流されながら、面白いほうへ。
西山のクリエイター、ジュージューさん

カルチャー

2026.09.23

text by Ayaka Honma

小さい頃からいつも「絵を描くこと」が当たり前だったというジュージューさん。現在は地元・柏崎市西山を拠点に、イラストやグラフィックデザイン、ペイントなど、さまざまなものづくりをしています。/26まで開催中の個展にお邪魔して、これまでのことや絵のこと、西山での暮らしについて聞いてきました。

Interview

ジュージュー

1990年柏崎市西山生まれ。新潟市内の専門学校でデザインを学んだ後、柏崎市の印刷会社に14年間勤務する。2025年より「JOO JOO TEN」として独立しイラストレーターやグラフィックデザイナーとして活動をはじめる。そのかたわら、地元の物部神社の伝承部保存会に所属し、文化の継承活動に関わるほか、陶芸作品の制作や米づくりなど、幅広く活動中。日本酒が好き。

絵を描くことは、
当たり前のことだった。

――今日はよろしくお願いします。早速ですが、ジュージューさんのこれまでのことを教えてください。

ジュージューさん:いつから絵を描きはじめたか覚えていないんですが、絵を描くのは好きでした。親から落書き帳を与えてもらって、一冊描き終わったら次、また描き終わったら次、とずっと描いていましたね。だから、絵を描くことは特別なことではなかったですし、遊びの延長って感覚でした。

 

――高校卒業後は、新潟市内にあるデザインの専門学校に。

ジュージューさん:本当は絵をやりたかったけど、それで食べていけると思っていなかったので、グラフィックデザインを学ぶことにしました。パソコンは苦手だったんですけど(笑)、起動の仕方から教えてもらえたおかげで、普通に使えるようになりました。

 

――専門学校に通っているときも、絵は描き続けていたんだとか。

ジュージューさん:柏崎から新潟市まで、片道2時間かけて電車で通学していたんです。その暇つぶしに、ずっと絵を描いていました。電車内ってどこから見られているか分からないから、いい緊張感の中で絵に没頭できましたね(笑)

 

――それはいい環境でしたね(笑)。学校を卒業した後は、どんなお仕事を?

ジュージューさん:柏崎の印刷会社で、デザインの仕事をさせてもらいました。進路を決めるとき、「自分が何になりたいのか」がはっきりしていなくて。なぜか東京のパン屋さんに応募したこともありました(笑)。そんなとき、友人から柏崎の印刷会社を紹介してもらったんです。

 

――そちらでは、独立するまで働かれていたそうですね。

ジュージューさん:正直こんなに長く働くとは思っていなかったです。でも仕事とプライベートのバランスがちょうどよくとれて、絵を描ける時間が十分にあったんです。会社でも、デザインの仕事以外に、手描きで絵を描いたり、看板を描いたりすることもあって。好きで絵を描いていただけだったんですけど、それが仕事にもつながっていましたね。

 

ジュージューさんが通学中に描いていた絵。今回の個展にも展示されています。

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予定通りじゃないけど、面白い。
いろんな人に支えられて、ここまできた。

――ジュージューさんが、独立しようと思ったのは、どんなきっかけがあったのでしょう。

ジュージューさん:実は会社にいるとき、「岩手に移住する」って決めていたんです。南部鉄器にすごく惹かれちゃって。南部鉄器のような岩手のものづくりって、伝統をベースにしながら、それぞれのつくり手が自分のセンスを入れて表現できるところが、すごく良いと思ったんです。「ここだったら、私も受け入れてもらえるかもしれない」って、移住後の仕事のことまで相談していたくらい、本気だったんですけど……。

 

――移住はしなかったんですね。

ジュージューさん:結婚することになって、移住計画がなしになったんです。そのまま会社に勤め続けたんですけど、一度会社を辞めると決めていたので、そのまま働き続ける気持ちにはなれなくて。独立して絵やデザインで仕事をしようと思っていたんですが、まわりから反対されちゃったんです。それで、もう一度就職するために、職業訓練校に通いはじめました。ここで過ごした日々は、とても楽しくていい経験だったんです。

 

――どんな経験だったか、ぜひ聞かせてください。

ジュージューさん:一緒に受講していた人は年齢も経歴もバラバラだったんですけど、すごく仲良くなって。これからのことを話したとき、「独立できるなら、したほうがいい」って背中を押してくれたんです。その経験からコミックを描いて、「あなたのおかげです」ってみんなにプレゼントしました。

 

