガルから来日されたとのことですが、日本へ来ようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

アロナさん:日本のアニメです。昔から『ドラゴンボール』や『NARUTO』が大好きで。短大卒業後、家から一歩も出ずにずっとアニメばかり見ている時期があったんです。それを見た姉から「そんなに好きなら日本へ行けばいい」と言われて。最初は冗談だと思っていたんですが、そのひとことをきっかけに「行ってみたい」という気持ちがどんどん膨らんでいきました。当時は本気で「日本へ行けば亀仙人に会えるんじゃないか」とワクワクしていましたね(笑)

 

――アロナさんから見て、日本のアニメのどんなところが面白いと感じますか?

アロナさん:ストーリーの深さです。ただのアクションではなくて、「仲間を大事にする」とか「自分の夢を諦めない」といったメッセージもある。私が求めているのはそこで、言葉が自分に向けて直接語りかけられているような気がするんです。

 

 

――なるほど。そんな期待を胸に来日されて、最初は東京の日本語学校に通われたそうですが、実際の生活は思い描いていた通りでしたか?

アロナさん:頭の中では「日本=秋葉原」みたいなイメージもあったのですが、実際は違いました……。最初の3ヶ月は姉が学費や寮費を払ってくれていたので遊び歩いていたんですが、お金が底をついてしまって。そこからアルバイトを探して、学校と仕事と家の往復という生活がはじまりました。「これからは将来のために考えなきゃ」と現実を見るようになりましたね。

 

――そこから、どういう経緯で新潟へ?

アロナさん:東京は人が多すぎて、だんだん人との接触が苦手になってしまったんです。1年半ほど経って卒業が近づいたとき、先生から新潟を勧められました。クラスメイトたちと一緒にバスで見学に来たんですが、東京と比べて静かで、自然が溢れる環境を見て「こっちにしよう」と即決しました。他の友達は「何もない」と言っていましたが、私はチャレンジが大好きなので、飛び込んでみることにしたんです。

 

――そうして飛び込んだ新潟では、どんな日々が待っていたんでしょうか?

アロナさん:移住してすぐに妻と出会い、1年後には結婚しました。今では3人の男の子にも恵まれて、毎日が修行みたいに賑やかです。ルーツであるセネガルの逞しさと、日本で学んだ誠実さの両方を受け継ぐ、強い男に育てたいですね。

 

 

――お仕事探しの方は順調でしたか?

アロナさん:それが、仕事探しの方は簡単にはいきませんでしたね。最初は妻の父親の手伝いで釣り船の仕事をしたものの、私がひどい船酔いをしてしまって断念したんです。それで、セネガルでメカニックの勉強をしていた経験を生かして旋盤工場に入ろうと、入りたい会社のリストを持ってハローワークに通いました。

 

――そこでご自身の経験を生かせる職場を探したんですね。

アロナさん:でも、窓口の担当者さんから何社も電話をかけてもらったんですが、どこも「外国人はちょっと…」と門前払いでした。何件も断られて心が折れそうになったんですが、「なんとか面接だけでも受けられないか頼んでみてほしい」と担当者さんにお願いして粘ってもらったんです。そうしたらようやく面接をさせてもらえる工場が見つかって。実際に会って話してみたら採用してもらえて、結局そこから8年間、その工場で旋盤職人として働きました。今は新しい職場で、船のメンテナンスや上げ下げの作業をしています。旋盤も船のメンテナンスも電気工事も、技術の根本は世界共通ですから、今は一生懸命技術を学んでいるところです。

 

職人の技術を受け継ぐために。新潟で描くこれからの夢。

――アロナさんの出身地であるセネガルについても教えてください。

アロナさん:西アフリカにあって、海沿いのとてもいい国です。半分は緑があって、北の方は砂漠になっています。私は首都のダカール出身なんですが、砂が多くて、朝は暑くても夜は結構冷え込むんですよ。

 

――新潟の気候にはすぐに慣れましたか?

