昔ながらの製法で栃尾の油揚げをつくり続ける「豆撰」。
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2019.09.30
厚くてふっくらした食感で人気の栃尾油揚げ。
新潟県内の居酒屋では必ずといっていいほどお目にかかる栃尾の油揚げ。厚くてふっくらした食感と、ほんのり香る豆の風味で人気があります。そんな油揚げをつくっているお店が十数件もある長岡市の栃尾地域。今回は「豆撰」の代表・大橋さんにお話を聞いてきました。

豆撰
大橋 正樹 Masaki Ohashi
1959年長岡市(旧栃尾市)生まれ。豆撰代表。自衛隊高田駐屯地に5年間勤務したあと、栃尾に帰って小中学校の用務員を7年経験。1990年に父親らと共同出資して豆撰を創業する。趣味の野球では2チームに所属しピッチャーや、地元高校野球の審判を務めたりしている。
なぜ栃尾の油揚げは厚くて大きく、店舗数も多いの?
——今日はよろしくお願いします。栃尾地域にはなぜ油揚げの店が多いんでしょうか?
大橋さん:山々に囲まれている栃尾は、自動車などなかった時代には交通が不便で、肉などのタンパク源が手に入りにくかったんです。そこで肉の代わりに大豆でタンパク源を得ていたんですね。農家でも大豆が盛んに栽培されて、豆腐や油揚げの材料になる大豆が手に入りやすかったことが原因のようです。それでも30年前には24店舗ありましたが、現在は15店舗に減ってますね。
——なるほど。それにしても栃尾の油揚げって厚くて大きいですよね?
大橋さん:戦国時代、城下町だった栃尾の馬市では馬の売買がおこなわれていて、売買が成立すると油揚げを肴に酒を酌み交わす風習があったようです。そのときに片手で持って食べることができて、食べ応えのある大きさに作ったのがはじまりという説もあります。ただ、以前はそんなに大きくなかったんです。よその店より油揚げを大きくすると、他の店がそれより大きくして、競争するようにどんどん大きくなっていったんですよ(笑)

まったくの素人が試行錯誤して油揚げをつくりあげた?
——「豆撰」さんの創業は古いんですか?
大橋さん:創業は平成2年で、じつはそんなに古いお店じゃないんです。義理のいとこから一緒に油揚げ店をやろうと誘われ、先代の社長である父たちと共同出資で立ち上げました。はじめるにあたっては、地元の名物・栃尾油揚げをもっと広めたいという思いがありましたね。
——意外と新しいんですね。どなたか油揚げづくりの経験者がいたんですか?
大橋さん:それが全員まったくの素人だったんです(笑)。最初は油揚げづくりに使う機械のメーカーさんから、一般的な油揚げのつくり方を教えてもらい、それを基礎にして厚い栃尾の油揚げをつくるために試行錯誤しました。ふっくらと厚くふくらませるのがむずかしくて、油揚げじゃなくて厚揚げみたいになっちゃったりしてね。豆の漬け方、しぼり方、豆乳の濃度を少しずつ見直して変えながら試し、完成までには半年かかりました。

生しぼりや浮かし揚げという昔ながらの製法でつくる。
——豆撰の油揚げにはどんな特徴がありますか?
大橋さん:岩船や栃尾で有機栽培されたエンレイという大豆を材料に使って、昔ながらの生しぼり製法で油揚げの元になる豆乳をつくっています。この生しぼりが豆撰の油揚げの大きな特徴ですね。現在では煮しぼりでつくっている店がほとんどで、生しぼりは全国でもほとんどやっていない製法なんですよ。大豆の芽や皮を取り除いてからしぼるので、えぐ味やくさみがなくなり大豆の香りが引き立つんです。
——へ〜、なるほど。他にこだわりはありますか?
大橋さん:浮かし揚げという伝統的な揚げ方を守っています。油に沈めて揚げるのではなく、油に浮かした状態で何度もひっくり返しながら揚げる製法です。油に浮いていることで油揚げの揚がり具合をみながら揚げることができるんです。また、ひっくり返すことで油揚げのふくらみ方を調整します。早過ぎると揚がらないし、遅過ぎるとふくらみ過ぎるので加減が必要ですね。あと、栃尾の油揚げは厚いので揚げるのに時間がかかるんです。低温でじっくり17〜8分揚げてから、今度は高温で7〜8分揚げる2度揚げでつくっています。
——手間暇かけてつくられているんですね。油揚げのおすすめの食べ方ってありますか?
大橋さん:油揚げは何にでも合うのでいろんな食べ方ができて応用の効く食材です。醤油や味噌、塩山椒など調味料も選びません。納豆などをはさんだり、ハンバーガーみたいに食材をはさんで食べることもできます。チーズを絡めてピザ風に食べても美味しいですよ。


