入園アイテムづくりから 布作家に。
「5312labo」
ものづくり
2026.09.27
ミシンを動かしていると「生きている意味をひしひしと感じる」というyukiさん。子どもの入園グッズづくりからはじまったものづくりは、カフェでの委託販売やイベント出店、エプロンのオーダーへと広がっていきました。現在は「5312labo」として、エプロンを中心に布小物を制作しています。自分のペースを大切にしながら好きなものを作り続ける原動力について、そしてこれから実現したいことを聞きました。
yuki
(5312labo)
1978年青森県生まれ。大学進学を機に新潟に移る。建築学科を卒業後は住宅会社に勤務し、結婚・出産を経て、子どもの入園グッズづくりをきっかけに布小物の制作をはじめる。「merciLaboratory」としてカフェなどへの委託販売やイベント出店を経験。休業期間を経て、2019年から「5312labo」としてエプロンを中心とした布小物を制作している。
カタカタとミシンを動かす。
その時間が、生きる喜び。
――yukiさんが布小物を作るようになったきっかけを教えてください。
yukiさん:子どもの入園時に、手提げ袋やお弁当袋などがいろいろ必要になりますよね。それで布小物を自作するようになって。自分の子どもの分、今度はお友達の分って、大人でも使えるバッグなど、だんだん作るものが増えていったんです。
――それはどれくらい前のことですか?
yukiさん:もう25年くらい前ですね。「どうもあの人がハンドメイドで布小物を作っているみたい」と聞きつけてくれた人が声をかけてくれて、カフェの一角に作品を置かせてもらったり、イベントで販売したりするようになったんです。その時期は「merciLaboratory」というショップ名で活動していました。
――それからずっとハンドメイドをされているんですか?
yukiさん:入院を2回経験して、一旦制作を休止していた期間はあります。でも好きなんですね。自由に動けるようになると、やっぱりまた作りたくなるんです。なんていうか、ミシンでカタカタしていると生きている意味がひしひしと感じられて。細胞から身体が喜んでいるような喜びがあるんです(笑)
――子育てをしながらミシンに向かうって、どんな時間でしたか?
yukiさん:最初は「やらなくちゃいけない」という感じだったんですけど、あの頃はよい息抜きになっていたのかな。狭い場所で作業するので、ガタガタと大きな音がして。懐かしいですね。
――きっと子育て中で制作時間は限られていたでしょうに。
yukiさん:よくやっていたな、と思います。30代の頃は、好みのお店の人と知り合って、「この人にきっと似合うだろうな」と思うエプロンを作って、売り込みに行ったこともありました。イベントにも積極的に自分の作品を持ち込んで。もう今の自分では考えられない、ちょっとした黒歴史です(笑)。でもそれくらい情熱的に動いていたんだから、憧れもあります。
――その頃は、どんな気持ちで活動していたんですか?
yukiさん:お気に入りのカフェやショップには、何度も足を運んでいました。建築を学んでいたので、お店に入ると空間のつくりやインテリアに自然と目がいくんです。お店の雰囲気には、オーナーさんやスタッフさんのセンスがそのまま表れていますよね。空間を眺めながら「この人にエプロンをつけてもらったら、すごく似合うだろうな」なんて勝手に想像を膨らませて。今はもうね、そんな自信がないんですけど。歳を重ねて身の程を知ったのかもしれません(笑)
――「作ることが好き」という気持ちは、昔からあったんでしょうか?
yukiさん:子どもの頃、家族やお友達にフェルトで作ったマスコットとかどんぐりに爪楊枝を刺したお手製のコマなんかをプレゼントしました。拙い贈り物なんですが、「ありがとう」と言われると、「認めてもらえているんだ」っていう喜びがありました。あのときの気持ちがずっと原動力になっています。

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作ることを楽しむうちに、
作るものが増えていって。
――yukiさんは「エプロン作家」と呼ばれることもあるそうですが、実際にはどんなものを作っているんですか?
yukiさん:エプロンの他には、ワンピースやトップス、ボトムスなども作りますよ。でもエプロンを選んでもらうことが多いですね。素材は使い勝手のよいリネンが好きです。
――でも、どうしてエプロンだったんですか?
yukiさん:「うちで販売してみませんか」と誘ってくださったのが、食品を扱うお店の方だったんです。それで「エプロンを作ってみて」ということになったんですね。そのお店に通うお客さんから口コミが広がっていって、いろんなパターンのエプロンを作りました。私は普段エプロンをつけないので、まずは本を買いに行って。いろいろな形がある中で、シンプルなスタイルのものを自分のスタンダードにしました。
――最初の頃から、ハンドメイド作家として活動しよう、という気持ちはあったんですか?
yukiさん:そう考えていたわけではないんですけど、周りから「お店に置いてみたらどう?」と声をかけてもらったり、「これも作れる?」と頼まれたりして、少しずつできることが増えていった、みたいな感じですね。
――ずっと作り続けられる秘訣はなんでしょう?
yukiさん:とにかくお裁縫が好きなんですね。実際はオーダーがひとつもない月もたくさんあるんです。そういうときは、自主練をするようにしています。感覚を忘れてしまわないように。


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独学だから精一杯丁寧に。
エプロンの意外ないいところ。
――今日着ていらっしゃるお洋服も手作りですか?
yukiさん:たくさん着て、少しくたびれてきていますけれど(笑)。お洋服も作りますけど、服飾を専門的に勉強してきたわけではないので、着てくださる方の身体にぴったりフィットするものを作るのは難しくって。その点、エプロンってすごくいいんですよね。スタイルを選びませんから。
――なるほど、その利点がありますね。
yukiさん:専門的な知識があれば、多くの人に合う服を作る技術が身につくのかもしれません。でも、独学だからこそ「精一杯丁寧に作ること」をずっと大切にしています。日常的にエプロンを使う方って、やっぱり素敵なんですよ。丁寧にお料理をしたり、好きなことに手をかけたり。「素敵なみなさん」に支えてもらっています。
――今後取り組んでみたいことはありますか?
yukiさん:ずっと考えていることは、自分の作品の型紙と制作手順書を作ってしっかりと残すこと。今は動画でも作り方を知ることができますが、私は紙が好きなので。手元に置いて何度も見返したくなるような、紙の冊子として残したいんです。
――それは大勢の人に作ってもらうために、ですか?
yukiさん:正直に言えば、自分のためかもしれません。でもコロナ禍で手芸店から糸が消えたとき、「やっぱり人は作ることが好きなんだな」と、ミシン仕事の可能性を実感したんです。「好みの布で自分の好きなものを作りたい」と思っている人は、きっと少なくないはず。だから自分のためでもあり、そうやって作ることを楽しみたい人のためにもなったらいいな、という思いもあります。これだけ世の中にモノがあふれて何でも選べる時代に、新しいものを作り出す罪悪感みたいな気持ちが心のどこかにあるのも事実なんですけれども。
――実際にyukiさんの作品を見ることができる展示会などの予定はありますか?
yukiさん:いつか自宅をお店みたいにして、お客さまをお迎えできたらいいな、と思っています。リビングに作品を並べて、「陳列はどうしようかな」「お客さんの動線は大丈夫かな」なんて、架空のショップを想像しながらイメージトレーニングを重ねています(笑)


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