多肉植物やドライフラワーを用いて植欲(しょくよく)、つまり植物欲を満たしてくれる人たちがいます。その名は「vinculo(ビンクロ)」。夫婦+母親の3人で組んだユニット。今回は旦那さんに、お仕事のバックストーリーや植物の魅力をうかがってきました。
Vinculo
丸山 拓也 Takuya Maruyama
1985年上越市生まれ。関東で美容師として活動し、新潟で料理人、焙煎士を経験。2018年に植欲を満たす空間デザインユニット「vinculo」をスタート。自然がとにかく好きで、アウトドアがライフワーク。
――今日はよろしくお願いします。丸山さんはどうして植物に関わるお仕事をしようと思われたんですか?
丸山さん:僕は高校を卒業してから関東で美容師として勤めていました。その後、新潟に戻って料理人としてイタリアンレストランやフレンチレストラン、カフェなどで勤務して、コーヒー豆の焙煎士も経験しました。そんななかで、ずっと趣味として楽しんでいたのが植物だったんです。美容室でも、飲食店でも、店内には必ず植物が飾られていて癒しの空間を作ってくれていました。たくさんの時間を植物と一緒に過ごしているうちに、どうしても植物の素晴らしさを多くの人に伝えたくなったんですよね。
――それではじめた「vinculo」というのは、どういった活動をされているユニットなんですか?
丸山さん:「植欲」といって、私たちが考えた造語があります。簡単に説明すると「植物への欲を満たす」こと。つまり植物で欲を満たすことでより良い暮らしを提案することが私たち「vinculo」の活動です。
――「植欲」ですか。面白い言葉ですね。具体的にはどのようなことを?
丸山さん:「vinculo」は僕たち夫婦と母の3人で活動しています。それぞれに担当があって、僕たちはドライフラワーのアレンジメントや雑貨の制作販売、母は多肉植物の栽培から販売、オリジナルの鉢植え制作をしています。
――ドライフラワーと多肉植物でパートが分かれているんですね。どんなドライフラワー雑貨を作っているんですか?
丸山さん:オーストラリアで最も有名なバンクシアという野生植物があります。見た目はギザギザした葉っぱで、特徴的な花序と果穂を持っていてとても男性好みなビジュアルなんですけど、そんなバンクシアをはじめとしたネイティブフラワーを用いて、廃材をウッドボードに再利用した雑貨を作っています。壁に飾ったり、棚に置いたり、いろんな使い方ができるから、どこでも植物を飾れるんです。
――男性好みの植物ですか、興味があります。ところで以前の仕事の経験が生かされていると感じるときはありますか?
丸山さん:やっぱり料理人としての経験ですね。料理ってただ美味しく作るだけじゃなくて、より美味しそうに盛り付けることも重要なんです。ちょっとした見せ方で印象はガラッと変わりますから。この経験を生かしてウッドボードに植物を盛り付けています(笑)
――植物を盛り付けるとは、新しい発想ですね! それでは、多肉植物についても教えてください。
丸山さん:多肉植物は母がひとりで扱っています。庭でさまざまな種類の多肉植物を栽培して、オリーブやアンチョビなどの空き缶にステンシルを貼ったり、エイジング加工をしたりしてリメイク容器に植えて。ちなみに、多肉植物って緑色をしているイメージですよね? 実は春が緑で、秋になると赤に紅葉するんですよ。
――え? 多肉植物も紅葉するんですか? 知りませんでした。多肉植物は暖かい地域の印象があるけど、日本でも栽培は可能なんですか?
丸山さん:暖かい地域の方がいいけど、日本でも大丈夫です。私たちが活動している上越は寒い地域だから栽培が難しくて、どうやったら元気に育つのかを試行錯誤しながら頑張っています。ちなみに多肉植物の生命力は凄まじくて、葉っぱをちぎって土に乗せておくと自然と根が生えてくるんですよ。
――「vinculo」の植物アイテムはどこで買うことができますか?
丸山さん:店舗とアトリエを併設した空間を考えていましたが、この新型コロナウイルスの感染拡大状況で一旦ストップしています。マルシェやイベントでの出店もしていましたが、それらも合わせてお休み状態。だから今は、オンライン販売と上越の美容室での委託販売ですね。
――委託販売先はどうして美容室なんですか?
丸山さん:「vinculo」では植物アイテムを作っているけれど、それをただ売るだけの商品売りにはなりたくないんです。だから植物を装飾レイアウトいてお店の空間を演出する、その先の空間作りのお手伝いもしています。それで、気に入ってくれた美容室が委託販売をさせてくれているんです。
――なるほど。それでは最後に、これから「vinculo」をどんな存在にしていきたいですか?
丸山さん:「人と人が植物を通して繋がって欲しい」という思いを込めて、「vinculo」のロゴには絆を意味するメキシコのシンボルマークであるサボテンをモチーフにしました。既製品ではなく、人間味のあるものを通して、日常を幸せにしていきたいと思います。なくても困らないけど、あったら癒してくれてともて素敵な空間にしてくれるのが植物です。日常のいろんなシーンに植物を溶け込ませることができる、そんな存在になりたいです。
余談ですが、インタビューのあいだ、隣に座っている奥さんも昔から植物が好きだったんだろうとずっと思い込んでいました。しかし突然、奥さんから「私は植物にまったく興味がなかったんです」というコメントが。奥さんは中学、高校と柔道に熱中していたそうで、しかも新潟県No.1選手だったとか…(でも旦那さんに出会って、今では植物が大好きに!)。
(取材日:2020年4月16日)
vinculo