揚げたてを味わってほしい思いではじめたイートインスペース。
——お店のイートインスペースでは食事もできるんですね。
大橋さん:はい。揚げたての油揚げを味わってほしいと思って、2016年くらいからはじめました。じつはオープン当初からやってみたいと思っていたんですけど、調理スタッフの確保や保健所手続きの問題もあって実現するのに時間がかかっちゃったんです。クラウドファンディングでイートイン設備の資金調達をし、2回に分けて合計で500万円を集めることができました。おかげさまで、できたての油揚げを味わってもらえるようになり、とても感謝しています。
——では、イートインスペースで食べることができる人気メニューを教えてください。
大橋さん:まずはランチ限定の「あぶらげ定食」。イートインスペースができた当初は、このメニューしかなかったんです。その頃からの人気メニューですね。揚げたての油揚げをはじめ、栃尾産コシヒカリのご飯、日替わり小鉢、お漬物がついてます。

——アツアツの油揚げをコシヒカリで食べるのは最高でしょうね。あとはどんなメニューがありますか?
大橋さん:つぎに人気なのが「栃尾寿司弁当」です。栃尾の油揚げを使ったいなり寿司になっていて、お持ち帰りにも対応しています。あとは「あぶらげカレー」。NHKの「サラメシ」という番組でも、「豆撰」のまかない料理として紹介されたもので、カツカレーのように見えますがカツの代わりに油揚げが乗っています。カレーの隠し味に生しぼり豆乳が入っていて、コクとまろやかさが味わえます。

熱烈な県外ファンがつくったイメージソング?
——ちょっと変わった商品もいろいろ売ってますね。
大橋さん:「オリーブオイルで揚げた油揚げ」や「豆乳プリン」がそうでしょうか。「あぶらげカレー」もそうだけど、普通やらないよね(笑)。思いついたらとりあえずやってみるというか。歴史の新しい店だから、かえって老舗と違ってフットワークが軽いのかもしれないですね。
——ちなみに…店内にずっと流れている曲は、もしかしてオリジナルのイメージソングですか?
大橋さん:はい。うちの油揚げを食べてファンになってくれた神奈川の神社にお勤めの方が、趣味で音楽をやっているらしくて、イメージソングをつくって送ってくれたんです。3曲入りなんですが、ポップス調とロック調の曲が1曲ずつ入っていて、残りのひとつは神様にお祈りするときの祝詞(のりと)なんですよ(笑)
——熱烈なファンがいるんですね(笑)。最後に栃尾の油揚げに対しての思いを聞かせてください。
大橋さん:豆撰の商品というよりは、栃尾地域の商品という思いで栃尾の油揚げをつくっています。もっと全国的にアピールしていきたいし、栃尾の油揚げの評判を落とすような品物はつくれないと気をつけています。それから、栃尾の油揚げを通して、県内外の人たちがもっと栃尾に足を運んでくれたらいいなと思ってるんですよ。その一環として「豆撰」でも毎年10月に「大感謝祭」を開催していて、セールをはじめいろいろな催しをおこなっています。今年は10月11日と12日の2日間開催しますので、ぜひ栃尾に足を運んでいただきたいですね。

栃尾の油揚げを全国に広めたいという思いで、いろいろと新しいことにも挑戦している「豆撰」。イートインスペースで「あぶらげカレー」をいただきましたが、ミスマッチのような油揚げとカレーが、実際に食べてみると違和感なく絡んで美味しかったです。ぜひ揚げたての栃尾油揚げを味わいに、「豆撰」へ足を運んでみてください。
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