醸造と発酵の町・長岡市摂田屋で
江戸時代から続く老舗「星野本店」
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2026.09.15
鮮やかな色彩の「鏝絵(こてえ)」で知られる「機那(きな)サフラン酒本舗」をはじめ、味噌や醤油、お酒の蔵が集まっている発酵・醸造の町「摂田屋(せったや)」。最近は町の整備が進められ、気軽に訪れることができる観光スポットにもなっています。江戸後期から続く「星野本店(ほしのほんてん)」も摂田屋を支えてきた老舗のひとつ。歴史ある建物を訪れ、常務の星野さんにいろいろなお話を聞いてきました。
星野 美代子
Miyoko Hoshino(株式会社 星野本店)
富山県生まれ。東京の大学を卒業して旅行会社に勤務。結婚を機に長岡で暮らしはじめ、子育てがひと段落したことで夫の家業である「株式会社 星野本店」で働きはじめる。趣味は料理。
戦火や震災を乗り越えて残り続ける、
180年もの歴史をもつ醸造蔵。
――摂田屋には歴史ある建造物が多いですよね。
星野さん:このあたりは江戸幕府が直々に収めている天領だったんですよ。地下水が豊富だったこともあって、味噌や醤油、お酒の蔵が軒を連ねてきました。明治になって長岡駅に続いて開業した宮内駅のおかげで、流通が便利だったというのもあったと思います。第二次世界大戦では長岡のほとんどが空襲を受けたんですが、この地域だけは奇跡的に戦火を免れたんです。
――それで歴史的建造物がたくさん残っているんですね。星野本店さんの醸造蔵も歴史がありそうですね。
星野さん:江戸時代後期の弘化3年に創業したので、180年の歴史があるんです。ただ、平成16年に起こった新潟県中越地震では被害を受けました。床に落ちた醤油のガラス瓶も全部割れてしまったので、それ以降は醤油の容器をペットボトルに変えたんです。近くにあった味噌工場も倒壊こそしていないものの強度が落ちてしまったので、建物を壊して本社の敷地に新設しました。
――それは大変でしたね……。
星野さん:大火災が起こらなかったことは不幸中の幸いでしたね。数年前に発生した阪神・淡路大震災での教訓が生かされたんだと思います。工場の駐車場は避難所になっていました。地震後に改修した「三階蔵」は明治15年に建てられたもので、国の登録有形文化財に指定されて、今はイベントやコンサートに利用されています。
――直売スペースも、震災をきっかけにつくられたんでしょうか?
星野さん:こちらは震災の前年につくりました。JR長岡駅の駅長さんから「摂田屋を散策する企画を考えているので、観光客が立ち寄ることのできるスペースを用意できないか」とお声がけいただいたんです。そこで屋根の葺き替え工事をするタイミングで、荷物の出荷口にしていた蔵の一部をトイレのあるオープンスペースにリノベーションして、製品の直売をはじめました。
――歴史ある建物の雰囲気を生かしながら、お洒落なスペースになっていますね。
星野さん:娘がレイアウトしたんです。今まで製品を卸していた小売店は、高齢化を理由に次々と廃業してしまいましたが、直売スペースを設けたことで、観光のお客様も足を運んでくださるようになりました。


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老舗醸造蔵のオススメ商品と、
美味しい食べ方を紹介する取り組み。
――醸造製品をつくる際にこだわっていることを教えてください。
星野さん:基本を忠実に守りながら、糀づくりをもっとも大切にしています。蒸し米に麹菌をかけてから寝かせて3日間かけて麹をつくるんですが、これからは職人の勘に頼るだけではなく、経験が少ない者でも醸造に携わることができるよう、工程をデータ化していくことが必要だと思っています。
――将来のことを考えているんですね。数ある製品のなかでオススメのものを教えてください。
星野さん:「糀一夜漬の友」は、40年間つくり続けているロングセラー商品です。国産米を100パーセントつかって、塩や昆布、わずかな赤唐辛子でつくっています。野菜や肉、魚を漬け込むだけでまろやかな糀漬けが完成します。
――簡単に漬物がつくれるんですね。
星野さん:そうなんです。他にも「味噌味くらべセット」をオススメしたいですね。うちの蔵でつくっている3種類の味噌をセットにしたものです。店頭の味見だけではなく、実際に使って料理してみないと本当の味ってわからないと思うんですよ。その上で、次回はお好みの味噌をお選びいただきたいと思います。
――お試しセットのような商品ですね。インスタグラムで味噌や糀を使った料理を投稿しているのも、そういった目的があるんでしょうか?
星野さん:私はもともと料理が好きだし、醸造蔵の人間が味噌や糀を使いこなせなければ、お客様に美味しい食べ方をオススメすることができないと思ったんですよ。それでいろいろな使い方を試してみては、インスタグラムで紹介しているんです。それだけではなく、店舗でも2年間料理教室をやっていましたし、今もコミニュティーセンターからお声をかけていただいて、麹を使った料理を紹介させてもらっています。
――ちなみにオススメの料理を教えてください。
星野さん:料理とは呼べないかもしれませんが、麹を使ったドレッシングがオススメです。油を変えればいろいろな味を楽しむことができますが、私のイチオシはオリーブオイルを使ったドレッシングですね。エキストラバージンオイルならより美味しいものがつくれます。そのドレッシングをブラックペッパーと一緒にポテトサラダに使うと、とっても美味しく召し上がれますのでお試しください。


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中越地震がきっかけとなって、
醸造蔵が集まり町おこしに取り組む。
――最近はこのあたりも整備されて、以前よりも観光スポットらしくなってきましたね。
星野さん:新潟県中越地震をきっかけに、6つの醸造蔵が集まって「NPO法人 醸造の町 摂田屋町おこしの会」を立ち上げたんです。それまでは連携することなく営業をしてきた醸造蔵が力を合わせて、復興や町おこしに力を入れるようになりました。長野の小布施を視察したり、毎月話し合いを重ねたりして、町づくりに取り組んできました。
――例えば具体的にはどんなことをやってきたんでしょう?
星野さん:震災でいちばん被害を受けた摂田屋のシンボルでもある機那サフラン酒本舗の立て直し、歴史を生かした町づくりや観光客の受け入れ推進に携わってきました。来月もいろいろな体験ができる「セッタニア」という親子で参加できるイベントを開催します。当店では「味噌玉づくり」のワークショップをおこなう予定です。また、10月11日(日)には「HAKKO trip(ハッコー トリップ)」という、街中を散策しながら発酵を楽しめるイベントがあります。当店では体験や蔵JAZZを開催します。
――摂田屋が発酵・醸造の町として認知されて、多くの人で賑わうといいですね。星野本店さんでは、今後どんなことに力を入れていく予定ですか?
星野さん:フリーズドライの味噌汁を企画していますが、大手企業との差別化を図るために、アスリートをはじめ健康への意識が高い人に向けた製品を来月発売する予定です。水でも溶けるので山の上でも手軽に飲むことができるんです。その後も歴史ある小さな味噌蔵でしかできないような製品づくりに取り組んでいきたいですね。

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