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食にまつわる本ばかりが揃っている、「本間文庫にいがた食の図書館」。

新潟県の魅力を語る上で欠かせないのが「食べものが美味しい」ことではないでしょうか? 県外から来たたくさんの人が口を揃えますよね。でも住んでいる私たちにしてみれば、意外とピンとこなかったりします。そんな新潟の「食」にまつわる本をはじめ、食べものについての本が集められた図書館が上本町にオープンしました。今回は「本間文庫にいがた食の図書館」を運営する「株式会社ニール」の髙橋さんと鈴木さんに、図書館や新潟の「食」に対する思いを聞いてきました。

 

 

株式会社ニール

髙橋 真理子 Mariko Takahashi

1965年群馬県生まれ。代表取締役。大学卒業後、絵本や児童誌の編集に携わった後「レタスクラブ」の編集部に。結婚を機に新潟へ移住してからは「新潟発」「るるぶ」などを編集する。2010年に「株式会社ニール」を設立し「cushu(クシュ)」「新潟発R」を発刊。サッカーは見るのもプレイするのも好き。

 

株式会社ニール

鈴木 希望 Nozomi Suzuki

1975年新潟市中央区生まれ。図書館&カフェ担当。東京で編集プロダクションのライターを経験し、フリーランスとなる。新潟へ戻ってからもライター業を継続し「本間文庫にいがた食の図書館」の会員になったことをきっかけに、図書館とカフェの担当スタッフとなる。思いつきで料理をするのが趣味。愛読書は吉田戦車の「逃避めし」

 

食文化研究者の蔵書が約1,000冊も読める図書館。

——うわぁ〜、かなりたくさんの本がありますね。いったい何冊くらいあるんですか?

髙橋さん:この本棚は3列スライド式になっていて、全部で約1,200冊の本があります。

 

——たくさんあるんですね。いったいどういう本なんですか?

髙橋さん:新潟県を代表する食文化研究者・本間伸夫(ほんまのぶお)先生が所有していた本です。

 

 

——これ、全部「食にまつわる本」なんですか! 本間先生って、どんな方なんですか?

髙橋さん:食にまつわる本と、食を知るために先生が集められた本があります。本間先生は県立新潟女子短期大学の名誉教授で、新潟県をはじめとした食文化の研究をされてこられた方なんです。新潟日報事業社から発行されている「食は新潟にあり」をはじめ、食文化にまつわる著書もたくさんあります。

 

——新潟の食文化研究の第一人者なんですね。それでこの図書館は誰でも利用できるんですか?

髙橋さん:誰でもご利用いただけますが、会員制になっていますので、まずは会員登録をしていただきます。「一般会員」「リモート会員」「法人会員」の3種類あって、「一般会員」「リモート会員」は入会無料ですが、会報誌の購読を希望される方は年会費1,100円をいただいております。

 

——会員になると、どんなふうに利用できるんですか?

髙橋さん:書籍の貸し出しは行っていませんが、館内ではどの本も自由にご覧いただくことができますし、個人的に使用する場合に限って有料でコピーを取ることもできるんです。あと「新潟発R」「cushu」のバックナンバーを読んだり、ご購入いただくこともできます。

 

「にいがた食の図書館」を運営するのは、出版社。

——この図書館を運営している株式会社ニールって、どんなことをしている会社なんですか?

髙橋さん:「新潟発R」や「cushu」といった書籍を発行している出版社です。新潟の日本酒や食、観光に関連するイベントの企画や運営をおこなっています。

 

 

——「新潟発R」は私もよく読ませていただいています。毎回のテーマに沿って掘り下げながら紹介されているので、新潟のことをより深く知ることができますよね。こちらはどんないきさつで創刊したんですか?

髙橋さん:もともと新潟と東京で発売されていた「新潟発」という観光誌があったんです。食文化を中心に新潟のことが丁寧に紹介されている雑誌で、私も東京にいたときによく読んでいました。結婚して新潟に移住することが決まっていたので、「新潟発」の仕事に参加したいと思っていて、移住後編集プロダクションに企画を持ち込み、採用されて「新潟発」に参加させていただくことになったんです。

 

——おおっ、それはよかったですね。

髙橋さん:でも残念ながら「新潟発」は2006年に版元の事情で休刊になってしまい、私は株式会社ニールを立ち上げて日本酒のガイドブックを発行したりしていたんです。ところが2014〜15年頃から取材先の酒蔵や書店の方々の「新潟発っていい雑誌だったよね」っていう再評価の声を聞く機会が増えたんですよね。私自身、情報誌ではない紙媒体の必要性を感じていたので「新潟発」時代のスタッフと相談して「新潟発R」を作ることにしたんです。

 

——なるほど。「新潟発R」はどんな雑誌なんでしょう?

髙橋さん:新潟の日本酒や食やものづくり、佐渡など、毎回ひとつのテーマを掘り下げた内容の保存版観光誌です。読者には1冊を通してそのテーマに浸っていただきたいので、広告は載せていません。

 

「本間文庫にいがた食の図書館」がオープンするまで。

——そもそも、どうして「食の図書館」を開設することになったんですか?

