2018年にオープンした「中国酒食堂en(エン)」。鳳凰や龍などが描かれたカラフルな大皿で提供される中華料理とはちょっと違い、作家が手掛けるモダンな皿で、タパスのような女性に嬉しいボリューム感の中華料理を提供しています。「なるべくシンプルな味付け」を心掛けていると語る店主の野島さんに、中華料理に進んだキッカケ、紹興酒や自然派ワインなど気になるラインナップについて、いろいろとお話をうかがいました。
中国酒食堂en
野島 大輔 Daisuke Nojima
1987年新潟生まれ。悠久山調理師専門学校を卒業後、長岡市内に店を構える中華料理店「龍圓(りゅうえん)」にて修行。2018年「中国酒食堂en」をオープン。休日は、あてもなくドライブをしながら食べ歩き。
――野島さんは、どういったキッカケで料理をはじめたんですか?
野島さん:はじめて料理が楽しいなって思ったのは、小学生の子ども会で、豚汁を作ったときです(多分)。純粋に料理が楽しいなって思えたのと、「上手に作れたね。おいしいよ」って、母にヨイショされたのがキッカケです。今思うと、夕飯の支度などを手伝わせるためだったんでしょうけど(笑)
――お母さん、策士ですね(笑)。それじゃ、まんまと乗せられて、夕飯の手伝いなどをしていたんですか?
野島さん:はい(笑)。当時、流行っていた「ポケットモンスター」に熱中していたので、ゲームの傍ら料理を手伝っていましたね。でもその経験があったからこそ、高校生になったときに「料理人になりたい」と思えたのは確かです。
――スタートは何であれ、料理人を目指したキッカケを作ってくれたんですね。高校卒業後は?
野島さん:悠久山調理師専門学校に行きました。ちょっとお洒落な感じに惹かれて、学生のときはフレンチシェフを目指していたんですよ。インターンでもフレンチレストランに行ったりもしていて。
――中華料理ではなかったんですね。どうして中華料理の道へ進んだんですか?
野島さん:インターンは3回ありました。そのうちの1回が長岡市内にある中華料理店「龍圓」でした。ちょうどインターンでお世話になっていた頃はアルバイトをしていなくて、そのままアルバイトスタッフとして雇ってもらったんです。洗い物とか、ホール業務とかを中心に。そして、気が付いたら社員になっていましたね(笑)
――料理人の修行って厳しいイメージがあります。実際、どうでしたか?
野島さん:今の時代では珍しく、自転車での出前をしていたんです。それが一番辛かったですね。雨の日も、雪の日も、天候は関係なく注文が入るので、必死に自転車をこぎながら、料理を作りたくてモヤモヤした日々を送っていました。
――悪天候の出前は辛いですね。料理は、どのくらいしてから教えてもらえるようになったんですか?
野島さん:社員として勤めはじめて4年ぐらい経ってからですね。点心、餃子を作ったり、前菜を盛ったり、補助的な仕事からスタートして、徐々に任されるコトが増えていきました。ただ、洗い物やホールも並行していたので…お陰で仕事のスピードは速くなりました。
――仕事を任されるのは嬉しいことですが、平行した業務があると大変ですね。
野島さん:そうなんですよね。それに炒飯をはじめとしたメイン料理を作らせてもらえるようになってからは、熾烈な戦いがあって(笑)
――熾烈な戦いですか?気になります(笑)
野島さん:社長もメイン料理を担当していたんです。元気過ぎて、どんどん作ってしまうので、自分が作るためには社長よりも早くオーダーを受けなきゃいけなくて。どっちが鍋を振るかで、社長とは戦っていましたね(笑)
――恐ろしいエピソードと思いきや、どちらかといえばほっこりする話じゃないですか。ちなみに、「龍圓」で学んだ、一番大きなコトは何ですか?
野島さん:調理方法はもちろんですが、やっぱり、お客さんと会話することですね。「龍圓」は大きな店舗なので、コミュニケーションをとることが難しい環境でした。でも、「30歳になったら自分の店を出す」と決めていたことを知ってか、社長はなるべくお客さんと接する機会を設けてくれていたんです。「中国酒食堂en」はカウンターもあり、お客さんとの会話が多いので、とても感謝しています。
――ではでは、「中国酒食堂en」についてお話を聞いていきたいと思います。どんなお店にしようと、準備をはじめましたか?
野島さん:とにかく店を出したいという思いしかなかったので、準備段階では理想像やコンセプトがブレブレで大変でした(笑)。でも、どうしたらお客さんに喜んでもらえるのか、お店が繁盛するのかだけを考えて、「中国酒食堂en」のスタイルは確立できたと思います。
――「中国酒食堂en」のスタイルとは?
野島さん:中華料理って、油っこい料理が大皿にドサッと盛られて、ドーンって提供されるじゃないですか。このスタイルをとにかく脱却したくて。少ない量でいろいろ食べられるスタイルでありながら、器も作家さんの作品を使うなどして、今では女性のお客さんも多い中華料理店になりました。
――店内も、モダンな印象がありますね。料理には、どのようなこだわりが?
野島さん:油っこさ、味の濃さに注意して、最低限の調理でおいしく仕上げるように意識しています。アレを入れて、コレを入れて、凝った調味料を使うのではなく、あくまでシンプルな中華料理です。それに、甜面醤(てんめんじゃん)をはじめとして調味料は、なるべく手作りするようにしています。自分で作っていなくても、安心して使える調味料を厳選して。あとは季節感ですかね。
――季節感というと、食材ですか?
野島さん:「この料理には、この食材」といった考え方ではなく、酢豚にカボチャ、レンコンを加えるなど、その時々で旬の食材を取り入れています。酢豚で思い出しました。お客さんからのリクエストも可能な限り対応しているんです。昔ながらのケチャップ味の酢豚、限界の辛さまで挑戦した料理、食べたことない火鍋の再現など、とにかくいろいろなリクエストにもお応えしています。
――いろいろなお酒が並んでいますね。どういったラインナップを揃えているんですか?
野島さん:中国から直輸入している紹興酒をはじめとした中国酒は、現在11種類あります。こんなに種類のあるお店は、なかなかないと思いますよ。紹興酒のオーダー率はめちゃくちゃ高いですから(笑)。
――確かに。こんなにたくさんの種類を見たのは初めてです。中華料理店なのに、ワインもあるんですね。
野島さん:自然派ワインを取り揃えています。自分がワイン好きなので(笑)。中華料理との組み合わせは珍しいと思うかもしれませんが、都内では徐々に増えてきています。山椒が効いた麻婆豆腐に甘めな赤ワインを合わせたり、さっぱりとした前菜に白ワインを合わせたり、中華料理とワインの組み合わせはブームになりつつあるんですよ。
――ワイングラスを片手にモダンな器に盛られた麻婆豆腐を食べる。なんかお洒落な気がしてきました(笑)。最後に、これからの「中国酒食堂en」について教えてください。
野島さん:オープンして1年が経ちました。思っていたよりもたくさんの方に来ていただいています。これからもブレずにうまい料理を作るのは当たり前として、ジビエなど、もうちょっと踏み込んだマニアックな料理も提供していけたらと思います。近々、上海にネタを仕入れに行くので、さらにパワーアップする「中国酒食堂en」にご期待ください。
中国酒食堂en
新潟県長岡市坂之上町2-3-1
0258-88-9327
日~水 11:30-13:00/17:30-22:00
金土 17:30-22:00
木曜定休