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秋葉区でアートする、夫婦のコンテンポラリーダンサー「NEphRiTE」。

「コンテンポラリーダンス」って、どんなものかご存じですか? 言葉で定義づけするのが難しい、既存の枠にとらわれない自由な身体表現のダンスで、劇場の舞台にとどまらず、ときには工場や倉庫、廃墟、山の中などでパフォーマンスしたりもします。今回ご紹介する「NEphRiTE(ネフライト)」は、コンテンポラリーダンスを中心としたアート活動で、新潟市秋葉区を盛り上げようとしている夫婦のダンスユニット。土田貴好さん、小倉藍歌さんのおふたりから、ダンスやアート活動についてのお話を聞いてきました。

 

(c)Kei Tanaka

 

生きる舞踊団 NEphRiTE

土田 貴好 Takayoshi Tsuchida

1989年新潟市秋葉区生まれ。新潟商業高校、埼玉大学でダンス部に所属。大学在学中に休学して「Noism2」の研修生としてダンスを学ぶ。大学卒業後はフリーダンサーとして活動。2017年より小倉藍歌と「NEphRiTE」として活動を始め、2018年に文化庁新進芸術家研修生としてベルリンで学ぶ。帰国後は新潟市秋葉区を拠点にアート活動を続けている。

 

小倉 藍歌 Aika Ogura

1990年東京都生まれ。3歳からモダンダンスを始め、2006年より「坂本秀子舞踊団」に所属。日本女子体育大学 舞踊学専攻の後、大学院に進み修了。2017年より土田貴好と「NEphRiTE」として活動を始め、2018年に文化庁新進芸術家研修生としてベルリンで学ぶ。帰国後は新潟市秋葉区を拠点にアート活動を続けている。

 

女子60人、男子ひとりのダンス部。

——おふたりがダンスを始めたきっかけからお聞きしたいと思います。まずは貴好さんからお願いします。

貴好さん:小学生、中学生の頃はずっと野球をやっていたんです。中学では生徒会にも入っていて、2年生の体育祭で当時流行っていた「よさこいソーラン節」を踊ったんですよ。そしたら終わった途端にすごい拍手をもらったんです。そのときに、「自分の気持ちを言葉で伝えるのは苦手でも、身体を使って伝えることはできる」ということを知りました。もともと身体を動かすのが好きだったこともあって、踊ることの楽しさに目覚めたんです。

 

——へ〜、原点はよさこいソーラン節だったんですね。

貴好さん:高校に進んで、どの部活に入ろうか迷ったんですけど、なかなかやりたいと思うことが見つからなかったんです。それで中学のときの、そのよさこいの楽しさを思い出して、ダンス部に入部したんですよ。でも女子部員が60人くらいいる中で男子は自分ひとりで。居場所もなかったし、体育館で練習していると他の部の人たちからの視線も痛くて辛かったですね(笑)。退部しようと思ったことも3回くらいありましたけど、まわりからの励ましもあって頑張って続けました。今では続けてよかったと思いますね。

 

——たしかに60対1は辛いですね(笑)。ちなみに高校のダンス部ではどんなダンスをやっていたんですか?

貴好さん:ヒップホップからコンテンポラリーダンスまで、いろいろなダンスがありました。女子に混ざってポンポンを持ってチアダンスまで踊りましたよ(笑)。その中で一番興味を持ったのはコンテンポラリーダンスでしたね。言葉にできないことを、身体を使って自己表現できるのが魅力でした。

 

——高校を卒業してからもダンスを続けたんですね。

貴好さん:進学した埼玉の大学でもダンス部に入りました。その頃「Noism」の舞台映像を見る機会があって、プロの創る作品のすごさや芸術性の高さに感動したんです。どうしてもプロの下でダンスを学びたいと思って、大学を休学して「Noism2」の研修員として参加させてもらうことにしました。

 

——大学を休学してまで……。卒業してからじゃ遅かったんですか?

貴好さん:参加条件に22歳までっていう年齢制限があったんですよ。でも休学するだけの意義は十分ありましたね。それまできちんと学んでいなかったバレエやダンスを、プロの環境で毎日学ぶことができたのは大きかったです。その後は大学に戻って無事卒業して、関東でフリーのダンサーとして活動していました。そんな中で、新国立劇場が主催した公演で藍歌と出会ったんです。

 

 

——では今度は藍歌さんにお聞きします。これまでどんなダンス人生を歩んできたのか教えてください。

藍歌さん:私は、母が日本体育大学の体操部だったこともあって、3歳からモダンダンスを学びました。通っていた幼稚園は「本物に触れさせたい」という教育方針だったので、プロのダンサーが指導に来ていて。お遊戯会も本格的な照明付きの劇場でした(笑)。その後も大学までずっとダンスを学び続けました。

 

——さ、3歳からずっとダンスを続けてきたんですね。

藍歌さん:大学時代は、日本女子体育大学で舞踊の勉強をしました。そのとき、大学院に進むための実績を作るために、いろいろなダンスコンクールに参加するようになったんです。でも正直言って、コンクールで賞を獲るためのダンスは踊りたくなかったですね。大学院に進んでからは創作や演舞に関する研究や論文がメインで、その後に参加した新国立劇場での公演で貴好に出会って、2017年から「NEphRiTE」としてふたりで活動を始めたんです。

 

秋葉区を拠点とする夫婦のダンスアートユニット「NEphRiTE」誕生。

——「NEphRiTE」はご夫婦の活動ということですが、どんなユニットなんですか?

