子ども食堂などイベントで人のつながりを作る「Smile Story」。
食べる
2021.09.12
「さくら食堂」や「Kansichi子ども食堂」の運営、毎月1回の海岸清掃イベント、教育現場の授業のサポートなど、人と人をつなぐ場の提供をしている「一般社団法人Smile Story」という団体が新潟市にあります。どんな目的で、どんな活動をしているのか、代表理事の綱本さん、副理事の高橋さん、調理担当の「旬菜バル Kansichi」正木さんに、いろいろとお話を聞いてきました。

一般社団法人Smile Story
綱本 麻利子 Tsunamoto Mariko
1979年西区内野町生まれ。Smile Storyの代表理事。お酒やおしゃべりが大好きで、人と人の想いをつなげ実行する役割を担当。

一般社団法人Smile Story
高橋 智恵 Takahashi Tomoe
1977年福島県会津生まれ。Smile Storyの副理事。法人運営や事務全般を担当。

一般社団法人Smile Story
正木 大介 Daisuke Masaki
1973年広島市生まれ。「旬菜バルKansichi」のオーナー、Kansichi子ども食堂の調理担当。
コロナ禍での海岸清掃イベントで感じた、「人が集まる場」の需要。
――まずは子ども食堂をはじめたきっかけを教えてください。
高橋さん:最初は「どうしても子ども食堂をやりたい」という気持ちではじめたわけではなく、海岸清掃が活動のきっかけだったんです。去年の6月頃だったんですけど、新潟でも新型コロナウイルスがすごく騒がれはじめたとき、何かできることがあるんじゃないかって思ったんです。海岸を綺麗にしたいっていうのは前からずっと考えていたことだったので、今こそそれを行動にうつすときなんじゃないかと。最初は私たちの家族とか友達に声をかける程度で、20人くらいからスタートしたんですよ。

――海岸清掃からどのように子ども食堂につながっていくんですか?
高橋さん:2回目の海岸清掃のときに、1回目より広げて告知をしました。ちょうど外出自粛でどこに行っても心から楽しめないような状況で、「でも海岸清掃は外だしマスクもしていて安全だと思うからみんなで海岸のゴミ拾いしてみようよ」って。そうしたら60人以上も集まってくれたんです。
綱本さん:LINEで告知した中のひとりに拡散力がすごい方がいたみたいで。私たちもびっくりしました(笑)。1回目から飲み物の提供をしていたんですけど、2回目に子連れで来られた参加者の方が「朝ごはんもあると良いね」っておっしゃっていて、それを聞いて3回目には朝食の提供も考えるようになったんです。
「人と人がつながる場」としての子ども食堂
――なるほど、そこから食べものの提供がはじまる、と。
高橋さん:安全な場所さえ提供できれば人は集まるし、集まりたいと思っている人たちはいっぱいいるんだなってそのとき感じました。綱本はもともと食に興味があったので、そういうところがつながって「子ども食堂みたいなのができそうだね」って話になったんです。
綱本さん:3回目の海岸清掃で初めて朝食を提供したんですけど、会う人会う人に「子ども食堂がしたい」って言うようにして。そうするといろんな人が協力してくれるようになって、市役所の方を紹介してくれたり、立場のある方たちに会わせてもらえたりで、それからあっという間に子ども食堂ができたっていう感じでしたね。
高橋さん:流されるままに動いていたら、いつの間にか場が整っていて、「私たち、やらなきゃいけないんだ」ってところまできていました。

――子ども食堂のコンセプトはどういったものだったんですか?
綱本さん:私たちは固定の場所を持っていなかったので、「モバイル子ども食堂」っていうのをテーマにして、移動式の子ども食堂をしようと思いました。困っている人を待っているだけでなく、こちらから助けに行きたいっていう気持ちもありました。名前は「さくら食堂」に決めて。


――初回はどこで開催されたんですか?
綱本さん:初回は内野まちづくりセンターのホールで開催しました。去年の9月にプレプレオープン、10月にプレオープンして、そこからは月1回~2回開催していて、今年の2月と3月は毎週1回開催しました。
――反響はどうでしたか?
綱本さん:プレプレオープンで50名くらい来てくださいました。その次のプレオープンは市長さんや区長さんも来てくださってご挨拶までしていただきました。他にも自治会長さんや民生委員さん、あとは幼児からおじいちゃんおばあちゃんまで、年代問わずでしたね。
高橋さん:大学生のボランティアの方も15名くらい来てくださいました。たくさんの人たちが参加してくれるのを見て、「子ども食堂的な場所が今ここには必要なんだろうな」っていうのを改めて感じました。
綱本さん:毎回「お手伝いしたい」っていう若者の多さに驚かされますよ。コロナ禍で人と人とのつながりが薄くなっている状況で、若者の「なにか動きたい」とか「手伝いたい」っていう気持ちと私たちの思いが一緒になって人が集まってくれているように思います。


