長引くコロナ禍で出不精生活が続き、なんとなく体調がすぐれない、どこか身体がおかしい、なまり切ってしまった身体をなんとかしたい……といった悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。そんなときに気になるのは、街を歩くと意外と目にすることの多い整体や指圧、マッサージ、カイロプラクティックなどのお店です。とはいえ、そういったサービスに縁遠かった人にとっては、ともすれば「ボキボキ」「ゴリゴリ」される痛そうなイメージが先行し、お店の敷居を跨ぐのに二の足を踏んでしまう場合が多いことも確かです。そこで今回は、ズバリ「無痛整体」の看板を掲げる村上市の整体・鍼灸院「樹庵」さんの剣持院長に、「痛くなくても、ホントに効くの?」という超初歩的なところから詳しくお話を伺ってきました。
無痛整体院・鍼灸治療院 樹庵
剣持 樹 Miki Kenmochi
1984年群馬県生まれ、村上市育ち。鍼灸師、整体師で「無痛整体院・鍼灸治療院 樹庵」院長、「赤ひげ塾バランス活性療法」講師。地元・村上の専門学校で鍼灸師の国家資格を取得後、上京し都心部の鍼灸接骨院に勤め、整体師の民間資格も取得して2009年に帰郷し開業。通常の外来施術のほか、訪問施術、子ども向けの健康教室や親子整体教室、自分たち夫婦の不妊経験を活かした妊活整体などにも力を入れる。小6から4歳まで5人の子どもは全員男児。
――本日はよろしくお願いします。さっそく不躾な質問で恐縮ですが、「無痛」ってホントなんですか?
剣持さん:もちろん本当です(笑)。「無痛」を掲げ、開業からかれこれもう13年になりますね。
――バリバリの先入観ですが、「痛くないと効いていないんじゃないか」っていう気持ちも正直あるのですが……。
剣持さん:そんなことまったくありませんよ(笑)。身体の歪みを直すとき、そういった「ボキボキ」「ゴリゴリ」させるイメージは主に「骨の位置を正すことで筋肉の無理を取り除く」というアプローチからきているものですが、うちはその逆で、「筋肉を整えれば自然と骨の位置も良くなる」という考え方で、主に筋肉へアプローチする手法を採っています。人間の筋肉って息を吸うときに緊張し、吐くときに緩むんですけど、その緩んでいる時に軽い力で作用を与えるだけで十分な効果があることが分かっているんです。施術自体はストレッチのお手伝いをするような感覚ですね。
――それでホントに痛みや凝りがとれるものなんですか?
剣持さん:はい。うちは「無痛」とともに「対症療法でなく根本改善」もモットーにしています。肩凝りを例にとるとすれば、肩の筋肉を揉んだりして一時的に楽になったとしても、またすぐに凝ってくることってよくありますよね。それってつまり、原因が肩にあるわけではなく、どこか別の箇所や全身の姿勢そのものに問題があるということです。なので症状のある箇所だけを見るのではなく、全身の筋肉の立て付けを整えることで改善させれば、必然的に症状も和らぎ、以後も症状の出にくい身体になります。なのでうちの施術は、その人に合わせた完全なオーダーメイドになります。
――つまり全身あるいはどこかの箇所で生じている負担・歪みを無意識にかばったしわ寄せが肩にくる、ということですか。
剣持さん:そうですね。そもそも身体の「歪み」自体、それほどネガティブなものだとは捉えていません。人間はある意味で体を守るために歪ませている、というか、身体を歪ませるのは負担を無意識に分散させる一種の防衛反応のようなものなんです。身体のどこかをラクにするために別のどこかに負担をかけている、というか。それがいくつかの要因で無理を溜め込みキャパシティを超えた箇所に痛みが出てくるわけですが、その要因としては主に、身体が「冷えている」、「運動不足」、「硬い」の3つだと考えています。従って、施術とともに普段からその3つを改善できるような身体づくり・生活をしてもらうことで、慢性的な症状のある方もかなり改善されます。
――なるほど……でもぶっちゃけた話、「根本改善」しちゃったらもう来なくなってお客さんが減ったりしません?
剣持さん:いやいや(笑)、人の身体を良くするのが仕事ですから。うちのやり方を理解してくれている常連さんは、たとえ症状が出ていなくとも定期的に身体のメンテナンスとして通ってくれます。症状が出てからでなく、普段からケアしていくことが再発予防の観点からも重要ですから。
――話を戻すと、痛みの要因は必ずしもその場所にはない、とのことですが、例えば膝や腰が痛むのを何とかしたいという人が来院したとして、どこに要因があるかはすぐに分かるものなのですか?
