「新潟チャレンジカフェ」で、
「やってみたい」を、まず試してみる。
その他
2026.09.28
沼垂にある「なり」ではじまった、「新潟チャレンジカフェ」。「いつか自分のお店を持ちたい。でも、いきなりはちょっと怖い」。そんな人が、1ヶ月の準備期間を経て、3ヶ月間お店づくりを試してみるプログラムです。実際にやってみることで、見えてくるものはきっとあるはず。「なり」の高江さんに、この取り組みをはじめたきっかけや、最初のモニター生との4ヶ月、これからのことを聞いてきました。
高江 理絵
Rie Takae(なり -nuttari NARI-)
1984年新潟市生まれ。日本大学文理学部国文学科卒業後、子ども服の販売員、専門学校事務を経て、長野県下諏訪町のゲストハウスの立ち上げに参加。2017年「なり -nuttari NARI-」をオープン。最近、キックボクシングに通いはじめたそう。
新潟でもっと気軽に、
チャレンジできる場所を。
――「なり」ではじまる、面白い取り組みについてお話を伺います。まず、「新潟チャレンジカフェ」というプログラムはどんなものなのでしょう。
高江さん:「なり」の1階にあるスペースを使って、お試しでカフェの営業に挑戦してもらうプログラムです。「お店をもちたい」「カフェをやってみたい」という方を応援して、その夢を実現させましょう、というものになっています。
――このプログラムをはじめる前も、このスペースで間貸し営業をされていましたよね。
高江さん:「なり」をはじめてから数年が経ったときに、宿の共用スペースの貸し出しをはじめました。単発で利用してくれる方もいれば、長くて1年くらい定期的に間借り営業をしてくれた方もいて。その方々と、将来のことやお店のことを話していたときに、私が起業したときの経験が参考になるって言ってもらえたんですよ。
――起業した方のお話は、なかなか聞く機会はないですからね。
高江さん:その経験から、起業したい人や、一歩踏み出したい人の助けになることができるんじゃないかと思って、このプログラムを考えはじめたんです。はじめは、起業をサポートするなんてことは考えていなかったんです。自分のことでも精一杯でしたし、「新潟チャレンジカフェ」とは言っていますが、私はカフェをやったこともなければ、コーヒーを淹れられるわけでもないので。
――それでも、このプログラムをはじめようと思ったのは?
高江さん:自分のお店を持つためには、場所探しはもちろん、機械や道具を揃えたり、開業のための書類を提出したり、下準備にすごく時間と体力を使うじゃないですか。そのまま進んだとき、「やっぱり違った」って方向転換がしづらいから、気軽には挑戦できないわけで。でも、やってみないと分からないこともたくさんあるだろうから、一度試してみる場所は必要だと思ったんです。それに、カフェの経験はなくても、お店をはじめて軌道に乗せていくことは、どの業種でも共通すると思っていて。それだったら、私も伴走者としてサポートできると考えたんです。

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感情をヒントに、
ぶれない土台を作っていく。
――「新潟チャレンジカフェ」はどんな流れで進んでいくのでしょう。
高江さん:4ヶ月という期間の中で、1ヶ月目はお店の土台作りをして、2ヶ月目からは実際にお店を営業してもらいます。今までの貸し出しとは違って、明確な期間があるのがこのプログラムの特徴ですね。決められた時間の中で、誰かのサポートを受けて頑張れるのが、結果も出やすいし、すごく大事なことなんじゃないのかなって思って。
――最初の1ヶ月の土台作りは、どんなことをするんですか?
高江さん:お店のコンセプトから、経営理念、開業後の事業計画、お店で出すメニューなど、決められるものは全部決めてもらいます。モニター生として、このプログラムを受けてくれた方からは、「この1ヶ月がなかったら、その後の3ヶ月間の営業はできなかったかもしれない」って言われました。実際に開業に向けての理想と現実のギャップを埋めていく期間になるので、すごく重要なんですよ。
――理想と現実のギャップですか。あんまり見たくないかもしれないです……(笑)
高江さん:でも、実現するためには現実を見ていかなきゃいけないので、これは避けては通れぬ道なんです。この中で、どうしても譲れない情熱と現実がぶつかって、どうしたらいいか分からなくなるときもあります。そんなとき、私は「なんでやりたいんですか?」「どうしてそう思うんですか?」ってどんどん質問していくんです。深掘りしていくと、その人の中にしかない答えが出てきて。私は答えを与えられないけど、その答えに導けるようにサポートをしています。
――答えを一緒に探す中で、意識していることはありますか?
高江さん:その人の感情をヒントに、答えを一緒に探しているかもしれないですね。「不安だから、やりたくない」ってときは、不安の理由を深掘りしていきます。そうすると、嫌いだから不安なのか、できないから不安なのかが分かるんです。前者であれば、やらないという選択をすればいいですし、後者だったら、できるように改善して、その不安を消してあげればOKですよね。
――ものすごく細かく、客観的に自分を分析していくんですね。
高江さん:そうです。これが決まってしまえば、この後の3ヶ月も、その先の開業後も壁にぶち当たったときに、乗り越えられると思うんです。お店をやっていくと、周りの人に影響されて、やることがどんどんズレていくこともあります。そのままにしていると、軸が自分から離れて、誰のお店なのかわからなくなる。そうならないように、ここで絶対にぶれない軸を作ります。そうしたら、どんな壁にあたっても自分の大事にしたいものに立ち戻れるんです。