――逆に、見つかった課題とかはありましたか?
高橋さん:ここがスタートだし、最初は費用も自腹だったので、「ここからどうやって継続していくか」っていうのが課題だと思いました。開催を重ねることで、お野菜をくれる方がいたり、社協さんから食材の提供が受けられる登録先とかを教えていただいたり、助けてくれる方もでてきてくれたので徐々に継続の仕方が見えていったように思います。そこからはもらった食材を無駄にしないようにどうやって活用していくのかっていうところを考えるようになりました。
ただの「子ども食堂」の枠にはおさまらない活動に発展。
――内野まちづくりセンター以外ではどのような場所で開催されたんですか?
高橋さん:高橋さん:10月に開催したプレオープンにきてくださった自治会長さんから、「コロナ禍でなかなか交流がもてないから、町内に住んでいるこどもやお年寄りの為に、何かイベントを企画して遊んでもらってからお弁当を持ち帰ってもらうようなことはできないか」とお声がけをいただいたんです。それで11月にその自治会館でイベントを行いました。
綱本さん:そこでは皆さんの要望を受け入れて、リースづくりと、お弁当の提供をしました。この時点でもう私たちの活動は一般的な「子ども食堂」の枠には収まらなくなってきているなって感じましたね。
――「子どもだけ」ではないと。
綱本さん:子ども食堂や海岸清掃の他にも、また別の活動が増えていっていたんですね。それで、これは任意団体じゃないほうがいいねってことで、今年の6月に「一般社団法人Smile Story」を設立しました。「場の提供」と「人と人をつなぐ」ことでよりよい世界にしたいっていうテーマで活動しています。

――小学校でも子ども食堂を開催されていましたよね?
高橋さん:内野小学校が土曜日に学校開放で午前中に遊びの場を提供しているので、その後にお弁当として配らせてもらうっていうことを3回やりました。そうすることで内野の方たちに「さくら食堂」のことを幅広く知ってもらいたかったんです。お陰で、子どもたちに会うと「あ、さくら食堂の人だ」って言われるようにまでなりました(笑)
綱本さん:それが3回で終わったのには理由があって、普段は60人くらいの学校開放なんですけど、私たちが出ると一気に人数が増えてしまって100人以上になってしまって。このコロナ禍でそれはまずいっていうことで打ち切りました。でも「困ったらさくら食堂がある」っていうことを広く知ってもらうっていう目標は達成できたと思います。
プロが作るお弁当が食べられる、「Kansichi子ども食堂」のスタート。
――「旬菜バルkansichi」の正木さんとの出会いは?
綱本さん:私、お酒が好きなので毎日いろんなところに飲みに行ってて、そのひとつが「旬菜バルkansichi」だったんです。そこでお酒飲みながら陽気に「さくら食堂」の活動の話をしていたら、なんともありがたいことに正木さんが興味を持ってくれたっていう流れですね。

正木さん:いろいろな話は聞いていたので、大変なんだろうなっていうのは想像できました。うちの店もコロナ禍の時短要請とかで、ずっと仕込みに追われているような状況ではなく時間を作ることはできたので、なにか手伝えることがあればやりたいなと思ったんです。そしたら「お弁当を作って子ども食堂で提供してみませんか」っていうお話をいただいて、参加させてもらうことになりました。
――プロの方が作る子ども食堂のお弁当ってすごいですね。
正木さん:食材がどういうかたちで提供されてどうやって使うのかも聞いてはいたけど、やっぱりやってみないと分からないっていう部分があって、打ち合わせは何回かしたんですけど、とりあえず1回やってみましょうとなりました。開催後に細かいところをつめて次に修正していきましょうって感じで。やるなら1回ではなく継続してやりたいと思っていましたし。1回目を今年の4月に開催しましたんですけど、そしたらものの数分で売り切れちゃったんです。
綱本さん:3分くらいでしたね(笑)。すごい行列ができたんですよ。


正木さん:11:30からオープンしますって言ってたら、10:00くらいから並びはじめて。まわりのお店も営業していたので迷惑にならないように整理券も用意していたんです。そうしたらオープン前にもう整理券全部なくなって、オープンする前から売り切れ状態になりました(笑)。あっという間に終わってしまいましたね。
綱本さん:正木さんが朝からずっと仕込んでくれてるのに、販売はほんと一瞬で終わるっていう(笑)
正木さん:そして反省会がてらご飯でも食べますかって言って飲みましたね。そんな感じでもう5回やりました。
――最強の助っ人をゲットした感じですね。
綱本さん:助っ人っていうかもうメインですよね、リーダーです(笑)。「kansichi子ども食堂」っていうのも私たちが勝手に作ったんですよ(笑)
正木さん:ポスター見て「こんなのできたんですね」って驚きました(笑)
――正木さんがお料理を作るときは「kansichi子ども食堂」としての活動になるんですね。
綱本さん:「kansichi子ども食堂」の活動をSNSで告知してくださるときにも、私たちの「Smile Story」っていう社名も必ずタグ付けしてくれているのでほんとうにありがたいです。正木さんの料理を食べたいっていうかたもたくさん来てくれるので広がり方が全然変わりました。

