1990~2000年代初頭にかけて、パンクやメロコアといった音楽を武器に爆発的な人気を博したHi-STANDARD、MONGOL800、ELLEGARDENなどのインディーズバンド。新潟からもその波に乗って出発したバンドがありました。その名は「FOOT STAMP(フットスタンプ)」。残念ながら現在は活動をしていませんが、当時の貴重なお話をうかがうチャンスが巡ってきました。今回の[Things Music]は、三条市にある「日曜から夜ふかし」にご協力いただいて、元「FOOT STAMP」の後藤さんにインタビューしました。
元FOOT STAMP
後藤 貴光 Takamitsu Goto
1979年燕市生まれ。燕高校卒業。1997年に結成したスリーピースバンド「FOOT STAMP」でギターボーカルを務めていた。玉置浩二、BLANKEY JET CITYが好き。現在は三姉妹のパパ。
――今日はよろしくお願いします。後藤さんはどんなキッカケで音楽に興味を持ったんですか?
後藤さん:小学生のときに、母が持っていたクラシックギターで遊んでいたらハマってしまったのがキッカケです。ちょっと弾けるようになってから、母にコードを教えてもらいました。そうしたら、ほとんどの人がつまずくFコードがすんなりとクリアできて、自分には向いているなって思ったんです。
――Fコード……僕はそこでつまずいて挫折した組です(笑)。バンド音楽に興味を持ちはじめたのはいつ頃でしたか?
後藤さん:中学時代の文化祭で、先輩がバンド演奏をしているのを目の当たりにして「カッコイイ!これやりたい!!」って思ったんです。それで同級生で集まってバンドを結成しました。リズムを刻むのが好きだったから、本当はドラムをやりたかったけれど、ギター担当がいなくって。渋々ギターになりました。
――ドラムをやりたかったんですね。クラシックギターに触れていたから、てっきりギター志望だと思っていました。
後藤さん:それこそドラムセットを親戚から買ってもらって、アパートなのに叩きまくっていましたね。今考えると、かなり近所迷惑だったと思います(笑)。
――でしょうね(笑)。その当時は、どんなバンドだったんですか?
後藤さん:ボーカルとギター、ベース、ドラムで構成されたスタンダードなバンドで、RANCID(ランシド)やGreen Day(グリーン・デイ)、The Offspring(オフスプリング)など、メロコアを中心としたコピーバンドを高校までやっていました。
――The Offspringの「Pretty Fly」や「All I Want」とか好きでした。懐かしいな。「FOOT STAMP」を結成したのは、高校を卒業してからですか?
後藤さん:そうですね。1997年に高校の同級生だったドラムと、ライブハウスで声を掛けたベース、そして僕の3人で結成しました。当時はメロコアが流行っていて、Hi-STANDARDをはじめ、みんな英語で歌っていたけど、自分たちは日本語でやっていましたね。英語が話せなかったから(笑)
――確かに当時は英語で歌っているバンドばかりでしたね。Hawaiian6(ハワイアンシックス)とか聴いてたなぁ。「FOOT STAMP」は、どんな音楽をやっていたんですか?
後藤さん:「FOOT STAMP」って、トップロープから飛んで相手を踏みつけるプロレスの技なんですよ。だから、その技みたいにガツンとくるような音楽で、骨太で勢いのあるエモーショナルな音楽をやっていました。メロコアでもないし、パンクでもなくて、長渕剛をパンクっぽくした感じかな。
――なるほど。当時は、どんな活動をしていたんですか?
後藤さん:スタートは、いわゆるインディーズバンドとして、「ワーナー・インディーズ」に所属しながら全国をライブで周っていました。「住友生命」のCMでお馴染みの「よー、そこの若いの」を歌う竹原ピストルとか、10-FEET(テンフィート)やTHEイナズマ戦隊、ガガガSP……今でも活躍しているバンドと対バン(共演)したり、ミニアルバムもリリースさせてもらったりも。その後は、インディーズで活躍するとメジャーにいくのが当時の流れだったから、「VAP(バップ)」というレーベルに所属することになったんです。
――竹原ピストルがやっていたバンド「野狐禅」のライブに行ったことあります。ちなみに、インディーズからメジャーになって、大きく変わったことはありましたか?
後藤さん:音楽を作る、奏でるという面では変わらないけれど、生活面でいえば月給になったから、バイトをしなくても生活できるようになりましたね。でも、3年契約でスタートして、そのまま終えてしまったからメジャー時代は短かったんです。でも、メジャーとはいえ実力主義だから頑張らないといけないし、踏ん張らないといけない、しっかり自分たち、自分に課せられたことをクリアしなくては期待に応えられない、ということを学べたのは大きな財産になっています。
――当時の経験が今でも生かされているんですね。メジャー時代の曲で「これを聴いて欲しい」という曲はありますか?
後藤さん:それなら「突き進んで道を歩けば 行き止まりにぶち当たり 今まで歩いて来た道を 引き返すこともあるさ」という歌詞からはじまる「立ち上がれ」という曲です。あがいても、もがいても抜け出せない苦しいときに聴いてもらいたい励ましソングになっています。
――「苦しくても立ち上がれ」と勢いづけてくれる曲なんですね。
後藤さん:はい。そっと背中を押してくれる曲もあるけれど、この曲は、ドンっと背中を叩いて押して、背筋をピンと張らしてくれるような、パワーをもらえる一曲なんです。といっても、全体的に「FOOT STAMP」の曲は、こんなメッセージが強い曲ばかりなんですけどね。
――もう、今ではもう、音楽活動はされていないんですか? 新しいバンドとかは?
後藤さん:2007年に契約が終了して、元「FOOT STAMP」の後藤貴光になりました。それから10年余の間には2~3年に1回のペースで個人的にライブはしていたけど、新型コロナをキッカケに自分のSNSを通して弾き語りを配信したり、今日インタビューをしている「日曜から夜ふかし」でライブをさせてもらったり、ちょっとだけ音楽活動を再開しました。それに新しいバンドも組んだから、来年ぐらいからしっかりと活動ができればと考えています。
――それでは最後に、メジャーデビューを目指して頑張っている若手バンドマンたちに一言お願いします。
後藤さん:今の世の中、InstagramなどのSNSを使えば簡単に音楽を配信することが出来ます。でも、そこでいくらフォローをされても、ライブをしてみたらそんなに集まらないなんてこともあって。だったら見かけだけの数字じゃなくて、自分の目的を明確にして、伝えたいコトをしっかり届けることが大切だと思います。歌が上手い人はたくさんいるけど、メッセージを心まで届けられる人は少数です。自分に正直にいれば、自ずと先が見えてくるはず。
インディーズやメジャー時代の話の中で、飛び出してくるバンド名。中学、高校時代にガッツリとインディーズバンドを聴いていた自分にとっては、「え? そのバンドと一緒にやっていたの?」と、胸が躍るような内容ばかりでした。取材に向かう道中で聴いていた「FOOT STAMP」の曲はライブハウスで遊んでいた学生時代を思い出させてくれたし、インタビューでもその当時を思い出して、なんだか懐かしい気持ちで帰路に着きました。
FOOT STAMP(後藤貴光)
取材協力
日曜から夜ふかし
新潟県三条市居島1-30 紅梅ビル1F
0256-46-8686