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贈る側にも贈られる側にも思いを寄せるドライフラワー専門店「ハナスキ」

卒業式、送別会、歓迎会など、3月はたくさんの出会いと別れがあります。大切な人へのプレゼントに、手入れが簡単で長く飾っておけるドライフラワーはいかがでしょうか。今回は「ハナスキ」として活動するドライフラワー作家、高橋さんの店舗兼アトリエを訪れ、いろいろとお話を聞いてきました。

 

ハナスキ

高橋 裕子 Yuko Takahashi

1982年十日町市生まれ。ファッション系の専門学校を卒業後、商業施設などで働く。2018年にドライフラワー作家「ハナスキ」として活動をはじめる。2023年に店舗兼アトリエ「ハナスキラボ」をオープン。お花でもファッションでも、カラフルな色合いを生かすのが好き。

 

自宅を彩るアイテム、ドライフラワーを自作。

――高橋さんは、アパレルの経験が長いですよね。どういったきっかけで、ドライフラワーを作りをはじめたのか気になっています。

高橋さん:自宅を建てたときが転期でしたね。雑誌を見て、観葉植物やドライフラワーを飾っているお家に惹かれたんですけど、そういう雑貨類をどこで買ったらいいのかわからなくて。それで「自分で作るのが、手っ取り早いんじゃないか」と思ったんですよね。手を動かして何かを作るのが、好きなんですよ。

 

――でもインテリアだったら、ドライフラワー以外もいろいろありますよね。

高橋さん:最初は、観葉植物に手を出しました。でも大きく育つと場所を取るし、子どもたちが土をいじるかもしれないと思うと、なかなか大変で。その点ドライフラワーは壁にかけておくだけでいいですから、手軽なんですよね。

 

――作り方はどうやって習得したんでしょう?

高橋さん:どこかに習いに行ったわけでなく、独学です。見よう見まねで作ってみるんですけど、最初はなかなかできないんですよ。でもその分、完成したときの達成感がすごくあるんです。しかも、自分で作ったドライフラワーは、ものすごくかわいい(笑)

 

 

――そこからはじまって、今はお仕事にされているくらいだから、どんどんハマっていった、と。

高橋さん:手作りのドライフラワーをInstagramにアップすると、それなりの反響がもらえるんですよ。友達から「販売してみたらいいじゃない」と言われて、調子に乗ったんですね(笑)

 

――店舗を構える前は、どうやって販売していたんですか?

高橋さん:いちばんはじめは、働いていたカフェに置かせてもらいました。「趣味でドライフラワーを作っているので、売らせてもらいませんか」ってお願いして。あのとき、ものすごく緊張しました。

 

――反響はどうでしたか?

高橋さん:月にひとつ、ふたつ売れるかどうかって感じでした。それでも「こういう作品があるんだ」「『ハナスキ』が作っているんだ」って知ってもらうだけで、十分嬉しかったです。儲けようって気持ちはまったくなくて。きっとただ単純に、作ったものを見てもらいたかったんですね。

 

店舗オープンのきっかけは、子どもの成長。

――店舗を構えたのは、2年前ですよね。

高橋さん:「よし! いつかお店を持つぞ」って、気構えていたわけじゃないんですよ。子どもが大きくなって、在庫部屋にしていた一室を子ども部屋にしなくちゃならなくて。資材の置き場所がないから、「仕方がない。敷地内に新しい在庫部屋を作ろう」ということにしたんです。どうせなら、お客さまに足を運んでもらえる「お店」にするのがいいのかなと、アトリエ兼店舗というスタイルになりました。

 

――はじめてカフェでお手製のドライフラワーを販売した以降もドライフラワー作りを続けていたってことですよね?

高橋さん:Instagramにオーダー作品を載せていると、全国各地から「こういう感じのもの、作れませんか?」とご依頼が届くんですよ。

 

――へぇ。そんな自然な流れで作家さんの道がひらけたんですね。

高橋さん:「ハナスキラボ」を構えることになるなんて、まったく予想していませんでした。でも、それでなおさら気合いが入りましたよね。「本気でやらなくちゃ」って。

 

 

――ひとつの区切りになったみたいですね。

高橋さん:稼ぎ頭は夫ですし、私はパートをしながら作家活動もしているって働き方でしたけど、「このやり方でいこう」って気持ちを固められたところはあるかもしれないです。以前よりも、仕事のことをじっくり考えるようになりました。

 

――お花とはジャンルが違う、木製ロボットのことも聞きたいと思っていました。

高橋さん:「ロボットクン」ですね(笑)。十日町で暮らす、実家の父親が作っています。初孫が生まれた記念に植えた、桜の木を使っています。可愛いからお店に飾っていたら「これ、欲しいです」って方が何人もいたので、「ハナスキラボ」で扱うことにしました。

 

――それは、お父さんの張り合いになっているんでしょうね(笑)

高橋さん:ひとつ売れたら、3つくらい届くんですよ(笑)。もう増えるばっかりなんです。

 

贈り物だから生まれる「つながり」に思いを寄せる。

――ドライフラワーは贈り物やコサージュにぴったりだから、春は忙しそうですね。

高橋さん:卒業、入学の時期ですからね。オーダー品以外にも、プチギフトもお店に置くようにしています。ガラスボトルに入ったアレンジメントは、すごく人気があるんですよ。

 

――これまでで、思い出に残っているお仕事はありますか?

高橋さん:今パッと思い浮かんだのは、ショックだった思い出です。お客さまとのイメージの共有がなかなかできなくて。完成まで何度か作り直したんですけど、途中からやり取りが途切れてしまいました。きっと違うお店を選ばれたんだろうと思っています。気にしないようにしようとしても、あのときはすごくショックでした。今は強くなりましたけど、当時はまだまだ弱い人間でしたね。

 

 

――ドライフラワーを作るときは、どんな思いを込めていますか?

高橋さん:ギフトの場合は、お客さまがどなたかにお花をプレゼントされるわけですよね。きっとお花をあげるって、相手はすごく大切な人だと思うんです。そこにある気持ちを、私なりに想像しながらドライフラワーを作っています。アパレルで働いていた頃から、「人とのつながり」をいちばん大切にしてきました。お客さまとその先のプレゼントを渡す相手、その間にある「つながり」をちゃんと思い描きながら制作しているつもりです。

 

――さて最後に、今後に向けて考えていることがあれば教えてください。

高橋さん:2階部分も、店舗にすることが目標なんです。今は、狭くて作業がしにくいですし、小さいお子さんが来てくれたときなんかは、お母さんが「気をつけて。触っちゃダメよ」と目を配らなくちゃいけないから、なんだか申し訳なくて。頑張って働いて、もうちょっと広いスペースでお客さまをお迎えしたいと思っています。

 

 

 

ハナスキ

胎内市柴橋160

open/10:00~17:30

定休日/火木日曜(不定休あり)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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