「作りたい」を叶えた、藁細工。
「原田甚助農園」の原田さん。

ものづくり

2026.07.18

text by Ayaka Honma

長岡市でしめ縄をはじめとした藁細工を製作している「原田甚助農園」の原田さんは、藁細工を作りはじめる前はまったく違うお仕事をされてきたのだとか。原田さんが藁細工を作りはじめたきっかけや、日々作っている藁細工のこと、ものづくりへの向き合い方など、いろいろお話を聴いてきました。

Interview

原田 悠歩

Yuho Harada

1984年長岡市出身。高校卒業後は専門学校に進学し、インテリアや建築を学ぶ。紙を加工する会社で働き、結婚と出産をきっかけに退職。その後は農家や販売の仕事も経験し、3人目の子どもの妊娠をきっかけにしめ縄や藁細工を作りはじめる。現在は藁細工の製作をメインに、旦那さんの実家の家業である「原田甚助農園」も手伝う。作業のおともは、BSNラジオなんだとか。

ものづくりがしたい。
その気持ちに、突き動かされてきた。

――今日はよろしくお願いします。まずは、原田さんのこれまでのことを教えてください。

原田さん:小さい頃からインテリアに興味があって、ただ家具を見るというより、収納術の方に興味があったんです。主婦雑誌を読むくらいマニアだったんですよ。専門学校では建築を学びんだ後は、卒業後は紙を加工する製造業で働くことにしたんです。

 

――建築とは違うお仕事をはじめたんですね。

原田さん:専門学校にいたとき、紙を使って引き出しや箱など、いろんなものを作っている会社が新潟県ににあることを知って、「建築じゃなくて、ここで働いてみたい」って思ったんです。そこで働いた後は、子育てをしながら接客や訪問販売営業の仕事をしていました。でも、そのうち「ものづくりがしたい」ってウズウズしてきちゃって(笑)。子どもが少し大きくなったときに、三条市の木工の会社で働かせてもらうことにしました。

 

――今度は木を使ったものづくりのお仕事に。

原田さん:紙と木では扱い方が全然違って、最初はすごく下手だったと思います(笑)。それでもすごく楽しくて、2年くらい働いていた後も、その後も出産前の2ヶ月限定みたいに短期間でも働かせてくれたんですよ。

 

――原田さん、とても働き者なんですね。

原田さん:じっとしているより、何か動いたり作業をしていたいんです(笑)。木工の会社で働いた後は春から秋にかけて農家さんで働いて、冬は別の仕事をしていたんですけど、だんだん冬にする仕事を探すのが大変になってきて。ちょうどそんなときに、地域振興局で「藁細工をやってみたい」って雑談していたら、作っている人を紹介してもらえることになったんです。その方が、私の師匠になっています。

 

――見学してみて、いかがでしたか?

原田さん:大きなしめ縄を何千本と作っていて、業者さんみたいな感じだったんですよ。その規模の大きさを見て、「私には無理だ」って思っちゃって。一度、藁細工を作るのは辞めたんですが、その後、たまたま師匠と再会して。しめ縄を作る練習会に参加することにしたんです。

 

――その心境の変化には、何か理由があったのでしょうか。

原田さん:ちょうど3人目の子を妊娠して、出産を控えていた時期でした。出産直前の大きなお腹じゃ農家さんのお手伝いはできないけど、働けないのは辛いと思っていて。そんなときに、家でできる仕事として、しめ縄づくりを紹介してもらいました。「しめ縄を作れるようになれば、仕事がある」と思って(笑)、しめ縄を作る練習をはじめました。

 

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しめ縄づくりが、
「働きたい」を叶えてくれた。

――そもそも、しめ縄ってどんな思いが込められたものなんでしょう?

