僕らのソウルフード。背脂たっぷり極太麺の燕背脂ラーメン。
ソウルフード・食べる
2019.10.11
新潟5大ラーメンの燕背脂ラーメンとは?
「新潟5大ラーメン」とは、新潟県を代表する5種類の人気ラーメン。「Things」でも今まで、「新潟あっさり醤油ラーメン」の三吉屋、「新潟濃厚味噌ラーメン」の東横笹口店、「三条カレーラーメン」の大衆食堂正広の3軒を紹介してきました。今回紹介するのは「新潟5大ラーメン」の中でも特に個性の強い「燕背脂ラーメン」です。煮干しが香る醤油スープに、うどんのようなモチモチ食感の極太麺が絡み、そのすべてを覆うように真っ白な背脂が大量に振りかけられるラーメン。そんな「燕背脂ラーメン」発祥の店「杭州飯店」の徐直幸さんにお話を聞いてきました。


杭州飯店
徐 直幸 Naoyuki Jo
1973年燕市生まれ。杭州飯店代表。10年間修行する予定で新潟市の中華料理店に就職するが、実家の「杭州飯店」が人手不足になり、呼び戻される形で平成3年より働き始める。ハーレーダビッドソンでツーリングにいくことが趣味で、北海道をキャンプして回ったりもする。
トッピングの玉ねぎは長ねぎの代用品だった?
——今日はよろしくお願いします。さっそくですが、燕背脂ラーメンの歴史は古いんでしょうか?
徐さん:私のおじいさんの代までさかのぼります。最初は煮干しベースの醤油スープに細麺の、あっさりしたラーメンだったんです。昭和10年頃の燕市は金属加工などの工場が多くて、お腹をすかした職人たちが店にやってきました。そんなお客さんたちに少しでもお腹いっぱいになってほしいと思ってボリュームのあるラーメンを考えました。トッピングのチャーシューを増やすことも考えたんですが、それでは値段も高くなってしまいます。そんなある日、訪れた肉屋で取り除かれた背脂の山を見つけて、それを買って帰りラーメンに入れてみたところ、ボリュームのあるラーメンが誕生した、というわけです。
——あれ、そうなんですか? 出前のときにスープが冷めないように背脂でコーティングしたという説もありますが…。
徐さん:結果的にそういう効果も生まれたんですね。最初はラーメンにボリュームを出すためだったようですよ。昭和40年代に入って私のおやじの代になってから、工場へ出前の際に伸びにくいよう麺を太くしました。刻んだ玉ねぎがトッピングされたのは、長ねぎの値段が高騰した時期があって、まかないのラーメンで使っていた玉ねぎで代用してみたところ、甘みが出て背脂にマッチしたんですね。
——いろいろなことが重なって現在のスタイルが完成したんですね。ラーメンはどんなところにこだわって作っていますか?
徐さん:トッピングのチャーシューは脂身がないモモ肉を使っています。これは、スープに背脂が入っているので、脂身の多いチャーシューを入れるとスープとケンカしちゃうからです。スープ、麺、トッピング、全体のバランスが大事なんですよね。

「杭州飯店」はラーメン店ではなく中華料理店だった?
——「杭州飯店」はどのように誕生したんでしょうか?
徐さん:私のおじいさんの徐昌星(じょしょうせい)は中国の温州(うんしゅう)から日本に来たんです。全国を回って、仙台あたりで屋台を手に入れて、ラーメンを売りながら妻子を連れて燕市にやってきたそうです。昭和8年、燕市の穀町に「福来亭(ふくらいてい)」を開店しました。「杭州飯店」として開店したのは私のおやじの代になった昭和50年頃のことです。最初は中華料理店として開店したんですよ。
——ラーメン店ではなくて中華料理店だったんですか。
徐さん:店の3階には大広間もあって、地元企業の宴会や結婚式なんかもやっていたんですよ。予約制でフカヒレスープなんかも出してました。でも、当時から背脂ラーメンは人気があって、お客さんのリクエストで宴会の締めに背脂ラーメンを出したりしてましたね(笑)。時代の流れなのか、結局ラーメン店になっていってしまったんです。
——その背脂ラーメンが、今では新潟を代表するご当地ラーメンですもんね。県外から来るお客さんも多いんじゃないですか?
徐さん:北海道からキャンピングカーで来てくれた老夫婦がいましたね。あと、沖縄から来た新婚旅行のカップルもいました。わざわざ県外から食べに来てくれるお客さんがいるのは、ありがたいことですよね。

変わらない味を代々受け継いでいきたい。
——燕市に対してどのような想いを持っていますか?
徐さん:やはり金属加工の街というだけあって、メーカーに厨房製品の要望を伝えると対応が早いんです。飲食店にとっては最適な街じゃないでしょうか(笑)。その反面、若い人をはじめとして、人が減っていっているように思います。今までは高校生アルバイトもたくさん雇っていたんですけど、高校が減って、地元に高校生がいなくなってしまったんです。ですから、もっと人が集まる地域になるといいなと思いますね。
——今後、どのように背脂ラーメンを提供していこうと思っていますか?
徐さん:作り手が変わると、どうしても味が変わってしまうんですよね。でも、代々受け継いだ味を変えないように気をつけてます。そんな中でお客さんから「変わらない味だね」「いつ食べても美味しいね」といってもらえるのは、自分の味が認められた証拠だと思うので、最高にうれしいですね。そして、この味を私の息子にも受け継ぎ、代々続いていってくれたらと思っています。

工場で働く職人が多い街・燕市だからこそ誕生した、ボリュームがあって、出前の際に伸びにくい背脂ラーメン。今では地元の常連客だけではなく、評判を聞いた県外客も食べに来るほどの人気ラーメンになっています。人が少なくなりつつある燕市に活気を取り戻せるよう、ますます燕背脂ラーメンの人気が広まってほしいですね。

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