僕らのソウルフード。閉店から復活、サクサクから揚げの「かもめ弁当」。
ソウルフード
2022.04.16
昨年の3月、県北・村上に衝撃が走りました。「かもめ弁当、閉店」。瀬波温泉と笹川流れの間、上海府地区の国道345号沿いで40年近く営業してきた同店は、サクサクかつジューシーで容器からハミ出す大きさの「から揚げ弁当」で特に知られ、老若男女を問わず地元内外の多くの人たちに愛されてきました。3月末を以て一旦は本当に閉店してしまいますが、周囲の惜しむ声があまりにも大きかったことから、翌月には現場のスタッフが中心となって同年の9月末までの期間限定で復活。再開終了前の8月には市内の同業の方が経営を引き継ぐことになり、めでたく以後も店舗の継続が決定、村上の人たちもホッと胸を撫で下ろしました。今回は経営を引き継いだ同じ村上市内の飲食店「食菜 和ごころ」を営む大越ちはる店主に、継承の経緯や継続後の手ごたえ、今後の展望などについて詳しくお話を伺ってきました。



食菜 和ごころ/かもめ弁当
大越 ちはる Chiharu Ogoshi
1974年村上市・岩船地区生まれ。しじみ塩ラーメンが人気の食堂「食菜 和ごころ」(同市山居町2)店主。一旦閉店し期間限定で再開していた「かもめ弁当」の運営を2021年8月に引き継ぎ、同店の営業を継続させた。モットーは「挑戦」。
名物店の引き継ぎは「まさか自分が」。身近な人の後押しも。
――本日はよろしくお願いします。お店の継続が決まり、地元を中心に喜んでいる方も多いと思います。
大越さん:ありがとうございます。変わらずご愛顧いただいているお客様、勤務を続けてくれている地元のお母さん方には、とにかく感謝、感謝です。
――さっそくですが、お店を引き継いだ経緯を教えてください。
大越さん:私は同じ市内の山居町で「食菜 和ごころ」という食堂をやっていて、そちらでもお弁当の製造・販売をやっているのですが、かもめ弁当さんとは、お世話になっている業者さんが共通していたんです。その業者さんを介して、お店を引き継ぐ人を探していることを聞き、お話をいろいろと伺っているうちに、「長年親しまれてきた地元のお店がなくなっちゃうのは寂しい、同業者として私にできることがあれば協力したい」という気持ちが高まってきて、お話をお受けすることにしました。
――そうだったんですね。
大越さん:私も村上に住む人間の一人として、閉店することを聞いてすごく残念に思いましたし、再開には心躍りましたが、まさか自分が引き継ぐことになるとは思いもしませんでした。……実は私以上に、「和ごころ」で一緒に働いている娘がお店の継続を喜んでいるんですよ。引き継ぎにあたっては娘の強力な後押しもありました、「ゼッタイやってよ」って(笑)。
――なるほど(笑)。それだけ老若男女から愛されているお店ということですね。

大切にしたのは「変えないこと」。味はそのままで、新たなサービスも。
――かもめ弁当さんといえば、「から揚げ弁当」をはじめ内外にファンの多いお店だと思いますが、そういう人気のお店を引き継ぐのに難しさとかはなかったですか?
大越さん:そうですね、引き継ぐにあたって最も心掛けたのは、「変えないこと」です。
――潔い! 詳しく教えてください。
大越さん:皆様に長年愛されている味をこのまま守っていくのが基本的な考えです。長年お店を切り盛りされてきた地元・上海府のお母さん方にはそのまま勤務を継続していただいていますし、から揚げをはじめ各メニューのレシピもそのままです。私たちはあくまで、経理や仕入れなど他の作業を担っている形です。ただ一方で、これまでになかった新たな取り組みも始めました。

――お、というのは?
大越さん:「和ごころ」の方のスタッフの機動力を活かして、お弁当の配達サービスを導入したんです。市内であれば、5個以上のご注文でお弁当をお届けしています。おかげさまで、会社の会合やスポーツ団体の昼食、地域の会合などに広くご利用いただいています。遠方の場合も、ご相談いただければと思います。

世代を超えて愛される「この味」を将来にも。
――引き継ぎから半年超が経過しましたが、手ごたえはいかがですか。
大越さん:おかげさまで多くの方に変わらずご愛顧いただいて、とてもありがたいです。引き継いで本当に良かった、と日々実感しています。コロナの状況にもよりますが、これから暖かくなって、行楽でこちらにいらっしゃる方もさらに増えると思いますので、気を引き締めてがんばっていきたいと思います。お店の歴史が長いので、夏になれば帰省で「あの味」を求めて来られる方もいらっしゃるでしょうし、またこの半年で改めて実感したことですが、世代を跨いで買いに来てくれるご家族も本当にすごく多いので、そういった期待にも応えていかなければと思っています。
――ところで名物の「から揚げ」ですが、レシピはやっぱり店外秘なんですか?
大越さん:そうですね、こちらに長年勤めていらっしゃる方が考案し、調理しているものなので、たとえ同じ作り方をしたとしても、まったく同じ味にはならないような気もしますね。竜田揚げっぽいというか、表面はサクサクで中はジューシー、揚げたてはいうまでもなく、冷めても美味しくて、私も娘も大好きです。個人的にはから揚げ以外にも、「さけ弁当」に入っているサケも塩加減が絶妙で、とっても美味しいですよ。

――ではそちらも今日、買って帰ります(笑)。……とはいえ、将来的にはそういった「その方々にしか出せない味」の継承も必要になってくるのでは?
大越さん:その通りです。今、お母さん方から若いスタッフが少しずつ、レシピや調理のコツなどを教わろうとしているところなんです。この味は決して変えずにずっと守っていかなきゃいけないので、しっかりと継承し、将来も同じ味で提供し続けていきたいと思っています。
――ぬかりないですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました!


から揚げ弁当 670yen(おかずのみ 570yen)
かもめ弁当 670yen
のりから揚げ弁当 550yen
エビ重 660yen
エビフライ弁当 670yen
かつカレー 670yen
カツ丼 670yen
ビーフカレー 540yen
さけ弁当 540yen
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