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障がいのある方の雇用創出に向けて動き出した、六日町駅前「なにわ茶屋」。

六日町駅前にある「なにわ茶屋」は、季節の和食を中心に、お客さんのリクエストに合わせた創作料理が楽しめるお店です。料理人として腕を磨いてきたご主人とソーシャルワーカーのキャリアを持つ女将さんが力を合わせて、障がい者の雇用創出を目指したスープのテイクアウト事業「sachimoyou(さちもよう)」をスタートするなど、さまざまなことに挑戦しています。今回はご夫婦にお店のことや目指す展開など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

なにわ茶屋

奥野 直人 Naoto Okuno

1979年南魚沼市生まれ。長岡の調理師専門学校を卒業後、家業である「なにわ茶屋」に入る。2015年に店舗を現在の場所へ移転。昨年、車椅子利用者やベビーカーでも入店しやすいつくりにリニューアル。

 

なにわ茶屋

奥野 真理香 Marika Okuno

1984年南魚沼市生まれ。日本女子大学を卒業後、医療ソーシャルワーカーとして地元の総合病院に勤務。2017年に「なにわ茶屋」の女将デビュー。ライフワークとしてボランティア活動に取り組み、福祉ボランティアチーム「よりそうsmile」の代表を務める。

 

味付けは引き算。素材の味を楽しんで。

——「なにわ茶屋」さんは六日町で長く親しまれているお店だそうですね。

直人さん:52年前に祖父が創業し、私で3代目になります。小さい頃から父親が料理人として頑張る姿を見てきたので、自然と料理の道を目指すようになりました。専門学校を卒業後は就職するつもりだったんですけど、その頃、父が病気になってしまいまして。それで学校を卒業してすぐに家業に入りました。それから2年半ほどして父が亡くなり、21歳で「なにわ茶屋」を引き継いだんです。

 

——そうでしたか……。奥野さんが目指しているのはどんなお料理ですか?

直人さん:「食べたときに何を食べているのか分かる料理」をコンセプトに掲げています。複雑な味付けではなく引き算をして、食材の味を楽しんでもらいたいんです。よい素材を使った、シンプルで美味しいもの。質素なようでしっかり味わえる料理ですね。料理については地元旅館の料理長にもみっちり教わりました。ビシバシ鍛えられまして(笑)。今はその知識を生かして、和食を中心に和洋中おりまぜた創作料理をお出ししています。

 

真理香さん:「なにわ茶屋」では、お客さまのご予算やリクエストに応じてメニューを組み立てています。割烹らしい高級感のある和食だけでなく、日常使いの方には気軽に旬の食材を楽しんでもらう、という具合ですね。それと長年地元に愛され続けてきたお店なので、生産者さんや食材の魅力を体現した料理を心がけています。

 

 

——真理香さんは2015年に女将さんになられたそうですね。

直人さん:お酒が好きで、知識も資格もたくさん持っている妻がいてくれて頼もしいです。今まで以上にお酒を楽しめるお店になったと思います。食事やお酒だけじゃなくて、店主と女将のコミュニケーションもお客さまの楽しみのひとつになっているんですよ。

 

真理香さん:お食事って、誰といつ、どのような空間で食べるかで美味しさが変わるものですよね。ありがたいことに尊敬できる人柄のお客さまに囲まれているので、私たちではなく、お客さまがお店の雰囲気を作ってくれているのかなと思います。

 

飲食業の枠にとらわれない新たな試み。雇用を生むスープ「sachimoyou」。

——真理香さんは、以前は福祉のお仕事をされていたんですね。

真理香さん:医療福祉の道が自分にとっての天職だと思っていました。ただ奥野家に嫁いだからには、いずれは「なにわ茶屋」に携わることになるだろうと思っていましたし、むしろそれを楽しみにしていたんです。しゃべるのもお酒を飲むのも好きなので、女将業はただただ楽しくて。でも女将になって2年目以降は「それだけで自分は満足できるのか」と模索するようになりました。

 

——次のステップに進まれたわけですね。

真理香さん:いろいろと考える中で、私のアイデンティティはソーシャルワーカーであって、誰かの人生に寄り添うことが使命なんだと気がついたんです。そこから飲食業にとらわれない試みをしようと、昨年、スープのテイクアウトブランド「sachimoyou」をはじめました。

 

 

——その「sachimoyou」について詳しく教えてください。

直人さん:ランチタイムのスープの製造販売事業です。季節のものを取り入れた3種類のスープをグランドメニューにしています。もともとはコロナ禍でディナータイムのご宴会が少なくなり、なんとかしなくてはという思いで、デイタイムのテイクアウト商品を作ることからはじまりました。

 

真理香さん:そこにプラスして「雇用を生みたい」という考えがあります。福祉就労ではなく、障がいのある方もそうでない方もやりがいを持って働ける環境を生み出すことを目指しています。昨年は特別支援学校の学生さんを受け入れて、この春からは2名をお迎えします。経済的な自立に加えて、精神的な自立につながるようにアシストしたいと思っています。

 

——まさに飲食業を柱とした新しい試みですね。

真理香さん:「障がいのある方の就労が大きな社会課題である」と所属するコミュニティで知りました。解決手法はたくさんありますが、私たちにできるいちばん直接的な解決方法は「自分のお店で雇用を生む」ことです。イキイキと働ける場を、自分たちで生み出したいんです。

 

料理人×ソーシャルワーカー。夫婦の力を合わせて地域社会に貢献。

——社会福祉に関わる取り組みをお店ではじめて、直人さんはどう思われましたか?

直人さん:思い描いている実績作りはまだできていないので、これからだと思っています。でも妻の思いを聞いたり、ボランティア活動を通じて障がいをお持ちの方にお会いしたりして、どんどん意識が変わってきました。今までは好きな料理を作ってお客さまに食べてもらうだけでも十分でしたけど、この地域で商いをやっている以上、地域に貢献することは必要だと思うようになりました。ちなみに昨年、店舗の一部をバリアフリー化したんですよ。車椅子を利用される方は、食事が外出のきっかけになることが多いのだそうです。この辺りは飲食店がたくさんありますけど、車椅子で入れるお店が少ないんです。いろいろな方に快適にお越しいただける店造りにしたことで、見える景色が変わりました。

 

真理香さん:主人は今、嚥下食の開発にも取り組んでいるんですよ。「嚥下食」とひとことで言っても、障がいやご病気によって調理法が異なります。そういった難しいことにもチャレンジできるのは料理人としての腕があるからですよね。みんなが求めているけどなかなか実現できない社会に向けて活動できているのは、私たち夫婦の力が合わさっているからだと思います。

 

 

——さて最後に、次はどんなチャレンジを目指しているのか教えてください。

直人さん:将来的には「sachimoyou」のスープ工場を作りたいと思っています。店舗販売に留まらず、全国に発送するような規模になれば、障がいを持っている方も含めて新たな就労の場を生み出すことになりますから。

 

真理香さん:私たちだけでは、どうしたって千人、一万人の雇用を生むことはできません。でもどんな人でも自分らしく働ける場を作るために、地域全体で障がい者雇用に関する理解を深めていかなければいけないと思っています。そのために障がいを持っている方、専門機関、経営者が交流できる任意団体を立ち上げました。相互理解を促進して、障がいのある方が「働きたい」と思える場所に出会える機会を作りたいんです。地域全体を巻き込み、理想の社会を実現できるように私たちがロールモデルとなり、実績を重ねていきたいと思っています。

 

 

 

なにわ茶屋

南魚沼市六日町92-6

TEL:025-772-3787

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。

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