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上越で「自分らしさ」を貫き続ける、ファッションブランド「PLUG」。

上越市を拠点として、年2回の展示会の開催とオンラインショップでの販売を中心に活動しているファッションブランド「PLUG」。最近では雑誌『POPEYE』に掲載され、バンドのMVキャストへの衣装提供を行うなど、活動の場を広げています。デザイナーの高橋さんは自身が精神疾患を患った経験から、ファッションデザインを通じて「アウトサイダーアート」を発信するようになったんだとか。そんな高橋さんにブランドをはじめたきっかけや、服作りの面白さについてお話を聞いてきました。

 

 

PLUG

髙橋 淳 Jun Takahashi

1982年十日町市生まれ。上越の通信制高校を卒業後、敬和学園大学へ進学。父親の勧めでシルクスクリーンプリントを使ったオリジナルのTシャツ作りをはじめ、20代半ば頃に「PLUG」というブランド名でファッションブランドをはじめる。

 

ブランドのスタートは、病気のリハビリとしてはじめたTシャツ作り。

――髙橋さんは上越に住まわれて長いんですか?

髙橋さん:生まれは十日町なんですけど、小さい頃に父の仕事の関係で上越に引っ越してきました。高校を卒業した後は新発田の敬和学園大学に進学して、卒業後は新潟市に少し住んだ後、上越に戻ってきました。それからはずっとここです。

 

――そもそも服作りをはじめたきっかけは何だったんでしょうか。

髙橋さん:中学卒業と同時に精神疾患にかかってしまったんです。新潟市からこっちに戻ってきたときに、病気の影響で仕事も無理できないので、父が「シルクスクリーンっていう、Tシャツにイラストを印刷できる仕組みがあるから、病気のリハビリも兼ねてやってみない?」って声をかけてくれて。それで版から手作りしてTシャツ作りをはじめました。

 

――いちから手作りでシルクスクリーンをやるとなると、なかなか大変そうですが……。

髙橋さん:父がシルクスクリーンにすごく詳しかったんです。自分が描いたイラストをTシャツに転写するんですけど、その転写するための機械も父と一緒に作りました。それをきっかけに服の構造の勉強をはじめて、自分でデザインした服を工場にお願いして作ってもらうようになりました。

 

 

――それだけTシャツ作りが楽しかったんですね。

髙橋さん:そうやって服を作り続けていたときに、「UTOPIA」の佐藤くんに出会ったんです。彼が主催するファッションショーのお手伝いをする中で、いろんな人とのつながりが広がっていきました。

 

――「PLUG」っていうブランド名を付けたのはどのタイミングで?

髙橋さん:僕が20代半ばくらいの頃、佐藤くんに「ラフォーレで即売会があるんだけど参加してみないか」って言われて。そのときはまだブランド名が決まっていなかったんですけど、急かされて(笑)。とりあえず「PLUG」って付けました。名前の意味はないです(笑)

 

 

――ファッションとかデザインには昔から興味があったんですか?

髙橋さん:今、兄がイラストレーターをやっているんですけど、僕も小さい頃から兄の横でよく絵を描いていたみたいです。中学生になると「Beastie Boys」とか「Smashing Pumpkins」とか、いろんな洋楽を聴くようになって、同時にファッションにも興味を持つようになっていきました。

 

――じゃあお兄さんからの影響も大きいんですね。

髙橋さん:あとは中学のときにすごくおしゃれな転入生がいて、その子の影響も大きいですね。すごくファッションに詳しくて、「UNDERCOVER」とか「Vivienne Westwood」とかを着ていたんです。音楽も「フリッパーズ・ギター」とか「Cornelius」とかをよく聴いていて。そういう90年代のカルチャーに直接触れてきた経験は今作っている服にも反映されていると思います。

 

――それから服への興味がより大きくなったきっかけってあったんですか?

髙橋さん:大学時代に本屋でたまたま「TUNE」っていう東京のスナップ誌を見つけたんです。それを読んで「こんな世界があるんだ」って衝撃を受けて。「自分でも服を作ってみたい」と思うようになりました。僕もスナップを撮られたくて、奇抜な格好をしてわざわざ東京まで行ったこともありましたよ(笑)

 

自分らしさを貫くことと、それを受け入れてくれる人を大事にしたい。

――髙橋さんはどういうふうに服のデザインを考えているんですか?

髙橋さん:デザインするときにはいつも音楽を聴きます。このパーカーだと「親愛なる友だちへ」っていう意味の「DEAR」と鹿の「DEER」をかけているんですけど、こういう言葉遊びみたいなものとかも音楽を聴いているうちに思いつくことがあるんです。あとは僕が病気を抱えているからこそ生まれてくる感覚もあるのかなと思っていて……。

 

――といいますと?

髙橋さん:精神疾患の人とか専門教育を受けていない人が発信するアートを「アウトサイダーアート」っていうんです。僕自身、自分らしさを大切にしながら生活していると、自然とアイデアが生まれてくることがあるんですよね。

 

 

――周囲の方からは「PLUG」のデザインについて、どういうふうに言われることが多いですか?

髙橋さん:周りからは「デザインが尖っているよね」とか「他とは違う、異質な感じがする」って言われるんですけど、それが自分の強みなんじゃないかと思っているんです。ただ、いいデザインを思いついても「これって本当に受け入れられるのかな」って不安になることもありますけどね(笑)。でもまずは自分らしさを貫くことと、それを受け入れてくれる人を大事にしたいなと思っています。

 

――自分らしさを貫くのって意外と難しいですよね。

髙橋さん:「PLUG」の服は万人受けするデザインではないと思うんですよ。それでも毎シーズン展示会に来てくれる人たちがいるので、そういう応援してくれる人たちのためにも自分の好きなデザインを貫いていきたいんです。

 

 

――来月、3月にも展示会があるそうですね。

髙橋さん:そうです。東京でやるんですけど、今はちょうど準備中です。

 

――これまでの展示会で印象に残っていることってありますか?

髙橋さん:毎シーズン展示会に来てくれる高校生の子が「今回のコレクションもすごく素敵でした」ってひとこと言ってくれて、それだけですごく嬉しかったです。全国からたくさんのブランドが集まる展示会の中で「PLUG」を見に来てくれる人がいることが、本当にありがたいですね。

 

服作りを通じて気がついた、人との出会いの大切さ。

――服作りをはじめて、髙橋さんの中で変わっていったことってありますか?

髙橋さん:シルクスクリーンでTシャツを作っていた頃からそうなんですけど、病気がちっぽけに見えるようになって。あのとき父が声をかけてくれたおかげで、心がすごく豊かになったんです。それに服を作るようになったことでつながりが増えたし、やっぱりいちばん素敵なのは人との出会いがあるっていうことですね。

 

――服を作っていたからこそ出会えた人がきっとたくさんいますよね。

髙橋さん:「拠点は東京の方がいい」と思っていた時期もあったんです。「仕事に直結した出会いしかいらない」と思って地方のことを否定していたんですけど、そうではなくって「この人と話していると落ち着くな」って思えるような、そういう出会いがあればいいんじゃないかって今は思うんです。

 

 

 

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