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絵画家「深町めいしゅう」の、100万ピースから生まれる芸術。

  • カルチャー | 2021.04.30

今回は、ワイナリー「Fermier」のエチケット(ワインのラベル)などを手掛けている貼り絵画家「深町(ふかまち)めいしゅう」さんのアトリエにお邪魔してきました。細かく裁断した色紙を、何万、何十万ピースも用いて描かれる作品は、細密でかつ壮大。大きな作品になると100万ピースも使用しているそうです。これまでに見たことのない緻密さと存在感で観る人に感動を与えてくれる「深町めいしゅう」さんの芸術。どんな想いで制作されているのか、お話を聞いてきました。

 

深町 めいしゅう Meyshu Fukamachi

1953年福岡県生まれ、北海道育ち。新潟市在住。アパレル業界で長く活躍し、営業職や飲食店の経営にも従事。2009年から本格的に貼り絵画家としての活動をスタートした。2019年に東京アメリカンクラブのギャラリーで個展を開き、その後全国4カ所で個展を開催。自身のテーマに「A million pieces of reality 〜100万ピースの存在〜」を掲げる。

 

営業、アパレルで活躍した青年が、「絵を描いて生きる」ことを実現するまで。

——今日はよろしくお願いします。まずは深町さんの作品について教えてください。紙を使って描いているんですか?

深町さん:そうなんです。絵具を作る要領で、95種類ある色紙をパーツ毎に細かく切って絵を描きます。行動としては貼っているんだけど、貼ることで描いているんですよね。大きい作品には約100万ピースの紙片を使っていて、1年半以上かけて作り上げます。

 

——初めて深町さんの作品を知ったのは、「Fermier」のワインラベルだったんです。「まるで水彩画みたい」と思ってよく見てみたら……実物は小さな紙が丁寧に重なって層になっていることに驚きました。絵具で描く平面の絵とは、どんな点が違いますか?

深町さん:一ヶ所描くだけでも何百ピースという紙片を使うから、凹凸があって立体感が出るんです。そこが、平面の絵とは全く違う所ですね。

 

 

——気が遠くなりそうな繊細さで……とにかくすごいです! どなたかに師事して、この描き方にたどり着いたんですか?

深町さん:いいえ、僕のオリジナル技法です。紙を切って貼ること自体は誰にでもできるけど、ここまで追求しているのは僕だけでしょうね。誰かに「やれ」と言われてもできる次元ではないから、もう癖ですね(笑)

 

——深町さんだけの表現方法ってことですね。そんな芸術家が新潟にいるなんて誇らしいです。でも、そもそも絵のセンスがないとこういう作品は生まれないですよね。やっぱり平面の絵も上手なんですか?

深町さん:それは父親の影響が大きいかもしれません。父は炭鉱のエンジニアでしたが、とても絵が上手で、本物の絵描きのようでした。いつも一緒に絵を描いていましたから、僕も友達よりは上手かったかな(笑)。でも僕は東京で物販営業をすることから社会人生活をスタートしたから、自分が絵描きになるなんてまったく想像していませんでしたね。

 

 

——え……今とはまったく違う分野の仕事だったんですね。

深町さん:就職活動をしているとき「この仕事がしたい」というのがなくて、正直、働きながら何か見つかればいいかなって思っていたんです。兄から「何をするにも人とコミュニケーションを取ることが大切」というアドバイスをもらっていて、営業の仕事を選びました。アパレル業界に長く携わって販売職も経験したし、デザイナーとして自分でアパレルメーカーを創業したこともあるんですよ。

 

——おっとっと、これまた驚きの経歴が(笑)。でも、モノづくりの面では今につながっているんですね。貼り絵はどんなきっかけで始めたんですか?

深町さん:友人がグラフィックでコラージュを作っていたのを見て、初めて紙で絵が描けることを知ったんです。それで、アパレル業界にいたとき、お客様に送るグリーティングカードを貼り絵でデザインしてみたらとても好評で。まわりから「画家としてやってみたらどうか」と後押しされたんです。

 

——とすると、それから本格的に創作活動を始めたんですか?

深町さん:そのつもりでしたが……父親の介護をすることになって。46歳から実家のある北海道の釧路で和食の飲食店を経営していました。僕としては1年くらいしたら東京に戻るつもりだったけど、すぐには上京できなくて……。結局、「絵を描いて生きること」を実現するまでに10年間もかかっちゃったんですよね。でも、思い通りにいかないことも人生ですから。

 

——思い通りに行かないことも人生、ですか……。それを聞いたら、私も些細な失敗を気にするのはやめようって気持ちになりました(笑)

深町さん:そうですか、よかったです(笑)。人生の巡り合わせは変えようがないけど、いつか来るときのために覚悟を決めておくことが大切なのかなって思います。本格的に活動を始めたのは56歳だけど、こうして今に至っているんだから幸せですよ。

 

「A million pieces of reality 〜100万ピースの存在〜」が伝えること。

——深町さんは、どんな想いで作品を描いているんですか?

深町さん:わざとらしい答えでちょっと恥ずかしいけど、「見たことないものを見せたい」と思って描いています。僕の絵には、紙の数だけ物体が存在しているんです。100万ピースで作品を創ったら、そこには「100万ピースが存在している」という感覚が必ずあるはず。それって、きっと僕の作品でないと芽生えない感覚だと思うんですよね。

 

——今まさに現物を目の前にして、その感覚に浸っています。

深町さん:ポスターやポストカードの依頼はたくさんあるんだけど、やっぱり作品そのものを見て、その感覚に浸って欲しいんですよね。

 

——これだけの緻密さだと、ついつい完成までの苦労を想像してしまいます……。

深町さん:それはもう、身体がボロボロになるくらいの道のりですよ(笑)。大きな作品が完成した瞬間は、感動と達成感で号泣するんです。「諦めないで描き上げた! やれた! 頑張った!」って。

 

唯一無二の芸術家が目指すこれからの夢。

——この数年だけでも、何度も個展を開催されていますよね。

深町さん:2019年に「東京アメリカンクラブ」のフレデリック・ハリス・ギャラリーで開いた個展は、コンペで選ばれて開催したんです。僕は人と比べられたくないから、コンペはあまり好きじゃないんだけど、クラブのメンバーに友人がいて出展を勧められたんです。

 

——その「東京アメリカンクラブ」というのは……?

深町さん:アジア最大のメンバーシップクラブ(会員制社交クラブ)で、著名人も大勢会員として所属しています。とても伝統があって、国際色豊かで、日本の中の外国みたいなところですね。

 

——名誉ある場所での開催だったんですね。

深町さん:開催が決定するまでは時間がかかるんだけど、僕の場合は1週間程で連絡が来たんです。それだけ認められたってことだから、とても光栄でしたね。開催時期は、決まってから数年先だったし、創作に十分な時間が取れてよかったです。

 

——実際に個展に訪れた人たちの反応はどうでしたか?

深町さん:いつかは芸術の都・パリで個展を開きたいと思っていたから、外国人の反応も気になっていたんだけど、嬉しいことにとても良い反響があって手応えを感じましたね。僕の作品は近くに寄って見ることで凄みが伝わると思っているから、現物を見てその凄みに共感してくれた人が作品を求めてくれることが嬉しいんです。

 

——新潟の人たちにも、深町さんの作品をもっと見てもらえる機会があるといいですね。ちなみに、これから新潟で個展を開く予定はあるんですか?

深町さん:ありがたいことに売れてしまった作品も多いから、しばらくは創作期間です。でも、新しい作品を揃えたら、また新潟で個展を開きますよ。楽しみにしていてくださいね。

 

 

 

深町めいしゅう

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