買ったらすぐに飲むことができるペットボトル飲料は便利で重宝しますが、急須で淹れた、お茶本来の味もぜひ楽しんでもらいたいと様々な商品やアイテムを発信しているのが「鈴木茶舗(すずきちゃほ)」という老舗のお茶屋さんです。会社員の傍ら家業のPRを手伝っている鈴木さんを訪ね、美味しいお茶をいただきながらいろいろなお話を聞いてきました。
鈴木茶舗
鈴木 実 Minoru Suzuki
1967年五泉市(旧村松町)生まれ。県外の大学を卒業後、新潟に戻って印刷会社に就職。現在はサラリーマンの傍ら家業である「鈴木茶舗」のPRを手伝っている。趣味はロードバイクと音楽。
——「鈴木茶舗」さんはいつから続いているお店なんですか?
鈴木さん:詳しくはわかりませんが、嘉永の頃から続いているようです。昭和の終わりまでは茶畑で自家栽培したお茶を売っていたんですよ。
——へぇ〜、ずいぶん長く続いてきたお茶屋さんなんですね。鈴木さんは何代目にあたるんですか?
鈴木さん:六代目にあたります。でも「鈴木茶舗」の経営は父がやっていて、私は新潟市内の印刷会社に勤めるサラリーマンなんです。会社勤めの傍ら、支障がない程度に「鈴木茶舗」のPRを手伝っているんですよ。
——そうだったんですね。PRを手伝いはじめたいきさつは何だったんでしょう?
鈴木さん:個人でインスタグラムをはじめたことがきっかけですね。いろんなお店が新しいことに挑戦していることを知って、とっても勉強になったし刺激を受けたんですよ。そこで自分も「鈴木茶舗」のPRをしてみようと思いました。
——まずはどんなことを?
鈴木さん:日本茶業界の知識がほとんどなかったので、農林水産省のページを読んで日本茶の現状を調べてみたんです。そこで日本茶の将来を真剣に考えて、さまざまな取り組みをしている人たちがいることを知って、より刺激を受けることになりましたね。
——日本茶に携わっている人たちは、具体的にどんな取り組みをしていたんでしょう?
鈴木さん:日本茶を炭酸で割ったドリンクを販売している人や、茶畑をバックにした結婚式の企画をしている人などいろいろでした。そのなかで紹介されていた透明な急須を「鈴木茶舗」でも取り扱いさせていただくことになったんです。
——反響はいかがでした?
鈴木さん:オリジナルのポスターを作って店頭に貼ってみたら、その日のうちに透明な急須とお茶が売れたんですよ。それに手応えを感じたので、これからは今までと違ったPRをして日本茶の魅力を知ってもらおうと思うようになったんです。
——「今までと違ったPR」とは、例えばどういうことでしょう?
鈴木さん:お茶にまつわるオリジナルグッズを作りたいと思って、まずはTシャツを作ってみたんです。
——へぇ〜、どんなTシャツを作ったんですか?
鈴木さん:最初に作ったのは、美味しいお茶の淹れ方をタイポグラフィーしたTシャツで、ビートルズTシャツのパロディになっているんですよ。ネット通販をしてみたらそれなりに反響があって、多くの方から面白がっていただけました。特に九州在住のお茶好きな女性に「こんなTシャツがほしかった」と喜んでもらえたのが嬉しかったですね。
——反響があると嬉しいでしょうね。他にもTシャツは作ったんでしょうか?
鈴木さん:もっともポピュラーなお茶の品種である「YABUKITA(やぶきた)」の文字を大きく入れたTシャツも作りました。その下には「Are You Experienced(君は体験したかい?)」という英文が入っているんですが、これはジミ・ヘンドリクスのアルバムタイトルなんですよ(笑)。このTシャツもお茶好き女子の間では好評で「これを着て『チームやぶきた』を結成しよう」なんてネット上で盛り上がっている方々もおられましたね。
——もう、ファンじゃないですか(笑)。ところで、こちらの「Things様ご来店記念」というパッケージがずっと気になっていたんですけど……
鈴木さん:取材に来てきただけることを記念して、新商品を作ってみたんですよ(笑)。「ゆずモヒート緑茶」と言って、ゆずやミントを合わせた緑茶のティーバッグなんです。オリジナルパッケージも作れますので、こうした新商品の開発にも取り組んでいけたらと思っています。
——おお、ありがとうございます! こういった商品をインスタグラムでPRしているわけですね。
鈴木さん:それ以外にも、お茶の楽しみ方を提案しています。私はロードバイクであちこち出かけるのが趣味なので、眺めのいい場所で美味しいお茶を飲む「お茶ライド」なんかを紹介しているんです。
——ペットボトルが普及したことで、急須でお茶を入れる機会は激減しましたよね。
鈴木さん:そうですね。でも日本茶を飲む人が激減しているわけではないんですよ。だからこそ急須で淹れる美味しいお茶を楽しんでほしいんですよね。
——急須で淹れるお茶っていうのは、ペットボトルのお茶とはかなり違うんでしょうか?
鈴木さん:湯冷しをして急須でお茶を淹れることで、強いうま味が出るんです。ペットボトルのお茶との違いに驚く方も多いですね。それから、温度や時間、お茶の量を調整することで味をコントロールすることができるので、自分好みの味に淹れることができるんです。
——いろいろな楽しみ方ができるんですね。
鈴木さん:味だけに限らず、誰かにお茶を淹れてあげたり淹れてもらったりすることで、コミュニケーションを楽しむこともできるんです。
——でも時間がないと、どうしても手軽なペットボトルを飲んじゃいます。
鈴木さん:これからはAIの発達で余暇が増えていくといわれています。アナログレコードやカセットテープのような手間を楽しむ時代が訪れることで、急須で淹れた日本茶を楽しむ文化も復活するんじゃないかと思っているんです。
——では最後に、これからやってみたいと思っていることってありますか?
鈴木さん:店内の余っているスペースを生かして、アートや写真の展示ができるようなギャラリーを作りたいですね。それから弟が店頭にサイクルラックを作ったので、ロードバイクのお客様にも立ち寄っていただきたいです。看板の前に白いロードバイクがあれば私が店番していますので、お茶飲みがてら自転車や音楽の話をしに来てほしいですね。
鈴木茶舗
五泉市村松甲1915
0250-58-6679
10:00-18:30
不定休