快適な睡眠には、寝具が大切。わかってはいるけれど、寝具のことについては詳しく知らないって人、けっこういますよね。実際、私もよく知りません(笑)。そこで今回、寝具のことを詳しく教えてもらうために、新潟で寝具を取扱い続けて70年の「有限会社横山寝具店」さんにお邪魔して、快眠のこと、寝具のこと、そしてお店のこと、あれこれお話を聞いてきました。
有限会社横山寝具店
横山 隆一 Yokoyama Ryuichi
1979年江南区生まれ。大学時代の就職活動時に寝具の大切さ、魅力に気づき、家業の寝具業界へ。現在は取締役専務。趣味はラーメンめぐり。
――「横山寝具店」さんの創業はいつですか?
横山さん:祖父母の代に、当時の横越地区には布団とかそういう製綿業をしているところがなくて、農家の副業として始めたのが最初ですね。
――なるほど、副業からのスタートだったんですね。
横山さん:まだ気軽に綿が買えない時代だったので、籾殻や藁なんかを綿の代わりに布団につっこんで寝ることが普通だったんですね。なので製綿業といっても、「打ち直し」っていうのがあって、使い古した綿を柔らかく直して、また布団として使いやすい状態にする、そんなところからのスタートでした。
――へー、今みたいにいつでも誰でも気軽に布団を買える、そんな時代じゃなかったんですね。
横山さん:そうですね。昔は布団って貴重なものでした。横越地区で唯一の製綿業でしたので、少しずつお客様を増やしていって、そのうち製綿業から布団づくりに変わっていって、最終的には農家をやめて布団の販売に専念するようになって、今に至ります。
――ちなみに、横山さんは小さい頃から家業を継ごうという考えはあったんですか?
横山さん:小さい頃の夢は「大工さん」って書いていたので(笑)。学生のうちは継ごうという考えはなかったですね。別に嫌でもなかったんですけど、やりたくないとかやりたいとかじゃなくて、まったく考えてなかったですね。
――そんな横山さんが、入社されたキッカケは?
横山さん:家業を継ごうと思ったキッカケは、大学時代の就職活動でした。志望する企業はあったんですけど、せっかくの就職活動だったので、実家が加盟させてもらっている「東京西川」さんの説明会にも参加してみたんですよ。「親父ってどんな会社と取引しているんだろう?」みたいな感覚で(笑)
――ほうほう、どうでしたか?
横山さん:「へぇ、寝具業界って面白いんだ」って、そこで気づいたんですよ。「寝具業界って未来があるな」って。当時は睡眠ってまだまだわからないことが多い分野だったんですよ。でもそれに真剣に取り組んでいるのは面白いなと思って、ちょっと試験受けてみようと思って、面接まで行ってすぐにバレました。「横山さんとこの子だよね?」って(笑)。でも、そのときの説明会がキッカケですね、この業界に入ろうと考えたのは。
――寝具業界のどこがすごいと思ったんですか?
横山さん:西川さんの説明会で「睡眠時間は人生の1/3。その1/3を支えるのが寝具だから、その人生の健康をサポートするのが僕らの仕事なんだよ」って話を聞いて、そう考えたときにすごい仕事だって思えたし、だからこそ、いい寝具を使うことの意味ってところに共感ができたんです。そこからですね、僕が家業を手伝いたいって思うようになったのは。
――寝具の世界に飛び込んでみて、いかがでしたか?