アロナさん:日本の冬は今でも慣れません。セネガルの寒さとは全然違います。セネガルは夜になると床から底冷えするような寒さなんですが、新潟の冬は、冷たい風が肌に直接突き刺さってくるような痛さがあるんです。前の旋盤工場はストーブの隣で作業できたからまだよかったんですが、冷え切った鉄の塊を一日中手で触って削る仕事なので、いつも手がパンパンに腫れて大変でした。今の船を扱う仕事は転職したばかりで、冬を迎えるのは今年がはじめてなんです。ほとんど外の冷風に直接晒される作業になるので、冬はどうなるかすごく心配しています(笑)

 

――海沿いの冬は、また一段と冷え込みますからね……。気候もそうですが、やはり食文化も日本とは全然違うんですか?

アロナさん:主食はお米で、「チェブジェン」という魚と野菜の炊き込みご飯をよく食べます。世界無形文化遺産にも登録されているくらい、私たちの自慢の料理なんですよ。ほかにも玉ねぎをたくさん使った煮込み料理など、日本のカレーライスやチャーハンに少し似ていますね。ただ、セネガルで美味しいお米を作ろうとしても、技術の問題で石が混ざってしまうんです。だから田舎の方へ行くと、おばあちゃんたちがベランダで1個ずつ、手で石を探して取り除いています。

 

――新潟のお米はいかがですか。

アロナさん:最高です。新潟のご飯は本当に美味しいですし、特にうなぎと一緒に食べたときはたまらなかったですね。だからこそ、「いつか新潟の田植え機や収穫機を持っていって、みんなをもっと楽にさせたいな」と思います。それが私のひとつの夢ですね。

 

――今日お持ちいただいたその砂絵は、セネガルのものですか?

アロナさん:はい、これはセネガル各地の自然の砂を集めて描かれたものです。絵の具で色を塗っているわけではなくて、全部違う色の砂を貼り合わせて作っているんですよ。ここには、水や食べ物を運んだりして、家族を守るために働くお母さんたちの日常が表現されています。

 

 

――全部自然の砂なんですか! 自然の中でこんなにいくつも鮮やかな色があるなんて驚きです。隣にあるカラフルなバスのおもちゃも気になっていたのですが。

アロナさん:これもセネガルのものです。昔から走っているバスなんですが、いくらボロボロになっても現地の職人が鉄を叩いて直しながら大切に乗っているんです。物を直しながら長く使うという点では、今の私の仕事にも通じる部分がありますね。こういうものを部屋に置いていると、いつも自分のルーツであるセネガルを思い出すことができます。

 

 

――今後、新潟でやってみたいことや目標はありますか。

アロナさん:やりたいことがありすぎて困っています(笑)。農業をやって田んぼを持ちたいし、牧場で牛も飼いたい。家の裏に旋盤を置いて鉄を削りながら、船の仕事も続けたい。あとは、スイスに住んでいる姉をはじめ、世界中の人に美味しい新潟のお米を食べさせたいので、海外でおにぎり屋もやってみたいですね。

 

――次々とやりたいことが溢れてきますね。その原動力はどこから来るんですか?

アロナさん:燕三条の職人さんや農業をやっているお年寄りが「後継者がいないから自分の代で終わりだ」と言っているのを聞くと、すごく悲しくなるんです。もし私が分身できたら、全員のところへ行って技術を引き継いで助けたいくらいです。日本の素晴らしい技術がなくなるのは本当にもったいないですから。まずは来年、田植えの手伝いからチャレンジする予定です。

 

――最後に、新しいことにチャレンジするのを躊躇している人へメッセージをお願いします。

アロナさん:周りから「無理だよ」と言われると、私は逆に「それは間違っていると証明したい」と燃えるんです。自分の壁やリミットを勝手に作らないこと。まずはやってみて、失敗したらそこから学べばいいんです。チャンスを与えられて本気でやれば、誰だってできますよ。

 

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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