今年7月、世界文化遺産に登録された佐渡の金山。今、新潟県内で最もホットな観光地です。こちらで働く「株式会社ゴールデン佐渡」鉱山係の岩見さんに話を聞くと、この夏は観光客が増加したことでガイドをする機会もかなり増えたそう。岩見さんの普段のお仕事のことや、金山の歴史の面白さについてお話を聞いてきました。
株式会社ゴールデン佐渡
岩見 昭一郎 Shoichiro Iwami
1978年佐渡市生まれ。家業の印刷会社を手伝った後、2006年に「株式会社ゴールデン佐渡」へ入社。鉱山係で主任を務める。プライベートでは民謡団体に所属し、ホテルなどで佐渡おけさを披露している。
――世界遺産へ登録されてから、やっぱり観光客の数に変化はありましたか?
岩見さん:だいぶ増えましたね。ようやく観光も賑わってきたなって感じます。
――嬉しいことですね。岩見さんが所属されている鉱山係って、どんなお仕事をされているんでしょう?
岩見さん:「山師コース」の案内をしたり、坑道内の木材を交換したり、あとは施設周辺の管理をしたり。なんでもしていますね。
――山師コースっていうのは?
岩見さん:「無名異抗」っていう、上級者向けのコースです。整備されていない道を行くので、前日の予約が必要で。この夏は特に案内の仕事が多かったので、喉が壊れそうでした(笑)
――今回の世界遺産登録って、この一帯の金山すべてが登録されたっていう認識でいいんでしょうか。
岩見さん:登録されているのは江戸期までに開発された鉱山なんです。「道遊坑コース」なんかは明治以降にできた坑道なので、登録されていないんですよ。
――そうだったんですね。そもそもですが、佐渡金山のどういうところが評価されたんでしょう?
岩見さん:やっぱり、手工業の技術のすごさですよね。「穴を掘って金を採っていたんでしょ」って、そんな簡単なことじゃなくって。鉱脈のある場所を目がけて掘っていって、それからやっと鉱脈を掘るんだから大変な作業だったんです。
――それを江戸時代にやっていたって、かなりのすごさですよね。
岩見さん:手作業で掘れるのが1日に数十センチと言われているので、1日頑張ってそんなに少ししか進まなかったらやる気も出ないですよね。だから6ヶ所から同時に坑道を掘り進めてつなげたりしていたんです。実は佐渡金山って、測量の技術が圧倒的にすごいんですよ。別々の方向から穴を掘ってつなげるって、今でもめちゃくちゃ難しいと思います。
――腕の良い測量士や専門家が集められていたんでしょうね。
岩見さん:有名な「道遊の割戸」だって、パカッと割れたわけじゃないですからね。「道遊山」っていうひとつの山で、その間の鉱脈をタガネと槌でどんどん掘っていったら割れたような形になったんです。あの形に鉱脈が入っていたっていうことが分かるんですよ。
――道遊の割戸は、大規模な採掘がされていた歴史をよく象徴しているわけですね。佐渡金山って歴史が長いだけあって、知れば知るほど面白くなりそうです。
岩見さん:ただ展示を見ているだけだと分からないところもあると思うんです。でもこうやって人から直接話を聞くと、面白いって思ってもらえるんじゃないかなと。お客さんを案内して「楽しかった」って言ってもらえたり、「知らなかった」ってリアクションがあったりすると、よかったなって思います。伝えていくことにこの仕事の面白さを感じますね。
史跡 佐渡金山
佐渡市下相川1305