横山さん:最初はメーカーさんの紹介で寝具店さんに修行に行かせてもらいました。その修行先のお店はすごく品揃えのバランスとか販売力とかあるところで、よい寝具をしっかりと説明してお客様に販売するんです。例えば、1万円くらいの布団を買いにきたお客様が、説明を聞いて納得した上で20万円の布団を買ったりだとか。桁がひとつ違う布団を買って満足して帰られていく姿を見て、やっぱり、寝具ってそのよさを知ってもらえばちゃんと売れるんだなと思いましたね。
――1万円のつもりが20万円お買上ですか……。すごいですね。
横山さん:日本人の平均寿命が80歳だとすると、睡眠時間が27年で、車に乗る平均時間が約3年らしいんですよ。車って、人生で7、8台くらい買い変えるじゃないですか、でも乗っている時間はたった3年なんです。だったら、睡眠のためにお金を使うことって難しいことではないと思うんです。ちゃんとした商品ってことを理解してもらえれば、寝具ってそんなに高いものではないんですね。
――確かに。
横山さん:でも、やっぱりそこはお客様の睡眠への意識の部分が大きくて。売り手側のきちんとした説明が大切というか。高い布団ってそれだけの理由や性能があって、その値段なんです。
――でも、何万円の買い物って、やっぱり高いって思っちゃいますよね。
横山さん:例えば10万円のマットレスがあるんですけど、やっぱり品質がいいだけあって10年は使えるんですよ。1年で1万円、365日にすると1日30円なんです、もちろん長持ちするってだけじゃなく、それだけこだわって作ってあるので安いものと比べると寝心地も全然違います。逆に言うと、安いものは安いなりの理由や性能があるわけですけど、寝具を選ぶ際に何を大切にして、どう違うのか、費用対効果っていうところを体感してもらいながら伝えていくことが大切なんですね。
――寝具について、ちゃんと考えて買うことが大事ですね。
横山さん:そうですね。人にとって睡眠がすごく大切なことは誰もが知っていると思うんですけど、寝具の大切さを知っている人って結構少なかったりするんです。やっぱり自分に合った寝具を選べれば、睡眠の質を変えられますし、より豊かに暮らせると思うんです。だからこの仕事をしていて、「その人の人生を変える可能性がある」って考えたら、すごく大切で誇らしい仕事だなって思っています。
――ちなみに、こちらにはスリープマスターって方がいらして、いろいろ教えてくれるとか?
横山さん:そうですね。このスリープマスターっていのは、西川さんのところでやられている日本睡眠科学研究所が各大学の教授と協力して、寝具がどれだけ睡眠に影響を与えているのかっていうのを科学的に研究して、その知識を理解したプロフェッショナルに与える認定資格なんですけど、この資格をうちのスタッフは7名取得しています。
――実際、どんなことをしてくれるんですか?
横山さん:科学的な根拠に基づいたご案内ができる、ってことになります。例えば、「寝床内気象(しんしょうないきしょう)」っていう言葉があって、快適な眠り環境をつくるには、寝床内気象条件が、温度が33±1℃、湿度が50±5%なんです。だから実は寝具選びって地域によって選ぶべきものが違ったりするんですよ。そういった知識を基にして、その人にあった寝具選びのアドバイスをしています。
――ロジカルに薦めてくれるわけですね。
横山さん:そうですね。高価な寝具っていったら、訪問販売とか詐欺みたいなイメージがある人って多いと思うんですけど(笑)。西川さんの寝具は、それだけ根拠を大切に作られている商品なんですよね。もちろん、よいものだからこそ、私たちも自信を持っておすすめできますし、実際に体験してもらっても、その違いがはっきりわかるので、お客様も納得して買っていただくことができるんです。あとは、ちゃんと体感してもらうことが大切で。例えばリラックスして寝るときって、その人によって寝方は違うと思うんですけど、上向いてきちんと寝る人ってあまりいないと思うんです。
――そうですね。
横山さん:だいたい、こんな感じで、楽な姿勢で寝ると思うんですけど。そのときの姿勢で寝やすい寝具かどうかの体感をしてもらうことが大切なんです。あとは掛け布団も枕もその人の感覚が大切になってくるの、そういう部分にも寄り添って、寝ることについてのきちんとした案内ができる、そのことを大切に、寝具のプロとしてご案内させてもらっています。
――寝具って奥が深くて、すごく大切なんだ、って改めて思いました。最後になりますが、今後の目標を教えてください。
横山さん:そうですね。今はスマホだとかタブレットとかが高性能になってきているので、寝ること、寝心地という感覚的な部分をより数値化できるシステムを導入しようと考えています。例えば、カメラで体型を撮影して、その人にピッタリなマットの固さだったり、枕のかたちを科学的に提案できるようになれば、より安心して選んでもらえるようになると思います。お客様により納得していただき、喜んでいただくために、そういった丁寧な伝え方をこれからも大切にしていきたいですね。
有限会社横山寝具店
横越店 新潟県新潟市江南区横越中央3-1-26
025-385-3851
アピタ新潟亀田店
新潟県新潟市江南区鵜ノ子4-466 アピタ新潟亀田2F
025-382-7131
イオン新潟青山店
新潟県新潟市西区青山2-5-1 イオン新潟青山ショッピングセンター2F
025-378-0570