お客さんと一緒になって家や店をつくる「JOYN CRAFTS」。

動画配信サイトを見れば作り方がわかり、ホームセンターに行けば材料が充実している。そんなこともあって、今、DIYを気軽に楽しむ人が増えています。今回紹介する「JOYN CRAFTS（ジョインクラフト）」という建築事務所では、お客さんにも施工に参加してもらっているんだとか。そこにはどんな思いがあるのか、代表の五十嵐さんからお話を聞いてきました。

JOYN CRAFTS

五十嵐友和　Tomokazu Igarashi

1979年新潟市秋葉区生まれ。工務店の営業スタッフや建築事務所の所長として建築業界の経験を重ね、2019年に独立して建築事務所を設立。2021年に事業を譲渡し、個人事業主として再スタート。2022年に「株式会社JOYN CRAFTS」を立ち上げる。キャンプや料理が趣味。　

家が完成したときには、泣きながらお客さんと抱き合って喜ぶ。

——今日はよろしくお願いします。早速ですけど、五十嵐さんは昔から建築に興味を持っていたんでしょうか？

五十嵐さん：実は昔から興味があったわけじゃないんです。それよりも料理が好きだったので、料理人を目指して調理師専門学校に入学しました。ところが想像していた授業と違って座学が多かったので、すぐに辞めてしまったんです。

——あらら……それは残念でしたね。建築に興味を持つようになったのは、いつからなんですか？

五十嵐さん：自分の家を建てることになったので、家づくりの勉強をはじめたんです。興味を持つようになったのはその頃からですね。家づくりへの興味が伝わったのか、施工をお願いしていた工務店の社長から「うちで働いてみない？」って誘われて、建築業界に足を踏み入れることになりました。

——その工務店ではどんな仕事をしていたんでしょう？

五十嵐さん：営業でしたけど、少人数の会社だったので大工仕事の手伝いもしていました。基礎工事から完成まですべてにわたって自社施工の会社だったので、家づくりのほとんどを学ぶことができたんです。大工仕事を手伝って職人のすごさを目の当たりにしたことで、リスペクトの気持ちも生まれましたね。

——その経験が今、生きているわけですね。

五十嵐さん：これまでの経験の積み重ねのおかげで、現在の仕事がやれているんだと思います。建築事務所に入って新潟本社の所長を任されていたときは、資金計画を考えるところから関わって、お客様の人生に寄り添いながら家づくりのお手伝いをしていました。そうすると家を引き渡すときには、泣きながら抱き合うほどお客様との絆が強くなっているんです。

——深い付き合いをしながら家づくりをしていたんですね。「JOYN CRAFTS」をはじめることになったのは、どうしてなんですか？

五十嵐さん：「株式会社Ag-工務店」の渡部代表と出会ったことがきっかけです。以前から競合相手として名前は知っていたんですけど、初めて会った瞬間に「この人と一緒に仕事がしたい」と思ったんですよ。すっかり意気投合したこともあって、その日のうちに「JOYN CRAFTS」を一緒に立ち上げることになりました（笑）

——そんなことってあるんですね（笑）

五十嵐さん：ひとりでできることの限界を感じはじめていた頃でしたし、渡部さんたちが考えていた「JOYN CRAFTS」のコンセプトにも共感したんですよ。6月にお話を伺ったばかりなのに、2ヵ月後の9月にはもう開業していましたね（笑）

いろんなお店を、お客さんと一緒に立ち上げている感覚。

——「JOYN CRAFTS」ではどんな事業をおこなっているんですか？

五十嵐さん：新築住宅の設計施工、リフォーム、店舗の設計施工ですね。どれもお客様の人生や生活を考えた上でアドバイスをおこなうように心掛けています。独立して新しくお店をはじめたいという人に対しては、融資の相談からオープンするまでを一緒になって伴走しながらサポートしているんです。

——まるで経営コンサルタントみたいですね。

五十嵐さん：まさしくその通りですね。でも、考え方が合わない方のサポートをすることは難しいので、僕の考え方に共感できて信じてくれる方だけサポートしているんです。その代わり信じていただける方に対しては、責任を持って全力でサポートさせていただきます。

——五十嵐さんはいろいろなこだわりを持っていそうですね。

五十嵐さん：僕自身はこだわりがないんです（笑）。強いて挙げれば、お客様の思いを叶えることがこだわりですかねぇ……。話していることと思っていることって、違うことも多いんですよ。僕は会話を重ねながら相手の潜在意識のなかにあるものをピックアップして、その夢が実現できるものを作るようにしているんです。

——いろいろな業種があって対応が大変そうですよね。

五十嵐さん：僕は楽しんでやらせてもらっています（笑）。店舗の設計施工に携わっているというよりも、いろんな事業を自分も一緒に立ち上げている感覚なんです。かなり早い段階から関わっているお店ばかりなので、そのお店の成功が自分のことのように嬉しいんですよ。その経験をさらに他のお店のサポートで、フィードバックしていけたらいいなと思っています。

——かなりの思い入れを持って、お店の立ち上げに関わっていることがわかりました。

五十嵐さん：僕がお店の立ち上げに思い入れを持つように、お客様にも自分の店舗への思い入れを持ってもらいたいので、施工に参加してもらっているんですよ。お客様やそのご家族、ご友人にも手伝ってもらって、スタッフと共に1日だけ施工を体験していただきます。そうすることで店舗への愛着や思い入れも深まると思うんです。

——そういうシステムを取り入れている建築業者って、他にはないですよね。

五十嵐さん：職人の負担が増えるので普通はやらないと思います（笑）。でも、そこを敢えて経験してもらいたいと思っているんですよ。そうすることで職人へのリスペクトも生まれますし、建築業に興味を持つ人が増えてくれたら嬉しいと思っています。