目に映るもの、出会う人、そして日々の生活……海外から新潟にやってきた人たちは、今、この街でどんなことを思い、感じているのでしょう。新シリーズ『New Eyes Niigata』では、海外出身の皆さんが歩んできたこれまでの人生の物語を振り返りながら、彼らが「新潟」という新しい環境で見つけた、小さな発見や気づきをお伝えしていきます。

 

第4回目は、イタリア・ヴェネツィア県にあるイエゾロ出身のミキさんです。2005年に来日し、漬物工場や英会話講師などのキャリアを経て、海に近い四ツ郷屋でピッツァ店「Officina Italia」をはじめました。現在は、自ら改装したガレージで本場の味を提供し、理想のライフスタイルを体現されています。「信じて動けば、夢は叶う」。そう語るミキさんの、あふれる行動力と店づくりへの思いについて、お話をうかがってきました。

 

 

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu

 

イギリスでの出会いから新潟へ。漬物工場での仕事と日本語に励んだ日々。

――まず、ミキさんのご出身について教えてください。

ミキさん:イタリアのイエゾロという街です。ヴェネツィア県にある、海沿いのリゾート地ですね。

 

――新潟へ来たのはいつ頃だったんですか?

ミキさん2005年の3月に来ました。もともと5年くらいイギリスで暮らしていた時期があって、そこで出会った新潟出身の日本人の友人に勧められたのがきっかけです。

 

――思い切りましたね(笑)。もともと日本での暮らしに興味はあったんですか?

ミキさん:そうですね。子どもの頃、夕方になると『ドラえもん』や『キャプテン翼』、『ルパン三世』が放送されていたんですよ。だから、日本のアニメや文化にはずっと憧れがありましたし、いつか行ってみたいと思っていました。

 

 

ミキさん:これは『キャプテン翼』の長袖Tシャツです。「NIPPON」というブランドの服なんですけど、僕が高校生くらいのときにイタリアですごく人気が出て、みんな欲しがっていたんです。日本に来るときに思い出の品として持ってきました。

 

――新潟での住まいも、いろんな選択肢があったと思います。どうして今の場所で暮らそうと思ったんですか?

ミキさん:最初は友人の家に住んでいたんですけど、あまりうまくいかなくなって(笑)。それから自分で住む場所を探していたときに、この物件を見つけました。いつか自分のお店をやりたいと思っていたから、ガレージのあるこの場所がいいかなと。あと、僕はセーリングをよくやるので海が近いのも最高でした。

 

――ご友人と離れて、異国の地でひとり暮らしとなると……。仕事を見つけるのも大変だったんじゃないですか。

ミキさん:そうですね。来たばかりの頃は、日本語がほとんど話せなかったので、言葉を使わずに働ける場所を探し回りました。それから家の近くにあった漬物の会社で働けることになったんですが、社長も社員の人たちも、日本語がうまく話せない僕を優しく迎え入れてくれて。みなさんには本当に感謝しています。ただ、仕事の内容はかなりハードでしたよ(笑)。トラックで運ばれてくる大根を、ベルトコンベアへ下ろす作業です。日本に来たときは体重が90kgあったんですけど、体を動かす仕事のおかげで10kg以上痩せました。

 

――それはハードなダイエットでしたね(笑)

ミキさん:その後、新潟市内にあったブラジル料理店で働きはじめて、そこで出会った大阪出身の親友とたくさん話したことで、日常会話ができるようになりましたね。英語を勉強したときもそうでしたが、チャットをしたり、誰かと話をしたり。とにかく毎日練習することが大切なんです。それから、お好み焼き屋やイタリアンレストラン、英会話教室の先生といろいろな仕事をしながら、毎日日本語を使って覚えていきました。

 

15年の構想とDIY精神。「信じて動けば、夢は全部叶う」

――こちらのお店の、ガレージの中にピッツァ屋を作るって発想が面白いですよね。

ミキさん:そう感じてもらえたら嬉しいですね。 店名の「Officina(オフィチーナ)」は、イタリア語でガレージやワークショップという意味があります。2020年にオープンしたんですが、店の構想は15年間練っていました。

 

――どうして、ガレージだったんですか?

