キューバサンド片手に散策を楽しむ、
瓢湖の「キッチンカー こばめしや。」
食べる
2026.09.08
「白鳥の湖」として有名な阿賀野市の瓢湖には、白鳥シーズンの冬だけではなく、春の桜、夏の蓮を目当てに観光客が訪れます。そんな瓢湖にキューバサンドをメインに販売する「キッチンカー こばめしや。」が登場しました。どんな思いでキッチンカーをはじめたのか、数々の観光業に携わってきたオーナーの小林さんからお話を聞いてきました。
小林 諭
Satoshi Kobayashi(キッチンカー こばめしや。)
1976年阿賀野市生まれ。阿賀町の道の駅や旅館、観光協会で経験を積み、2025年より「キッチンカー こばめしや。」をスタートして、瓢湖をメインにキューバサンドなどの軽食メニューを販売している。肉料理やラーメンが好き。
道の駅や旅館、観光協会と
阿賀町の観光業に携わる。
――小林さんは憧れていた職業ってあったんですか?
小林さん:人がたくさん集まって楽しそうな、東京ディズニーランドで働きたかったんです。でも高校の進路指導のとき相談した先生から、「ひとまず地元で頑張ってみろ」と言われました。そこで阿賀町の道の駅でオープニングスタッフとして働くことにしたんです。あそこも当初の計画ではテーマパークみたいになる予定だったんですよ。
――そんな予定があったとは知りませんでした。
小林さん:その後は温泉旅館に勤めたんですけど、初出勤してみたら誰もいないんです。困っていると経営者が現れて「今日は誰もいないから休んでいいよ」と言うんです(笑)。実は負債だらけで倒産寸前の旅館だったんですよね。
――あらら……大変じゃないですか。
小林さん:それからは頑張って営業に励み、支配人になって経営を立て直しました。ところが、それまで食材の支払いをまったくしていなかったことがわかって、その返済を負う羽目になってしまったんです。そのため半年近く無給で働いていましたね。妻は何も言いませんでしたが、あと少し給料を家に入れなかったら離婚されていたかもしれません。
――どうやって経営の立て直しを図ったんですか?
小林さん:老人クラブや町内会、シニアスポーツの団体を回って、宿泊客を増やしました。その甲斐あって、年間で1万2千人以上のお客様にご利用いただくことができたんですよ。
――それはすごい。
小林さん:プライベートでも「阿賀町勝手に応援隊」というグループを立ち上げて活動していました。阿賀町の観光業に携わるメンバーが中心になって「馬鹿な事を大真面目に!」というコンセプトのもと、いろいろな町おこし企画をおこなっていたんです。
――例えば、どんな企画があったんでしょう?
小林さん:飲食店に協力していただいて「阿賀町メガ盛りフェスタ」を開催したり、「阿賀町あんかけラーメン」を開発して新潟6大ラーメンを勝手に目指していました。「阿賀町プロレス」を開催したときは旅館で打ち上げしたんですけど、床が抜けそうになってひやひやしました(笑)
――旅館はどうなったんですか?
小林さん:従業員が全員退職した後、廃業することになったんです。ただ実績は認めていただけて、いろんなところからお誘いをいただき、「阿賀町観光協会」で事務局長として働かせていただくことになりました。ただ、そんな矢先にコロナ禍がはじまってしまい、観光の要だった農家民泊や学生の田舎体験ができなくなってしまったんです。
――タイミングが悪かったですね。
小林さん:そこで飲食店にテイクアウトメニューの提供を呼びかけて、それをまとめたチラシやリーフレットをつくろうと思いました。他の地域でははじまっていたけど、阿賀町ではまだはじまっていなかったんですよ。でも、途中から行政の方でやることになって引き継ぐことになりました。
――これまで阿賀町の観光や町おこしに、いろいろと関わってきたんですね。
小林さん:おかげで多くの方と出会うことができ、縁を結ばせていただきました。僕にとっては経験とともに大きな財産になりましたね