貴好さん:秋葉区を拠点に、コンテンポラリーダンスを中心としたアート活動をしています。劇場での舞台活動や、地域でのダンスパフォーマンス、様々な空間アーティストや専門家とのコラボをしてのパフォーマンスといったいろいろな活動をしています。

 

——どうして秋葉区を拠点にしようと思ったんですか?

貴好さん:新潟を拠点に本当に自分がやりたいことをして、東京や国外へ発信できる存在になりたいという思いがずっとあったんです。秋葉区を選んだのは、自然と町のバランスがよかったことと、地域の人たちが温かく迎え入れてくれたからなんです。

 

藍歌さん:最初、私の中では、大学での活動を続けたいっていう気持ちもあったので、新潟で活動したいっていう彼の考えにちょっと不安を感じたんです。でも、大きな組織の中での活動だと自由なダンス活動ができないかもしれないという心配もあったし、新しい道を切り開く生き方をしてみたいと思うようになって、彼と一緒に新潟で活動することにしました。

 

 

——2018年にはベルリンに行ってますよね?

藍歌さん:新潟で活動を始めたものの、とりあえず何をしたらいいのか明確にわからなかったんです。それで文化庁の研修制度を利用して、ふたりでベルリンへダンス研修に行って、ドイツではダンスという芸術活動や劇場、カンパニーが、地域でどんなふうに活用されているのか、肌で感じて勉強してきました。

 

貴好さん:最初は言葉がわからなかったので、役所での手続きには苦労しました。現地でドイツ語の勉強をしたり、ダンスを通じてできたドイツの友人に助けてもらったりしながら、なんとか研修期間を過ごしました。帰国してからもう一度ヨーロッパへ行く予定もあったんですけど、新型コロナがあったのであきらめて、秋葉区に腰を落ち着けることにしたんです。

 

(c)Tomohiro Sugimura

ダンスを中心に広がっていくアート活動。

——これまで「NEphRiTE」として、どんなパフォーマンス活動をしてきたんでしょうか。

藍歌さん:2019年に開催された「ワールドダンスコンペティション in NIIGATA」で「momentary(モメンタリー)」という作品を発表して新潟県知事賞をいただきました。これはとても実験的な振り付けの作り方をしたもので、音楽に合わせて即興で振付を落とし込んだんです。言葉をならべた理屈で考えて作ったものではなく、素直な気持ちで感じたままの動きを繋いだことで、演者としての「ゆるがない芯」を発見できた感じがしました。

 

貴好さん:今年の1月には「15名のためのコンテンポラリーダンスパフォーマンス Giving project」というダンス公演をしました。ダンサーだけじゃなく、衣装デザイナー、空間デザイナー、音楽家の方々とコラボをしたんです。いろいろな考え方のクリエイターと共鳴し合うのは、とても繊細なクリエーションで、苦労もありましたけど、それぞれの考えに学ぶことが多くて勉強になりましたね。

 

藍歌さん:つい先月も秋葉区にある堀出神社で、新型ウイルス終息祈願の奉納演舞をさせていただきました。秋葉区で活動を始めてからお世話になっている方の紹介で実現したものです。神社という場所で、あえてイギリス人ダンサーの振り付けでパフォーマンスしました。実験的なパフォーマンスでしたけど、お客さんの反応も良くて手応えを感じることができました。

 

(c)yoshitaka

 

——いろんなパフォーマンスへの挑戦をしているんですね。

貴好さん:あとは「NEphRiTE」の他に、様々なアート活動をおこなう「あるてぃすと」という総合的なチームを運営しています。スタジオを構えてワークショップをしたり、子ども達と一緒にアートを作ったり、地元でのイベントを企画したり。

 

 

——今後はどんなふうに活動していきたいですか?

貴好さん:常に進化していけるように、プロジェクトを増やしてどんどん作品を作っていきたいですね。プロのダンサーとしてアート活動を続けるだけじゃなく、地域の人たちとの関わりも大切にしていきたいんです。そのためにも地域のイベント参加やスタジオを使ったオープンクラスとかの活動も続けていきたいですね。

 

藍歌さん:新型コロナのために生活スタイルが変化している状況で、生きる力を失わないように、アートで自分を表現したり解放したりできる場を多くの人に提供していきたいです。地域の人達が何を求めているのかを一緒に考えていけたらいいなと思っています。

 

 

生きる舞踊団 NEphRiTE

新潟県新潟市秋葉区新津本町2-1-29 3F

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