剣持さん:カウンセリングでお話を聞き、姿勢を見せてもらえればだいたい分かりますね。大元を探ると、以前は骨盤に最終的な要因を求めていましたが、現在はそれに加えて、もっと下の身体を支えている下半身、足の指も改善の大きなカギになっていると考えています。例えば先ほどの肩凝りの例でいえば、肩に負担がくるのは背中が丸まっているからで、背中が丸まっているのは無意識に腰への負担を避けているからで、腰に負担をかけたくないのは足が上半身をしっかり支えていないからで……という感じで、肩凝りの根本要因が足先にあったりもするんです。
――足、ですか?
剣持さん:足の指がきれいに開くかどうかで、全身のバランスがちゃんとしているかどうかが分かるんですよ。極端な例ですが、普段履いている靴を自分の足に合ったものに替えるだけで、膝や腰、肩の痛みが改善したりもします。驚くことに、最近は子どもにも意外と多いんですよ、肩凝りや膝、腰の痛みを抱えている子が。そういう子も、自分の足に合わない靴を履いていて指先がうまく動かせない場合が多いですね。あまり例は挙げたくありませんが、ずっと樹脂製サンダルを履いているとか……。もちろん他に、生活習慣や服装の大人化や遊び方の近代化などで、先ほど挙げた「冷え」「運動不足」「身体が硬い」にあてはまる場合が多くなっていることも大きな要因です。
――子どもが肩凝りや腰痛ですか。ちょっとイメージしにくいです。
剣持さん:私も子を持つ親として、そういった子が増えていることに危機感を感じ、子ども向けの健康教室や親子整体教室にも力を入れています。うちは痛くないのが売りの一つなので、喜んでやってくれますよ(笑)。
――では少し個人的なお話も。剣持さんが整体師を志したのは?
剣持さん:そもそも父が鍼灸や整体の治療家なのですが、自分が小・中・高とずっと打ち込んできた柔道で、身体を痛めた際や大事な大会前などに父から鍼治療や整体を受けてきたことが最も大きいですね。施術を受けると驚くほど痛みが和らぎ、東洋医学・手技療法のスゴさを実感したことで、自分も治療師の道を目指したんです。地元の専門学校で鍼灸師の資格を取得して上京し、都内の鍼灸接骨院に勤めました。
――いわばサラブレッドなんですね。それから地元に戻って開業したのは?
剣持さん:父の甲子朗は自ら考案した「バランス活性療法」を実践する整体師の養成スクール「赤ひげ塾」を全国展開していて、自分も治療師としてさらにスキルアップしようとその講座を受けました。結婚してともに上京していた介護士の妻も同じく講座を受け、いっしょに整体師になったのですが、その過程で妻が妊娠したんです。それで以後のことを考えたときに、医療や福祉、教育の様々な面で窮屈な都心にこのまま住み、自分たちの理想とは程遠い環境で出産・子育てをしていくことは難しいなと思ったので、帰郷して開業することにしました。おかげさまで多くの皆様にご愛顧いただいています。
――ちなみに今お子さんは?
剣持さん:小6から4歳まで5人いて、全員男の子です。いま少し触れたように、うちは結婚してしばらく子どもができなかったんですが、夫婦でいっしょに整体を学び、実践していたら子宝に恵まれ、8年で5人の子どもを授かることができました。身体を整えるとそういう効果もあることを身をもって実感したことから、この経験を活かして「妊活整体」にも取り組んでいます。
――今後の展望はいかがですか?
剣持さん:みなさんの健康のために役立つのが本望ですが、それは必ずしも自分でなくともいいと思っています。現在は前述の父が主宰する養成スクールの講師もしているのですが、これまで自分が培ってきたノウハウは受講生に惜しみなく伝授しているつもりです。受講生の方が近所に開業されても、それだけこのノウハウを地域の方々に還元できる機会が増えるわけですから、競合相手とは思いません。それでいつかは自分がいなくてもこのやり方が広く普及してみんなが健康になり、子どもも手を離れたら、旅をしながら暮らすのが密かな夢です(笑)
――叶うといいですね(笑)。本日はありがとうございました!