ミキさん:イギリスに住んでいた頃、友人たちとよく行っていたお店があったんです。外観はちょっと古くて、まるでお化け屋敷みたいなんだけど、中に入るとガラリと雰囲気が変わってすごく明るくて。店員とお客さんが一緒に踊っているような、最高に楽しい空間でした。そのギャップが面白いなと思って、僕もあえて外観はガレージっぽさを残して、中に入ると温かい雰囲気が広がるような店を作りたかったんです。

 

――なるほど。内装やスタイルはミキさんのルーツが詰まっているんですね。

ミキさん:そうです。お客さんが入ってきた瞬間にイタリアを感じてほしいと思って、BGMはイタリアのオンラインラジオを流しています。接客もあえて「いらっしゃいませ」と言わないスタイルです。内装に関しては、僕の身長が189cmあるので、カウンターの高さは全部自分のサイズに合わせてDIYで作りました。電気の配線や断熱、タイルの施工も自分で作業しました。自分で勉強してかたちにするのが好きなんですよ。

 

 

ミキさん:あと、コーヒーを淹れるときは必ずこれを使います。今は便利なマシンも増えたけど、これを使って淹れるカプチーノやカフェモカの方が、味が濃くなって美味しいんです。こういう小物も含めて、イタリアの友人の家に遊びに来たような感覚を楽しんでほしいんです。

 

――ピッツァの特徴についても教えてください。

ミキさん:新潟にはナポリピッツァの店が多いけど、みんな同じだとつまらないでしょう? だから僕は、イタリアで人気のある「パンピッツァ」のようなスタイルにしています。外はカリカリ、中はモチモチな生地が特徴です。材料はチーズも粉もイタリアから取り寄せて、水だけ新潟のものを使っています。48時間発酵させて作るのが、僕のこだわりのピッツァです。

 

 

――味はもちろん、店内の設えやBGMまで、ミキさんの「好き」が徹底されているんですね。今日持ってきていただいた私物も、そのスタイルに通ずるものがあるのでしょうか。

ミキさん:これは「Nolan X-lite」のカーボンヘルメットです。昔タイへ旅行に行ったとき、ノーヘルでバイクに乗っている人を見て衝撃を受けて、「バイクいいな」って思ったんです。日本に戻ってから免許を取って、ずっと憧れだったドゥカティに乗るために貯金をしました。このヘルメットとバイクを手に入れたときは、夢がひとつ叶った瞬間でしたね。

 

 

――こちらのサングラスと白いニット帽は?

ミキさん:このサングラスはイタリアのブランドで、日本に来てからずっと同じモデルを使っています。海によく行くので、日差しの強い場所では必須なんです。このピンクのバックパックは、1990年代に地元の友人もみんな持っていた思い出のものです。好きな色が赤やピンクだから、身につけると元気が出ますね。

 

 

――お話をうかがっていると、仕事も遊びも、「やりたいこと」をすべてかたちにし続けていますよね。

ミキさん:この20年で、やりたいことは全部実現できました。3年前には、偶然知り合ったおじいさんからカタマラン型ヨットを譲り受けて、YouTubeを見ながら1年かけて自分で修理して乗れるようにもなりました。今はカイトサーフィンが好きだから、次はフォイルサーフィンにも挑戦してみたいですね。

 

 

――やりたいことが、次から次へと溢れてきますね。

ミキさん:この記事を読んでくれる人たちに僕が伝えたいのは、「やりたいことを実現するために行動すれば、夢は叶う」ということです。新潟へ来たばかりの頃は知り合いもいませんでしたし、日本語も全然話せませんでした。でも、夢に向かって行動をし続ければ近づけます。時間はかかるかもしれないけど、信じてやってみるべきだと思います。

 

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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