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好きなことを仕事に。粘土人形作家の「ねんど母さん」。

  • カルチャー | 2022.04.03

先日、姪と一緒に粘土で遊びました。そのときに使った粘土が、とってもカラフルで扱いやすいことにびっくり。今はいろいろな粘土があるんですね。そんなことを思ったタイミングで今回取材に行った先は、オーブンで焼くと固まる「オーブン粘土」を使って人形を作っている作家の「ねんど母さん」です。愛くるしい表情をした人形たちに囲まれながら、いろいろとお話を聞いてきました。

 

ねんど母さん

髙田 香代 Kayo Takada

1967年新潟市生まれ。新潟大学卒業後、旅行会社へ就職。その後、契約社員として働き、出産を機に家庭に入る。ふたり目の子どもが幼稚園に上がった頃から粘土人形を作りはじめる。

 

ひとつずつ個性が違う、目も眉も手作りの粘土人形。

——かわいらしい作品がたくさんありますね。髙田さんはどんなものを作ることが多いんですか?

髙田さん:「顔」があるもの、ほのぼのできるものを作りたいので、子どもの人形を作ることが多いですね。あとは妖怪が好きなので、妖怪を作ったり、季節に合ったものを作ったりもしますよ。

 

——「目」と「眉毛」はどうしているんですか? これも粘土?

髙田さん:それも粘土です。台座や小物類以外はほぼすべて粘土で表現しています。

 

——じゃあ、このお人形はひとつひとつ表情が違うってことですね。

髙田さん:型でポンポンと作るのとは違いますからね。ひとつずつ手でこねて作るので、表情や形が微妙に違います。

 

 

——「ねんど母さん」の作品はどこで手に取ることができるんでしょう?

髙田さん:新潟市の「旧齋藤家別邸」と阿賀町の「狐の嫁入り屋敷」に、お土産品のようなかたちで粘土人形を納めさせてもらっています。それから年に数回、作品展を開催していて、そこで作品を展示販売しています。おもしろそうなイベントに出向いて販売することもありますよ。私はそれを「手売り行商」と呼んでいるんです。お店屋さんごっこみたいで楽しいんですよね。

 

 

——どれくらいのサイズのお人形を作ることが多いんですか?

髙田さん:私が作るものは粘土人形にしては大きいかもしれません。手のひらほどの大きさのものも作ります。オーブンで焼いて固める「オーブン粘土」を使っているので、「大きい」といってもオーブンに入るサイズに限られますけどね。

 

——「オーブン粘土」という粘土があるんですね。

髙田さん:私はドイツの文具メーカーの「オーブン粘土」を使っています。こねる前は固い粘土なので、柔らかくするのにものすごく時間がかかるんです。手で揉む作業が大変で、「オーブン粘土」での制作をすぐにやめちゃう人も多いですね。この固さのお陰でライバルはあまりいません(笑)

 

——そんなに大変なんですか……。じゃあ、作るのにはどれくらいの時間がかかるんですか?

髙田さん:私は作業が早い方で、昨日は小さい狐の人形を12個作りました。かかる時間の半分以上は粘土をこねて柔らかくすることに費やします。

 

——そんなに長い時間こねなくちゃいけないとは……。こんなことを聞いたら失礼かもしれませんが、集中力は続くものですか?

髙田さん:ふたりの子どもはもう大きいですし、やっと制作に好きなだけ時間をかけられると思うと、嬉しくて人形作りをやらずにはいられないんです。朝8時にはデスクに座って作業をはじめるようにしています。自宅で作っているので、家事の時間以外はできるだけ粘土をいじっていたいと思いますね。

 

チラシの裏に落書きをするように。なんとなく作りはじめて意外なものができあがることも。

——そもそも粘土人形を作りはじめたきっかけはなんですか?