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瓢湖散策のお供にぴったりの
看板メニュー・キューバサンド。
――キッチンカーをはじめたいきさつを教えてください。
小林さん:ずっと妻の実家がある阿賀町に住んでいたんですけど、妻が亡くなったことで生まれ故郷の阿賀野市へ娘とふたりで移り住むことになったんです。僕はこれまで観光に携わる仕事をしてきたので、今まで娘と過ごす時間が少なくて会話もない状況だったんですよ。ですから、これからはできるだけ娘との時間をつくりたくて、時間の自由がきく自営業のキッチンカーをはじめました。
――そうだったんですね。キッチンカーはどのように準備したんですか?
小林さん:イベントに関わっていたので、キッチンカーをやっている知り合いも多かったんですよ。そのなかでキッチンカーの製作を手伝ってくださる方がいまして、1週間くらいでつくっていただきました。DIYが好きな弟も協力してLED照明や棚をつくってくれたし、旅館関係者もかき氷器をはじめ様々な機材を貸してくれました。たくさんの方々の支えを感じましたね。
――看板メニューはキューバサンドですよね。
小林さん:そうなんです。白鳥が飛来する冬の瓢湖をメインに出店しようと思っていたので、寒い屋外でも手軽に食べることができるホットサンドの提供を考えました。あとは温かいスープですね。
――キューバサンドには、どんなこだわりがあるんでしょう?
小林さん:精肉店に勤めている弟から仕入れた、ジューシーで柔らかな岩船豚を使っています。地元糀屋でつくられた塩糀に漬けると、たんぱく質が分解されてより柔らかくなるんですよ。パンの表面もカリッと焼き上げることで、食感や香ばしさを楽しむことができます。
――ひと手間加えたつくり方をしているんですね。
小林さん:本場のキューバサンドとは違ったつくり方だと思うんですけど、子どもからお年寄りまで誰もが食べやすい、地元になじむ味を目指しています。なかでも気まぐれで登場する10食限定のプルドポークのキューバサンドは大人気で、これを目指して来てくれるお客様もいるんです。
――いつでも買えるわけではないから、なおさら食べたくなるんでしょうね。キューバサンド以外では、どんなメニューがあるんでしょう?
小林さん:ホットドッグも人気があります。キューバサンドのミートプレスをやり過ぎて腱鞘炎になってしまったので、ホットサンドに変わるメニューとして考案しました。なかでもタルタルドッグは「やみつきドッグ」といわれるほどの人気メニューです。小学生のときの給食で食べたミートソースを再現した気まぐれメニュー「ミートドッグ」も人気がありますね。



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故郷の阿賀野市に恩返ししたい。
瓢湖をメイン出店先にしている理由。
――「こばめしや。」の拠点は瓢湖なんですね。
小林さん:生まれ育った阿賀野市に恩返しができないかと考えて、地域を活性化するお手伝いをしたかったんです。瓢湖の周りには食事できる店が少ないので、キッチンカーがあれば便利なんじゃないかと考えました。
――人も集まりやすくなるかもしれませんね。
小林さん:白鳥を見に来てすぐ帰る人たちが多いんですけど、フードがあれば5〜10分くらいは滞在時間が延びますし、その間にコミュニケーションをとることもできると思うんです。そうすれば瓢湖自体の満足度も上がって「また来たい」と思ってもらえるんじゃないでしょうか。
――キッチンカーをはじめてみて、大変だと思ったことってありますか?
小林さん:とにかく天候に左右されますね。夏は暑いし冬は寒いです。でも、いちばん大変なのは風なんですよ。看板が吹っ飛んだり、屋根が吹っ飛びそうになったりすることがありましたね。
――そんななかでも、やっていて良かったと思うことってあるんでしょうか?
小林さん:いろいろな人との触れ合いが生まれることですね。放課後になると中学生たちが遊びに来てくれるんです。瓢湖以外の出店先まで来て手伝いまでしてくれるんですよ(笑)。キッチンカーがあるだけでも、地域の子どもたちを見守ることができているんじゃないかと思っています。
――今の時代は、なかなかそういう店がないですもんね。
小林さん:そうなんですよ。あと、SNSの出店情報をチェックして、追っかけしてくれるファンの方もいるんです。休業日でも自宅まで取りに来ちゃうお客様もいるので、結局は自宅前で営業することにしたりして(笑)。缶コーヒーを差し入れに持ってきて、しばらくお話していく方もいます。お客様がいらっしゃると帰っていくので「買いに来たんじゃないの?」って突っ込みたくなりますね(笑)
――多くの方々から親しまれているキッチンカーなんですね。これからは、どんなふうに頑張っていこうと思いますか?
小林さん:商品のクオリティを上げて、長く続けていきたいですね。続けていくことで「瓢湖には『こばめしや。』がある」と認知されるようになると思うんです。これからも今までの経験や人とのご縁を大切にしながら、瓢湖や阿賀野市を盛り上げていけたら嬉しいです。

キッチンカー こばめしや。
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