地元で採れた旬の食材を使った、家庭的なお弁当。
――実際の中身はどのようなお弁当なんですか?
正木さん:基本的には使える食材が決まっていて、子ども食堂というテーマの中で作っているので、お家でも作れるものとか、家庭的でオーソドックスなお弁当を作っているっていう感じです。お店で提供しているものとは手間のかけ方にはどうしても差がでてきてしまうので、そのあたりの迷いも最初はありました。お客さんに出すからにはもうひと手間とか加えたほうがいいんじゃないかって思ったりもしたんですけど、今は逆にそれは必要ないんじゃないかって思うようになりました。シンプルに食材の味で食べてもらうっていうのが多いです。
綱本さん:正木さんはこうおっしゃいますけど、やっぱり私たちとは基礎の段階から違うので、出来上がったものは本当に美味しいですよ。きゅうりのたたきとかだけでも全然レベルが違うって感じで、みんな絶賛しています。
――ところでお値段は?
綱本さん:最初は大人500円で子ども100円でやっていたんですけど、毎回大人と子どもの数はどうしてもバラつきがでてきてしまうので、一律400円にして継続的に運営できる方法を試行錯誤しながらやっています。400円の中には子ども活動支援金も含まれています。本当に食べることに困っている方には、無料とかもっと安価な値段で渡したいので、その支援金からまかなうようなシステムを作りました。
――なるほど。


正木さん:「こども食堂」って、本来は困っている人が買うべきものなんじゃないかって思っている方も多くいらっしゃるんです。なので前回は注釈として「購入していただいた収益は活動を継続していくための寄付も含まれています」という文言も表記したんです。注釈を入れたことで幅広い人が「私も買っていいんだ」っていうふうに思ってもらえたように思います。自分が買うことで困っている人を助けることができるんだっていう思いに変わったんだと思います。
――それだと確かに買いやすいですね。
高橋さん:困っている人を助けたいけど、どうやったらいいか分からないって方って多いと思うんです。本当に困っている方たちが「助けてください」って言える場がもっとあればいいなって思っています。
人と人の想いがつながる場所の提供
――「場所の提供」っていうのが活動の大きなテーマにあるんですね。
綱本さん:「さくら食堂」や「kansichi子ども食堂」は子ども食堂として活動していますけど、これは食を提供するひとつのきっかけでしかないと思っています。私たちがなぜいろんなことをするかと言うと、もちろん楽しいからっていうのもありますけど、いろんな場を作ることで様々な人たちがつながっていくんですね。食で困っている人と食を助けたい人がつながるのは「さくら食堂」や「kansichi食堂」で、環境問題を考えている人たちがつながれるのは海岸清掃の「スマイルクリーン」とかそういう感じです。その場の提供をしているのが「一般社団法人Smile Story」の役割だと思っています。


――今後の目標は?
高橋さん:つながりを見つけて、それをつなげる面白さみたいなのは感じています。この前は地引網と海岸清掃がつながったイベントがあったんですよ。
綱本さん:「地引網やりたい」っていう方がいて、海で地引網やるなら海岸清掃と合わせたらいいんじゃないかって思って(笑)
高橋さん:「夏休みの子どもたちのイベントにもなるし、いいじゃん」ていうことでやってみました。これも300人近く人が集まってくれましたね。自分たちが面白いって思っていることは皆さんにもその面白さをシェアする場を作ることができるんだっていうのは1年間を通して感じたことなので、そこを大事にしながら今後も続けていきたいと思っています。
綱本さん:世の中がもっと住みやすいようになればいいな、っていうのがまず大前提としてあります。そうするためのアイデアは常日頃からたくさん出てくるので、それを実現していく感じですかね。あと人と人とがつながって雇用が生まれたらいいなって思います。そして私としては、法人としてもこの団体を大きくして、いずれは脳性麻痺の人を救う援助をしたいと思っています。1年間で200万円必要なので、そういう方をひとりでも多く救いたいって思っています。
※「Smile Story」さん開催の子供食堂開催の情報はインスタグラムやホームページで確認できるとのことでした。その他にもご相談などあれば、お気軽にメッセージを送って欲しいとのことでしたよ。今後の活動を応援しています!
一般社団法人Smile Story
kansichi子ども食堂 毎月第2日曜日開催
さくら食堂 不定期開催
スマイルクリーン 毎月第1 or 第2土曜日開催
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