水と葡萄のいい関係。「WINE FARM TOCHIO」が造るワイン。
ものづくり
2024.10.24
ワイナリーの数が全国トップ10に入るくらい、新潟県ではワインの生産が盛んなのをご存知でしょうか。長岡初のワイナリーである「WINE FARM TOCHIO(ワインファームトチオ)」では、栃尾らしいみずみずしさを持ったワインが造られています。今回は日々葡萄とワインに向き合い続けている4人の方々にお話を聞いてきました。

WINE FARM TOCHIO
奈良場 晃大 Kodai Naraba
1989年長岡市生まれ。Uターンで栃尾の地域おこし協力隊として活動したのち、ワイン造りに取り組む。「WINE FARM TOCHIO」代表取締役。

WINE FARM TOCHIO
馬場 弘次 Koji Baba
1978年長岡市生まれ。建設会社に勤めたのち、親がはじめた葡萄栽培を手伝う。「WINE FARM TOCHIO」取締役。

WINE FARM TOCHIO
柴田 和香子 Wakako Shibata
1982年上越市生まれ。東京でデザイン関係の企業に勤めたのち、栃尾の地域おこし協力隊に入る。デザイナーとして、ロゴやラベルの制作を手掛ける。

WINE FARM TOCHIO
山本 英雄 Hideo Yamamoto
1964年長岡市生まれ。大手印刷会社に勤めたのち、2023年10月から「WINE FARM TOCHIO」で働きはじめる。

葡萄の栽培を、栃尾の基幹産業に。
──今日はよろしくお願いします。4人の方々にお集まりいただきましたが、皆さんそれぞれ担当されているお仕事は違うのでしょうか?
山本さん:畑作業、醸造、販売を私たち4人と、今日はいないですがもうひとりと、合わせて5人で一緒にやっています。

──まず、このワイナリーはどういった経緯でできたのでしょうか?
奈良場さん:2001年に僕たちの親世代が葡萄の栽培をはじめました。当時は「アグリコア越後ワイナリー」さんに委託醸造をお願いしていたんです。その後、自分たちやお客様にも、ここで造っているワインを楽しんでもらいたいと思って、2017年に「葡萄の杜」という飲食店をここで開きました。
──ワイナリーをはじめる前に飲食店をされていたんですね。
奈良場さん:ワインとそれに合う料理を出していました。それから2020年に赤ワイン用の葡萄の栽培をはじめて、去年このワイナリーをオープンしました。
──元々、栃尾でワインの栽培をはじめられたきっかけはなんだったんでしょうか。
馬場さん:親世代が定年を迎えたときに、地域として何か基幹産業になるものをはじめたいと考えたんです。そのタイミングで、「アグリコア越後ワイナリー」さんにワイン造りのノウハウを教えてもらって葡萄の栽培をスタートさせました。
──雪の多い地域での葡萄栽培って難しいですよね……。
奈良場さん:新潟県内にある他のワイナリーとは、葡萄栽培の方法はまったく違うと思います。栃尾は雪も雨も多いので、その対策として、斜めに木を植えたり、「レインカット」を付けたりしています。

──栃尾の気候に合った工夫がされているんですね。気候が違う分、ワインの味わいも変わってくるのでしょうか?
奈良場さん:ワインの楽しさのひとつだと思っているんですが、同じ品種であっても、産地や気候、土壌の違いで味が違うんですよね。水と絡みの多い栃尾で造られるワインはみずみずしい、フレッシュな味わいなんです。

栃尾100%。その年の味を存分に味わえるワイン。
──「タナ」という葡萄の品種が赤ワインで使用されていますね。こちらは県内でもあまり見ない品種ですね。
奈良場さん:そうなんです。フランス南西部原産で「タンニン(ワインの渋み成分)」が語源になっています。
──じゃあ、味わいも濃いめな感じのワインに?
奈良場さん:結構濃いですね。
柴田さん:本当はすごく渋い葡萄なんですけど、栃尾が水分の多い土地だからなのか、ここで作るタナは味が柔らかくなるんですよね。

──栃尾の土だからできる味なんですね。
柴田さん:醸造後の熟成の有無も関わっていると思います。うちでは全種類、その年に醸造したものを販売するっていうかたちでやっているんですけど、それでも美味しいって思ってもらえる、柔らかいけど、しっかりとしたコクみたいなのがあるんです。
──醸造から熟成せずに販売されるんですね。
奈良場さん:それが実は僕らのワイン造りの骨格なんです。ワイン造りも農業ととらえていて。去年と今年の梅雨はまったく天気が違いましたよね。そうなると、その年に造られるワインも全然違うんです。その年をぎゅぎゅって閉じ込めて、ボトルにして、その年のワインをお客さんと楽しもうって考えています。
柴田さん:あと、葡萄のブレンドっていうのもできるんですけど、それぞれの品種の味をしっかり感じてもらいたいので、造るワインは単一品種にしているんです。
奈良場さん:そうそうそう、それも大事にしていることです。そこから僕らがブランドとして掲げている「T100」の意味なんです。
──栃尾100%ということなんですね。ワインに対してどんな思いを持っているのでしょうか?
奈良場さん:もともと地元の長岡にワイナリーを作りたい、ワインで長岡を盛り上げたいと思っていたんです。ワインっていう飲み物は、地域をすごく元気にするものだと思うんです。食卓に花を添えるし、葡萄の段階であれば子供も楽しめるし、アルコールがダメな人もジュースで楽しめる。ワインを通して町が元気になっていくっていう夢が実現したら、それはすごく素敵だなと思っています。

多世代のつながりが生まれる、収穫体験。
──ここでは毎年収穫体験も行われていると聞きましたが……。
柴田さん:一年かけて大事に育てた葡萄の晴れ舞台なので、地域の人にも見てもらえたら楽しいよねってはじめました。
奈良場さん: 収穫を体験してもらうことで、畑や醸造でやっていることをイメージしてもらいやすくなると思うんです。感覚としてもいいものを提供できるし、ワイン用の葡萄の食味も楽しんでもらえるし。収穫体験にはある特徴があって、小さい子からお年寄りまで参加して多世代が集まるイベントになっているんですよ。実はこれ、このイベントの狙いでもあるんです。年齢も、家族構成も様々な人たちが集まって、そこでお年寄りが知らない子どもにハサミの使い方を教えてあげる、なんてシーンがあって。 そのときに、僕らよりも上の世代の方たちがすごくいい顔をしていたんですよ。それを見たときにすごくうれしかったです。

──葡萄以外にも、収穫のあるイベントだったんですね。
奈良場さん:自分たちだけで収穫や醸造をこだわるのも素敵だと思うんですけど、ワインを通して町を盛り上げたくて。そのためにも収穫体験をやる方がいいんじゃないかなって思ってやっています。僕らが楽しむのはもちろん、いろんな世代をこのワイナリーを通してつなげていけたらいいなって。
──なるほど。ワイナリーとして、これからの目標を聞かせてください。
奈良場さん:長岡初のワイナリーとして、これから長岡にできていくワイナリーのために、失敗してもちゃんと道筋を作れるようなチャレンジ精神を忘れないようにしたいですね。毎年美味しい葡萄を作るのはもちろん、また飲みたいって思えるワイン造りを、初心を忘れずにやっていこうと思います。

WINE FARM TOCHIO
長岡市栃尾本町3-11
TEL:0258-89-8960
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