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数字だけじゃない。
その日の満足度も大事な要素に。
――土台作りをした後、いよいよ3ヶ月の営業がはじまります。3ヶ月という期間設定には、どんな意図が?
高江さん:期間は半年にするのか、1年にするのか、結構迷ったんです。なんとなく、「3の壁」みたいなのがあるかなと思っていて、恋人同士でも3週間、3ヶ月一緒にいられたら、とかいうじゃないですか(笑)。お店も最初の1ヶ月目はがむしゃらに目の前のことを頑張れるけど、2ヶ月目からはだんだん慣れてきて、3ヶ月目には、周りのことも見えてきて、この先のことも見えるようになると思ったんです。
――なるほど。この営業期間で、高江さんはどんなサポートをしているのでしょう。
高江さん:受講生の方には、週に1回「なり」で営業をしてもらいます。毎回、営業後にどんなことができたか、次に向けてどんな改善ができるかを振り返ってもらって、次の週の営業日までに、必ず改善してもらうっていうのを繰り返します。最初は私もお店の開店・閉店作業をお手伝いしますが、最終的には全部自分でやってもらいます。今回のモニター生さんは営業初日から大きな壁にぶつかりましたが、3ヶ月で大きく成長をしてくれました。
――そのお話、詳しく聞かせてください。
高江さん:初日の来店は2名だったんです。どちらも、モニター生さんのお友だちで。一般のお客さんが来ると予想して仕込みをしていたので、用意した料理がたくさん残ってしまったんです。その日の振り返りで、今日いちばんつらかったことを聞いたら、「売上ではなく、用意した料理を食べてもらえず、残ってしまったこと」っておっしゃっていて。それを改善するために、メニューの見せ方を変えたり、予約制を取り入れたりして「用意した料理が残る」ということがないように改善しました。
――ここでも、モニター生さんがどう感じたかを大切にしているんですね。
高江さん:ここでも感情がヒントになるんですよ。悲しかった気持ちの原因を解決すれば、その日の営業は満足したものになると思っています。例えば10人がそれぞれの売上目標を達成したとしても、「こんな営業がしたい」っていう目的がそれぞれ違うので、目標の金額を達成したとしても、全員が同じくらい営業に満足しているとは限らないじゃないですか。毎回営業後に、「感情を書いてください」って必ず伝えていましたね。
――その日の営業の良し悪しは、満足できたかどうか、ということですね。
高江さん:それも意識してもらって、モニター生さんには3ヶ月やりきってもらいました。最終日には、たくさんのお客さんが来てくれて。手作りのプレゼントやお花を持ってきてくださるお客さまもいらっしゃいましたね。これも、モニター生さんが3ヶ月間、全力で挑戦してくれたからだと思っています。チャレンジを終えてから、「死ぬとき、多分この経験をいちばん最初に思い出すと思います」ってモニター生さんが言ってくれて、満足してもらえたんだって改めて実感しました。


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経験より、素直さが大事。
「なり」で新しい一歩を。
――モニター生の挑戦が無事に終了しました。今後の『新潟チャレンジカフェ』は、どのように考えていますか?
高江さん:本当は今月から1期生のプログラムをはじめようと、何人かと面談もしていたのですが、最終的に「チャレンジします」という方がいらっしゃらなかったので、来年の春からはじめることにしました。ただ、それまでの冬の間、何もしないのはもったいないので、「新潟チャレンジカフェ」の最初の1ヶ月だけを一緒にやる、みたいなプログラムをしようと思っています。「自分が何をしたいのか」を掘り下げて、本当に自分がやりたいことを知る1ヶ月を作れたらいいな、と。
――それなら、カフェ以外に「何かをしたい」と悩む人も気軽に参加できそうですね。「新潟チャレンジカフェ」には、どんな人に挑戦してほしいですか?
高江さん:「やってみたい」という気持ちと、人の意見を受け入れられる素直さのある方に、挑戦してほしいです。知識や経験はなくても大丈夫です。むしろまっさらな状態のほうが、スポンジみたいに吸収できることもあるので。やりたいことがあるのに、一歩踏み出せない人はすごく多いと思っていて。せっかくいい原石を持っているのに、そのまま転がしておくのはもったいないですよね。悩み続けるより、まずは4ヶ月「なり」で挑戦してもらえたら嬉しいです。
――「なり」も今年で10年目になります。これから、どんな場所にしていきたいですか?
高江さん:はじめた頃は、一人旅の人が泊まって交流するようなゲストハウスでしたけど、時代も自分も変わってきて。「なり」も変わるタイミングだと思っています。築100年を超えるこの建物でゆっくり過ごしてもらったり、これからは新潟の食や文化も一緒に体験できる場所にしていきたいですね。続けていくためにも、私自身も「なり」も、変わりながら進んでいきたいです。


なり -nuttari NARI-
新潟市中央区沼垂東2-11-31
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