殿様が泊まった古民家がカフェに。
阿賀町の「久太郎本陣」
カフェ
2026.10.01
今回紹介する古民家カフェ「久太郎本陣(きゅうたろうほんじん)」は、参勤交代の殿様が滞在していた由緒正しい建物。手掛けたのは、以前紹介したキッチンカー「QTARO」の杉崎裕美さんです。今回は杉崎さんと一緒に「久太郎本陣」を運営している椿さんからお話を聞いてきました。
椿 由香理
Yukari Tsubaki(久太郎本陣)
1986年東蒲原郡阿賀町生まれ。東京の自動車専門学校を卒業し、阿賀町や新潟市の観光施設、レンタカー会社、葬儀会社、学童保育で働く。2020年より「お茶の間 久太郎」を手伝いはじめ、キッチンカー「QTARO」、2026年にオープンした「久太郎本陣」に携わる。「子育てハッピーアドバイザー」の資格を持ち、アロマと絡めた講座も行っている。
整備士の夢を諦め帰ってきた故郷で
運命の出会いが待っていた。
――静かな地域なのに、こんな建物があって驚きました。どういった建物なんでしょう?
椿さん:今は静かな地域ですけど、ここは以前は新潟と会津をつなぐ街道だったんですよ。江戸時代には新発田藩や村上藩の参勤交代にも使われて、お殿様が滞在する本陣になっていたのがこの渡部(わたなべ)家なんです。2024年には国の有形文化財にも登録されています。
――実はすごい建物なんですね。
椿さん:戊辰戦争のときには白虎隊のひとりをかくまっていたそうで、その方が息を引き取ったという部屋もあるし、刀傷がついた梁も残っているんです。実をいうと、このあたりは私が生まれ育った地元なんですよ。
――そうなんですね。椿さんはずっとこの地域で暮らしてきたんですか?
椿さん:高校を卒業してすぐに上京しました。クルマが大好きだったので、自動車整備士になりたくてトヨタ自動車の直営校に進学したんです。ところが当時はまだ女性が整備士として働ける環境の職場がなかったんですよ。だから、打ちひしがれて阿賀町へ戻ってきたんです。
――それは残念でしたね……。
椿さん:でも帰ってきたことで、人生を変える出会いがありました。母の友達の娘さんから誘われて「奥阿賀ふるさと館」という観光施設で働くことになったんですが、そのときに誘ってくれた娘さんこそ、キッチンカーの「QTARO」や「久太郎本陣」を一緒にやることになる杉崎裕美さんだったんですよ。
――杉崎さんには「QTARO」の取材でお世話になりました。では、それからずっと一緒に?
椿さん:でも、私はどうしてもクルマに関わる仕事がしたかったので、新潟市でレンタカーの仕事に就いたんです。いろいろなクルマに乗ることができたし、いろんな場所へ行けたので楽しかったんですけど、結婚・出産をしてからは阿賀町へ戻って葬儀社で働いたり、学童保育の先生をやったりしていました。でも学童保育は午後からだから午前中はひまなんですよ(笑)
――なるほど。確かにそうですね。
椿さん:そんなときに裕美さんから誘われて、お母さんのやっている「お茶の間 久太郎」で、笹だんごづくりや店の手伝いをするようになったんです。


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古代米おむすびのキッチンカー
「QTARO」が誕生した理由。
――以前取材させていただいた、キッチンカーの「QTARO」もやられているんですよね。
椿さん:裕美さんとふたりでやっています。最初は地元のイベントに出店して、笹だんごや古代米の販売をしていたんですけど、キッチンカーが流行りはじめたので「やってみよう」と誘われたんです。
――キッチンカーはどのように準備したんですか?
椿さん:お饅頭屋さんの店先に使っていないキッチンカーがあったので、思い切ってお願いしたら貸してくれたんです。それを使って「クラシックカーフェスタinあがまち」でキッチンカーデビューをしたら、とっても楽しかったんですよ(笑)
――それが「QTARO」の初出店だったんですね。
椿さん:それから軽トラックのキッチンカーを手に入れたんですけど、廃業したハンバーガーショップの使っていたキッチンカーも手に入れたので、2台のキッチンカーで営業することになりました。
――2台も所有しているって、すごいですね。
椿さん:裕美さんは主に県外、私は県内で「お茶の間 久太郎」の商品を通して阿賀町の魅力を伝えようと、いろいろなところで出店を続けています。

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歴史的古民家がカフェに生まれ変わり、
阿賀町の魅力を伝えていく。
――お茶の間カフェやキッチンカーをやってきた「久太郎」が、古民家カフェをはじめたいきさつを教えてください。
椿さん:裕美さんが「古民家カフェをやってみたい」と話していたんです。そんなときに阿賀町を通してこちらの渡部家を紹介されました。家主が売りたがっていて、買い手がつかなかったら取り壊すという話だったので、この建物で古民家カフェをやろうと決心したんです。
――椿さんの地元でしたよね? この建物のことは知っていたんですか?
椿さん:もちろん知っていました。しばらくは空き家になっていたので、ずっと残していきたいと思っていたし、地元で活用できないかと考えていたんです。まさか自分が関わることになると思っていなかったので、びっくりしました(笑)
――そうでしょうね(笑)。どんなカフェにしていこうと思っていますか?
椿さん:非日常的な空間で、日常を忘れてのんびり過ごせる場所にしたいです。そのために阿賀町では多分はじめてのドリンクバーもご用意しましたし、住んでいたおじいさんが遺した蔵書を読んでいただくこともできます。
――阿賀町のドリンクバー発祥地なんですね(笑)。他にはどんなメニューがあるんでしょう?
椿さん:「おむすびランチ」や「和包みもなか」があります。「和包みもなか」は9種類の素材をもなかの皮ではさんで、自分好みの味を抹茶とともに楽しんでいただけるセットです。「久太郎」自慢の餡子をはじめ、生クリームや栗、いちじくくるみなど、いろいろな組み合わせを味わうことができるんです。
――美味しいだけじゃなく、楽しそうですね。今後はどんなふうに発展させていきたいですか?
椿さん:笹だんごづくりや味噌づくりのワークショップをやったり、歴史が学べる講演会やまち歩きをおこなって、阿賀町の魅力を伝えていけたら嬉しいですね。コスプレイヤーの方々にも撮影に使っていただきたいと思っています。そうしてこの建物を、子ども達の世代にも残していきたいです。


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