髙田さん:ふたり目の子どもが幼稚園に上がって、ちょっと育児がひと段落したので「何かはじめたい」と思ったんです。子育てに奮闘するお母さんを描いた漫画に励まされたので、「私もそんな漫画を描けたらいいな」と、漫画を習うためにカルチャースクールに行ったんですが、そこで気になったのが粘土教室の方でした。最初は粘土の扱い方を教えてもらって、それからすぐに自分で粘土を買って人形を作りはじめました。とにかく人形作りがおもしろくって、幼稚園のママさんたちに「子どもたちの人形を作るよ」って声をかけていましたね。今振り返ると、当時作ったものは下手っぴなんですけど、「じゃあ、うちの子どもの人形を作って」って頼まれることが嬉しくて、たくさん作りました。

 

 

——作品展についてもお聞きしたいと思います。どれくらいの数のお人形を展示するんですか?

髙田さん:1,000個とか2,000個とか、それくらいの数だと思います。作品を出す点数は誰にも負けないくらい多いかもしれません。作品の展示も運搬もすごく大変です(笑)。作品展をするときは「会場をおもしろくしたい」と思って、いろんな工夫をするのが好きですね。押し入れの中に秘密基地のようなものを作ったり、梁の上にねずみの人形を置いて「2020年の干支を探そう」というクイズを出したりしましたよ。来場する方が、ただ作品を見て帰るだけではちょっと寂しいですよね。せっかくだから「『ねんど母さん』の展示会、楽しかったね」と思ってもらいたくて、作品づくりと同じくらい「会場をおもしろくすること」に心血を注いでいます。

 

——作品を通じて伝えたいメッセージなどはあるんでしょうか?

髙田さん:そうですねぇ……。特にはありません(笑)。子どもみたいに、作りたいものを作っているんだと思います。「チラシの裏に落書きをする」みたいなもので、何も考えないで作りはじめたら何かができあがっているんですよ。

 

——じゃあ、具体的なアイディアをイメージして創作するんじゃないんですね。

髙田さん:そうなんです。アイディアが自然に浮かんでくることが多いから、下書きはいっさいしないで、まずは粘土をこねるんです。そうすると「あれ? 思っていたのと全然違うものが完成したな」となることはしょっちゅうあります。頭の中に構想があったとしても、できあがるまでにどんどん完成形が変わっていくんです。だから、自分でも最終的にどんなものができあがるのかが楽しみですね。このアマビエも「何か作ろう」と粘土をこねはじめて、できあがったらアマビエになっていました(笑)。もちろん、依頼されている商品を作るときは違いますよ。

 

「人のご縁で活動している」ねんど母さんは、まだまだレベルアップの途中。

——これまでの活動についても詳しく教えてください。

髙田さん:活動をはじめた頃は、フリーマーケットで作品を売ることもしていました。当時は売れば売るほど赤字だったし、順風満帆とはいえませんでしたけど、そのとき出会った人と今もつながっていたり、そこからまたご縁が生まれたりして今に至るんですよね。本当に「ご縁」って不思議です。以前運営していたブログに鯛車の人形を載せたら、西蒲区の「まき鯛車商店街」の方がその人形を見つけて連絡をくださったこともありました。その出会いがきっかけで、新潟市内の百貨店でしばらく作品を置かせてもらったんです。本当に私は「人のご縁で活動している」と思いますね。

 

 

——最後にこれから計画していることがあれば教えてください。

髙田さん:もっともっと作品展をやりたいし、クラフト系のイベントにもチャレンジしてみたいですね。それから県外に「手売り行商」にも行きたいです。「旅をしながら粘土人形を紹介したい」と思っていた矢先に、新型コロナウイルスの影響で行動が制限されてしまったので。あとは、どんなところでも通用するようにまだまだレベルアップしたいと思っています。

 

——もう十分なキャリアを積んでいらっしゃると思いますが、「まだまだレベルアップ」だなんて頭が下がります。

髙田さん:粘土人形自体は小さいおもちゃのようですし、ガチャガチャや100均で手に入るものと同じように捉えられることもあるんです。私は自分の粘土人形を「作品です」と、敷居を高く売っているわけではないですが、ひとつひとつ丁寧に手作りしているものですから、大切に思ってもらえたら嬉しいですね。まだまだこれからも作家として成長できると思っているので、いつかは「『ねんど母さん』、知っているよ。家に人形があるよ」と言ってもらえる存在になれたらいいな、と思っています。

 

 

 

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