――人から受けた影響や刺激を、かたちにしたんですね。

ジュージューさん:自分では意思が強いと思っていたんですけど、振り返ってみると、意外と流されているかもしれないです(笑)。「着付けを習ってみないか」って誘われて地元の神社に行ったら、着付け教室じゃなくて、実は神社のおまつりで踊る舞や笛のお稽古で。それでも面白くて続けていたら、舞も笛も、もちろん着付けも覚えられましたし、陶芸も人から誘ってもらって、やってみたら面白くて、自分で作品をつくりはじめました。今のところ、自分ではいい感じに流されているんじゃないかなって思っています(笑)

 

個展で販売されているこけし。背中には、ゆるい言葉が。

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生活の中で感じたもの、
人から影響を受けたものを、作品に。

――ジュージューさんにとって、絵とはどんな存在なのでしょう。

ジュージューさん:何かを伝えるときに文字を書くのと同じくらい、当たり前にあるものだと思っています。近所の美魔女たちと手紙を送り合っているんですけど、それにもつい絵を描いちゃうんです。文字よりも絵のほうが面積が多いかもしれないです(笑)。「作品を作るぞ」と意気込んで絵を描くことはほとんどないんです。実際、今まで描いた絵も自分の生活から生まれたものが多いですね。

 

――と、いいますと?

ジュージューさん:いちばん最初に開いた個展では、猫と植物を描いた作品を展示したんですけど、植物を描こうと思ったのはお義母さんの影響が大きかったんです。お義母さんは植物が好きで、いろんな花や草の名前を教えてくれて。だんだん面白くなってきて、「描きたい」って思うようになりました。私にとって義実家は良い意味でカルチャーショックの連続で(笑)、よく絵に描いています。

 

――2回目となる今回の個展は、さまざまな鳥を描いた作品が並んでいます。

ジュージューさん:鳥は羽が難しそうで、描くのを避けていたんですけど、鯖石の「FUFU」さんに、「フクロウの絵を壁に描いてほしい」って頼まれて。いざ描いてみたら、植物を描くのとすごく似ていて楽しかったんです。私はどの絵も「楽しい」っていう気持ちを持って描いています。それに加えて、この鳥たちは配色にもこだわっていて、自分が関わっている神社にまつわる色を使っているんですよ。

 

――もしかして、五色ですか?

ジュージューさん:そうなんです。神社やお寺の幕でよく見る、緑、赤、黄、白、紫をベースに使っています。個展の場所として「絵本蔵 松涛」さんを使わせてもらうことになったとき、ここの雰囲気に合わせるなら、厳かな雰囲気にしたいと思って。最初は流されるまま神社に関わっていましたけど、これが功を奏しましたね(笑)

 

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西山で、面白がって生きていく。
ジュージューさんのこれから。

――これから、どんなことをしていきたいですか?

ジュージューさん:何かひとつの大きな目標を決めて進んでいく、というよりは、「面白そう」と思ったことをやっていけたらいいなと思います。今は地元の物部神社の伝統について若い人にもっと興味を持ってもらいたくて。まつりごとは面倒って思うかもしれないけど、行ってみたらシャキッとすることもあるし、気分転換に来てほしいですね。

 

――ご自身も、もともとは地域の役員からはじまったんですもんね。

ジュージューさん:そうなんですよ。最初から「地域の文化を残したい」って思っていたわけじゃなくて、頼まれてやっているうちに、気づいたら子どもたちに教える側にもなっていました。西山は人が少なくなっていて、同世代も子どももあんまり見かけないんです。でも、だからって「ここはもうダメだ」って思うより、誰かひとりでも本気で楽しんでいる人がいたら、「そんなに楽しいの?」って思ってもらえるかもしれない。だから私は、とりあえず自分が楽しく生きていたいなって思っています。

 

――デザインのお仕事についてはいかがですか?

ジュージューさん:もっと仕事を増やしたい、っていう感じではないんですよね。「どうしたらいいかわからない」とか、「これ、どうしたらよくなる?」って困っている人と一緒に考えるのが好きで。そういうときに、「じゃあ、こうしたらいいんじゃない?」って、デザインで少し解決できたらいいなって思っています。

 

――絵もこれから描き続けていきますか?

ジュージューさん:描くと思います。たぶん、描いちゃうんでしょうね(笑)。自分のことを振り返ってみて、人から影響を受けたものを絵にしていることに気づきました。関わってくれている人に、もっと感謝しようって改めて感じています。これからも「面白い」と思うことをやって、絵や作品にしていこうと思います。

 

ジュージューさんがデザインしたパッケージ。手描きのイラストが、いい味出ています。
「サタケ」の文字が入ったつなぎは、近所のおじいちゃんから譲り受けたそう。

 

「JOO-JOO展」が9/26(土)まで「絵本蔵 松涛」で開催中です。営業時間は13:00-18:00(26日のみ17:00まで)。最終日の26日はジュージューさんも在廊予定で、陶器のイカキーチェーンを作れるワークショップも開催されますよ。

ジュージュー

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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