西堀通の「Lob-nor(ロブノール)」には、毎日使いたくなる食器や雑貨がたくさんあります。店主の千原さんは、東京でインテリアを学び、30年前にこのお店をはじめました。千原さんがインテリアを学んだきっかけや、お店をはじめてからのことなど、いろいろとお話を聞いてきました。
Lob-nor
千原 キミエ Kimie Chihara
1963年新潟市出身。高校を卒業後、インテリアコーディネーターを目指して東京の専門学校に進む。その後は都内のインテリアショップで販売スタッフとして8年半働き、30年前に新潟で「Lob-nor」をはじめる。近くにある「笹川餅屋」の豆大福が好きで、お皿を持参して買いに行くんだとか。
——千原さんはインテリアコーディネーターの資格をお持ちです。そもそも、インテリアに興味を持ったきっかけは?
千原さん:子どもの頃、おままごとみたいな感覚で、新聞に折り込まれた家具屋さんのチラシを切り抜いて遊んでいたんです。高校を卒業してから、インテリアコーディネーターになるための専門学校で学びました。その後は都内のインテリアショップで販売員として働きました。
——インテリアコーディネーターとして、ではなかったんですね。
千原さん:資格は取れたんですが、働き口が多いわけではなくて。何社も受けたんですが、思うようにはいかず……。販売の仕事であっても、インテリアコーディネーターの知識はとても活きましたし、何より販売の仕事がとても楽しくて。特に食器の担当だったときものすごく楽しかったのを覚えています。
——ふむふむ。
千原さん:東京のインテリアショップには8年半働いていて、最後の3年半は新しい店舗の立ち上げにも携わることができました。そのお店は雑貨や日用品をメインに扱うお店でして、そのお店が「Lob-nor」の元になっていると思います。
——その後、新潟に「Lob-nor」をオープンしたんですね。
千原さん:お店の「公式」な理由としては、東京でお店を構えると、ものすごくお金がかかるから新潟ではじめた、としているんですが(笑)、実のところ、行き詰まってしまったというのも、新潟でお店を持つ理由のひとつになったんです。
——「公式」ではない理由、もう少し聞かせてもらっても……?
千原さん:新規店舗の立ち上げに携わったといっても、雇われの身でした。自分が魅力を感じるものと、お店としてオススメしたいものとでギャップが生まれるようになって。お店を辞めた後、他のお店で働くこともできたんですが、当時私のなかで根拠のない自信があったんです(笑)。それで、「自分を支える存在になるお店をつくろう」と決心しました。
——「Lob-nor」という名前には、どんな思いが込められているのでしょう。
千原さん:新疆にかつてあった、湖の名前が元になっています。伊集院静さんの『瑠璃を見たひと』という作品を読んだときに、この湖のことを知りました。湖の中の生物や、周辺に住んでいる人の命を支えていた「ロブノール」 のように、人の暮らしを潤すようなお店にしていという思いを込めました。でもそれだけ意気込んでいましたが、いざお店をはじめると大きな壁にぶつかって。
——その大きな壁とは、どんなものだったんですか?
千原さん:根拠のない自信からはじめたものですから、どんなお店にしたいのか、方向性がうまく定まっていなくて。自分の中で違和感がありつつも、「どうしたらいいんだろう」 って答えが見つからないままだったんです。一度、お店を閉めてもいいんじゃないかって思ったときもありました。
──その状況を、千原さんはどう切り抜けていったのでしょう。
千原さん:お客さまがどの商品の前で足を止めるのか、よく見て商品のラインナップを少しずつ変えていったんです。それまでは、私が魅力的だと思ったものをメインにしていたのですが、このお店でお買い物をしてくださる方向けにお店の商品を変えていきました。
——お客さん視点になって、商品を見直したんですね。
千原さん:もちろん、自分が魅力的に感じた商品を置くということは大事にしています。商品のラインナップをお客さまに合わせるようになってから、「ここは、お客さまと私でつくっているお店なんだ」って思うようになって。この変化はお店のキャッチコピーにも表されていますよ。
——「ココロヲミタス日用品、Lob-nor」という言葉ですね。
千原さん:以前は「クラフト雑貨と毎日の服、Lob-nor」だったんです。このときは私の「この商品どう? 」「この商品を見てほしい! 」っていう思いが強かったかもしれません。ここからキャッチコピーが変わるまで、すごく時間がかかりましたね。振り返ってみると、暗黒時代でした(笑)。「ココロヲミタス日用品、Lob-nor」に変わってから、お店の軸も安定しましたね。
——お店の中には、たくさんの「ココロヲミタス日用品」があります。
千原さん:20人以上の作家さんがつくる作品を販売しています。展示会や問屋さんからのご紹介で知り合った方にお声がけをして作品を買わせてもらっています。作品とはいえ、使うことができる「日用品」を選んでいることは、変わらず大切にしています。あとは、日用品として手に取ってもらえるような見せ方も大事にしていますね。
——いったい、どんな見せ方なんでしょう。
千原さん:きれいに見せすぎない、ということですね、演出しすぎないといいますか。お店で買ったときはすごく輝いて見えたのに、いざ買って家に帰ってきたらその輝きが失われていた、って経験ないですか? 私は結構あって(笑)。もちろん、芸術作品のように並べているスペースもありますが、家の食器棚のようにお皿を重ねている場所もあります。
——家に持ち帰った後のこともイメージしやすいです。
千原さん:こうして重ねて置いていると、来るたびに新しい発見があったりするみたいですよ。たくさんの作品の中から、お気に入りのひとつを探して楽しんでもらえたら嬉しいですね。
——「Lob-nor」は今月で30周年を迎えました。
千原さん:本当に、あっという間でした。でも「やりきった」と思ったことは一度もないです。どんなことができるか、日々いろんなことを考えているんです。ガラッと大きく変えることはないですが、少しずつ変化させていくことは続けていきたいんです。
——30年も続いていると、変わりつづけていくことって難しい気がします。
千原さん:私は、変えていける力が続けていく力だと思っていて。変わらないこだわりを持つことも、もちろん大切ですが、変わっていかないとお店として続かないと思うんです。常に新しい作家さんを探していますし、ここでは2、3ヶ月に一度、作家さんの作品展を開催しています。
——作品展には、どんな狙いがあるのでしょう。
千原さん:普段取り扱わないものも作品として展示して、お店の奥行きを感じてもらえるようにしています。普段はお店に置いていないような、作家さんの渾身の一点を楽しむことができますよ。
——最後に、「Lob-nor」のこれからを教えてください。
千原さん:お客さまがいつ来ても、満足してもらえるようなお店にしていきたいです。商品を買わなくても、何か収穫があるお店がいいお店だと思うので。満足度の高いお店をこれからも追求し続けていきたいです。
Lob-nor
新潟市中央区西堀通3番町805