髙橋さん:20年ほど前から、新潟の食をテーマにした取材をするときは、本間先生に監修などをお願いしてきました。2018年に「新潟発R」で北前船の食文化を特集をすることになったので、その総論を本間先生にお願いしました。その後先生から「私の本の行き場がないので、よかったら編集部に譲りますよ」と連絡をいただいたんです。こんなに貴重な本が行き場を失いつつあることが残念だったので、編集部で引き取らせていただくことになったんですよ。

 

——なるほど。そういういきさつだったんですね。

髙橋さん:編集部の資料として引き取ることも考えましたが、これほど貴重な書籍を自分たちだけのものにしておくのはもったいないと思ったので、図書館を開設して多くの人に役立ててもらうことにしました。このアパートを借りて蔵書を運び込みながら、改装資金をクラウドファンディングで募ることにしました。

 

—— やってみていかがでした?

髙橋さん:おかげさまで目標金額を達成することができました。それ以上に、クラウドファンディングを通じてたくさんの人が関心を持ってくれたことや、いろいろな人に出会えたことがうれしかったです。結果より過程に大きな成果があったような気がしますね。本間先生の90歳の誕生日だった2021年の6月15日に「本間文庫にいがた食の図書館」としてオープンすることができました。

 

 

——無事オープンすることができてよかったですね。

髙橋さん:ところがオープンしてみたものの、図書館に常駐できる専任スタッフがいなかったんです(笑)。そんなとき、図書館を利用してくれたことがきっかけで鈴木さんに出会いました。

 

 

鈴木さん:私はフリーランスのライターで、個人的に食文化への興味があったので、オープン後すぐに会員登録しました。会報誌の購読も希望したんですが、なかなか送られてこなかったので、問い合わせをするうちにいろいろとお話するようになって、図書館の管理を任されることになりました(笑)

 

——鈴木さんは、今月オープンしたばかりのカフェも任されているんですよね?

鈴木さん:以前、ケータリングをおこなっていたので、そのために取得していた食品衛生管理者の資格が役に立ちました。ちなみに「BOOK CAFE つきうえ」という名前も私がつけました、「つきうえ」っていうのは「机」の語源で、「食卓」や「食器」という意味もある言葉なんです。空の月のイメージもあって、きれいな言葉だと思っています。

 

——ぴったりな名前ですね。カフェにはどんなメニューがあるんですか?

鈴木さん:季節ごとに変わるメニューで、第1弾は佐渡の美味しいものがテーマになっています。地酒はもちろん、いごねりや丸干しいか、沢根だんごなどをここで味わっていただき、いつか実際に佐渡に行って食べていただけたらうれしいです。

 

髙橋さん:今まで雑誌や書籍で紹介してきたものの、文字や写真では味まで伝えることができなかったので、実際に味わっていただく場を作りたかったんです。

 

ふたりがすすめる本、そして新潟の「食」。

——特におすすめの本があったら教えてください。

髙橋さん:日本全国の郷土料理を都道府県別やジャンル別にまとめた「聞き書 食事シリーズ」は47都道府県プラス「アイヌの食事」まで揃っています。他にも本間先生の論文原本といった貴重な資料もあります。

鈴木さん:すでに廃刊になっていて、今買おうとすると値段が高騰している本もありますし、そういった本を気軽に読むことができるのも、この図書館の魅力ではないでしょうか。

 

髙橋さん:ちなみにこの図書館の利用者第一号は、新潟でも有名なお寿司屋さんの店主でした。県外のお客様からよく質問されるということで、新潟の郷土料理「のっぺ」の語源を調べていかれました(笑)

 

 

——人それぞれの目的で利用できるんですね。「のっぺ」の語源は気になります(笑)。おふたりがおすすめしたい新潟の「食」を教えてください。

髙橋さん:私は「日本酒」ですね。カップ酒でも美味しいレベルだと思います。私はずっと日本酒が苦手だったんですけど、県内の酒蔵や酒屋を取材して話を伺ううちに、だんだん日本酒が大好きになっていきました。

 

鈴木さん:私は「かきのもと」をおすすめしたいです。花を食べる文化って、東北以外では全国的に珍しいんですよ。でも新潟の人たちは昔から当たり前に食べていて、珍しいものだという認識がないんです。そういう魅力的な「食」が新潟にはたくさんあるということを、他県はもちろん県内の方々にも知っていただきたいです。

 

髙橋さん:新潟の「食」では米、酒、魚が有名ですけど、四季折々の野菜や果物もうま味が抜きん出ていて、日常生活のなかにある「食」のレベルが高いんです。当たり前になっているから地元の人はレベルの高さに気づかないし、あえて発信もしない。だからこそ紙媒体と図書館を通して、新潟の「食」の魅力を発信していきたいですね。

 

——最後に、この図書館をどんなふうに展開していきたいですか?

髙橋さん:「食」について興味を持つ方が集まって、交流できるような場にしていきたいですね。それが新潟を盛り上げていくことにつながってくれたら、うれしいです。

 

 

本間文庫 にいがた食の図書館

新潟市中央区本町通1番町178-3 MAY 1F

025-261-7280

水木土曜10:00-17:00 ※他の曜日と時間は要相談

日曜祝日休

 

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