原田さん:神棚に飾るしめ縄は、神様と人間界の境界の役割を果たしています。私の作っている「新潟大黒締め」というしめ縄は、縄に稲穂が付いているもので、米どころらしいしめ縄ですね。このしめ縄には、豊作の願いも込められていると思います。

 

――しめ縄がどのように作られているのか、気になります。

原田さん:しめ縄のかたちやパーツの呼び方は地域にもよるんですが、長岡のあたりで作られているしめ縄は「縄」と「房」というふたつのパーツがあります。しめ縄作りをマスターするときは、「縄」から垂れ下がっている扇形の「房」の作り方を覚えます。師匠にやり方を教えてもらって、家でやってみて、師匠のところに持っていってアドバイスを貰って……というのを繰り返して覚えていきましたね。

 

――そんなしめ縄は、稲から稲から作られているんですよね。

原田さん:「原田甚助農園」では、しめ縄やしめ飾り、猫ちぐらを作るために7つの稲を育てています。それ以外にも、コシヒカリや新之助などお米も育てているんです。使い終わった藁は畑の肥料や、夏場の草マルチとしても再利用もしています。しめ縄を作るだけじゃなくて、田んぼや畑に還元できるところが、この仕事のひとつの面白さだと思います。

 

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藁を育てて、刈り取って、作る。
藁細工が出来上がるまで。

――そうして、今ではおひとりでしめ縄を作られています。

原田さん:しめ縄と、現代のお家に合わせたしめ飾りを作っています。最初は自宅でしめ縄を作っていたんですけど、ちょうど家の敷地に使われていない小屋があったので、作業用のスペースとして改装しました。一年を通して藁細工を作るようになって、最初は年間で100本くらいしめ縄を作っていたのが、今は500本くらい作れるようになりました。

 

――しめ縄作りの一年間のサイクルを教えてください。

原田さん:だいたい、5月くらいに年末に販売するための稲を植えはじめます。ちょうどこの時期から、穂が出る前の稲を刈る作業に入って、8月からしめ縄をどんどん作りはじめていきます。いちばん忙しいのは12月ですね。出荷に追われながら、無になって制作をしています(笑)。今年はこれから本腰を入れてしめ縄を作っていくので、「ガンガンやっていくぞ」みたいな、戦闘モードになっていますね。

 

――しめ縄以外の藁細工のことも、教えてください。

原田さん:1年を通してしめ縄を作っていると、同じ作業を続けるのは比較的好きな私でも、しめ縄じゃないものも作りたいと思うようになって。それで、亀や鶴、干支をモチーフにした藁細工や、現代のお家でも一年中飾れるようなしめ飾りを作るようになったんです。その他にも、たまに猫ちぐらも作っています。

 

――作っていく中で、原田さんが大切にしていることは、どんなことでしょう。

原田さん:使ってもらう方のリクエストをなるべく取り入れることは意識しています。町内の方から「ここがもう少し太いほうがいい」みたいな、要望をもらうことがあるんですよ。そのリクエストを取り入れた、かっこいいいしめ縄を作っていきたいなと思っています。

 

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頑張りすぎず、気楽に、
藁細工を作っていきたい。

――ものづくりをしている中で、モチベーションになっているものは?

原田さん:「私がこの伝統の技術を守らなきゃ」と気負いすぎないで製作できている環境かな、と思います。最近、しめ縄や藁細工を作る方も増えてきていているんです。だから伝統を守るという使命感よりは、日本の大切な文化に関われているという喜びのほうが大きくて。

 

――気軽にものづくりができているんですね。

原田さん:そうかもしれません。しめ縄の作り方を知っているので、それを活かしたいと思って、しめ縄のを作るときの技術を活かしたしめ飾りを作っています。神棚がなくて、しめ縄が飾れないお家でも、このしめ飾りを楽しんでもらえたらな、と思います。

 

――素敵です。原田さんが、これからやってみたいことを教えてください。

原田さん:今まで作ったことのないものにも、挑戦してみたいんです。今作っているしめ縄よりも大きい、六尺のしめ縄とか、「紙垂(しで)」という縄に垂れ下がっている紙を、和紙にして、ちょっとこだわったしめ縄とかもやってみたいなって。あと、いつになるかわからないですけど、蓑(みの)も作ってみたいんです。藁細工の最高峰が蓑だって聞いたことがあるので、ゆくゆくは作ってみたいなって。

 

――今後原田さんからどんな藁細工が生まれるのか、楽しみです。今日はありがとうございました!

 

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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