植物に心を宿して。
イラストレーター「チュリ太郎」さん。

その他

2026.07.26

text by Ayaka Honma

どこか個性的で可愛い植物を描いている、イラストレーターの「チュリ太郎」さん。秋田で生まれ、東京でデザインを学んだ後、新潟に移住してイラストレーターとして活動しています。今回は、作品を見せていただきながら、「チュリ太郎」さんのこれまでのことや作品のことなど、いろいろとお話を聞いてきました。

Interview

チュリ太郎

Tulitaro

秋田県出身。小さい頃から絵を描くことが好きで、大学時代にはデザインを学ぶ。その後、カメラマンのアシスタントや書店の店員として働き、結婚をきっかけに新潟に移住、イラストレーターとして活動をはじめる。作業のお供はPodcast。

一度は諦めた、イラストレーターの道。
でも諦めきれなかった、絵を描くこと。

――今日はよろしくお願いします。早速なんですが、「チュリ太郎」というお名前の由来を教えてください。

チュリ太郎さん:「チューリップ」と「太郎」を合わせた名前です。活動をはじめるとき、親や会社の人にバレたくなくて、性別がわからない、変な名前にしようと思ったんです。チューリップはもともと好きな花なんですけど、新潟県の県花がチューリップと知ったときは運命だなと思いましたね。

 

――そんなチュリ太郎さんが、絵を描きはじめたきっかけは?

チュリ太郎さん:小さい頃から絵を描くのが好きで、家にあったパソコンで絵を描いていました。マウスを使ってポチポチ描くのが好きで、小学生のときはパソコンがお友達でした(笑)。そのうち、中上級者向けのアプリを使ってイラストを描くようになって。イラストレーターかグラフィックデザイナーになりたいと思って、大学ではデザインを勉強していました。

 

――デザインを学ばれてみて、いかがでしたか?

チュリ太郎さん:在学中、どこかで心が折れてしまったんです。受験期に頑張り過ぎて、燃え尽きちゃったのかもしれないと今は思うんですけど。継続して努力をしている子や自分にはない才能を持っている子にたくさん出会って、「自分はこうなれないな」と思ってしまったんです。そこで一度、イラストレーターになることは諦めたんです。

 

――アートやデザインの世界にいると、そう感じることも多いのかもしれないですね。

チュリ太郎さん:でも、表現している人や文化を届ける仕事がしたくて、卒業後は商業撮影をしているスタジオのアシスタントをやったり、アートブックを扱う書店で働いたりしました。でも、目標もなくフラフラしている私を見た両親が心配しちゃって。安心させるために、最終的には物流会社の正社員として働いていました。

 

――表現からは離れたお仕事もされていたんですね。

チュリ太郎さん:正社員として働けば、お金も稼げるし、両親にも安心してもらえるんですけど、自分が全然幸せじゃなかったんです。特にコロナの期間は本当に苦しくて。そのときに「やっぱり絵が描きたい」って気づきました。それで、会社をやめて全然違う仕事をしてみようと思ったんです。そのタイミングで、旦那さんと出会って新潟に住むことになったんです。

 

Advertisement

植物に、人の心を重ねて。
作品に込めた思いを聞いてみました。

――チュリ太郎さんは、新潟に移住してからイラストレーターとして独立されました。

チュリ太郎さん:新潟に引っ越してきた後は、絵を描きながら夏から秋は山小屋で働いたり、冬はみかん狩りのバイトをしたりしていました。東京ではデスクワーク中心の生活だったので、新潟に来て身体を動かしながら働いていると、何かを取り戻しているようにも感じました。

 

――チュリ太郎さんの描くイラストは、植物をモチーフにされています。

チュリ太郎さん:植物を通して、人間のコミュニケーションを描きたいと思っています。実家の庭に、色とりどりの花が寄せ植えされた株があって、子どもの頃にそれを見て「これはなんだろう」と不思議に思ったのがきっかけで。それ以来、植物を見るときは植物のきれいな一面より、変わったかたちや、生えている環境に興味を持つようになったんです。

 

――テーマは「人」、でもそれを植物で表現しているのは、どうしてなんでしょう。

チュリ太郎さん:人を上手に描く方はたくさんいらっしゃるので、私は違うところで勝負したいなって。植物を描いてはいるんですけど、アクセサリーをつけていたり、人や動物のような動作をしているように描いたり、植物に命を宿すような感覚で描いています。

 

――制作のときに大切にしていることを教えてください。

チュリ太郎さん:自分の中のネガティブな感情を拾うようにしています。悲しかったことや、忘れられない傷ついた言葉の方が、なぜか制作の原動力になるんです。自主制作の作品は、特にそういう気持ちから生まれていますね。

 

――作品を見た方に、どんなことを感じてほしいと思っていますか?

チュリ太郎さん:ふたつあって、まず単純に「かわいい」と思って手元に置きたくなってもらえたら嬉しいです。それともうひとつは、自分の経験や考えに共感して「自分はひとりじゃなかったんだ」と思ってもらえたら、それもすごく嬉しいですね。以前、8歳の女の子が私の作品に共感してくれたことがあって、それを今でもよく覚えています。

 

――そのお話、詳しく聞きたいです。

チュリ太郎さん:私の実体験を物語にした作品をその子が見て、「これ私の話だよ」ってお母さんに見せてくれたんです。その作品は、私が描いた絵を両親に褒めてもらいたかったときのお話で。女の子は絵を描くのが好きで、たくさん描いていたのに、お母さんに捨てられてしまっていたらしいんです。それが悲しかったという気持ちを、この作品を通して気づいてくれて。その女の子みたいに、自分の経験に置き換えて、共感してもらえたら嬉しいなと思っています。

 

Advertisement

新潟の自然の魅力を発信したい。
チュリ太郎さんのこれからのこと。

――新潟に来てから、絵を描く上で何か変化はありましたか?

チュリ太郎さん:東京にいたときは、周りにいろんな人がいる分、どうしても自分と他人を比べてしまうことが多かったんです。でもこっちに来てからは、周りと比較せずにフラットに評価してもらう機会が増えて。自分の能力を卑下せずに、自信を持ってやれることを見せていこうという気持ちが持てるようになりました。

 

――今後、やってみたいことはありますか?

チュリ太郎さん:新潟の自然の魅力を、イラストを通して伝えるような仕事に携われたら嬉しいです。以前、山小屋で販売するグッズを作ったことがあって。あのときみたいに、新潟を訪れた人が魅力を持ち帰りたくなるようなお土産品づくりのお手伝いもしたいですね。でも、今描いている表現だけだと、新潟の良さを十分に伝えきれないんじゃないかという課題も感じているんです。もう少しモチーフの幅を広げていきたいなと思っています。

 

――チュリ太郎さんの作品は、今は都内のお店で買えるとのことですが、新潟でも買える機会はあるのでしょうか……?

チュリ太郎さん:新潟で取り扱ってくださるお店は、これから見つけていこうかなって思っています。もちろん、東京での活動も引き続き続けていきたいなと思っていて。新潟と東京のどちらでも活動できるようなイラストレーターになりたいですね。

 

チュリ太郎

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

Advertisement

関連記事

新しい記事

ランダムピックアップ

Fashion Snap 服と人。#03 茂野達朗

この記事へ

MAGAZINE

now on sale

この街の、人、モノ、こと。
ちょっと知って、ちょっと好きになる
新潟のウェブマガジン[ シングス ]。

PR | 映画『わたしのかあさん―天使の詩―』

【プレゼントあり】『わたしのかあさん―天使の詩―』が県内3市で上映!

詳しくはこちら
レコメンド一覧

Advertisement