130年続く味。網代焼、くろ羊かんでお馴染み、柏崎市「新野屋」。
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2025.02.06
小学生の頃、祖母からもらったおせんべいを食べてあまりのおいしさに仰天しました。それは柏崎のお菓子で、近所には売っていない、たまにしか食べられない特別なものだったのです。そんな思い出の味、「新野屋」さんの「網代焼」。ちなみに、おせんべいのイメージがありますが、創業時からの名物は「くろ羊かん」なのだそう。今回は常務取締役の新野さんに、お店の歴史や羊羹づくりのご苦労などいろいろとお話を聞いてきました。

新野屋
新野 博人 Hiroto Arano
1980年柏崎市生まれ。「新野屋」5代目。東京の大学を卒業。2012年に家業である「新野屋」に入る。音楽好きで、フジロックに毎年参加している。

和菓子から、庶民でも手が届くおせんべいへ。
――「新野屋」さんは、長く愛されているお店だと思います。改めて、お店の歴史を教えてください。
新野さん:創業は明治27年です。片貝の出身である初代「新野信太郎」が、東京で和菓子や鰻の店などで修業をして、新潟に戻ってきました。長男ではないので家督は継がず、「広くて手に入りやすい土地があるから」と柏崎ではじめたのが「新野屋」です。当初は、和菓子店だったんですよ。
――ということは、創業は130年前ですね。
新野さん:当時はお砂糖が高級品だったので、和菓子は裕福な人のためのものでした。到底、庶民が食べられるお菓子ではなかったんですね。そういう時代に「皆さんに食べてもらえるお菓子を作りたい」と生まれたのが、明治40年から販売している「網代焼」です。新潟は米どころですから、「仕入れやすいお米を使ったお菓子」にしようと思ったようです。

――創業時からの名物は「くろ羊かん」だそうですね。
新野さん:「網代焼」の販売を機に、和菓子店から米菓業に転向しました。それでも初代は、思い入れの強い「くろ羊かん」を残したいと考えたようです。「くろ羊かん」は、代々当主が製造するスタイルを貫いています。
――そして「新野屋」さんといえば、「網代焼」。大好物です(笑)
新野さん:明治40年から110年続く機械づくりのおせんべいは、他にないんじゃないでしょうか。私より遥かに年上の80代の方から「子どもの頃から食べていた味だわ」と言われると、自社の製品とはいえ「すごい歴史だな」と感じます。今でも、小学生が工場見学に来ると「おばあちゃんの家で食べた」と言うんですよ。代々愛されているなんて、ありがたいことですよね。

食べ飽きない味、手間ひまかけたスローフード。
――最近ではスーパーでも「網代焼」を見かけます。だんだんと商圏を広げてこられたんでしょうか?
新野さん:米菓業に転向した当時、世の中は手焼のおせんべいが主流でした。自宅でもおせんべいを焼いて食べるような時代だったようです。手焼きでは効率が悪いからと、量産できるようにしたのが「網代焼」なんですよ。店舗兼工場は、柏崎の駅からすぐ近くにあります。当初から、近県も含めた流通を意識していたと思いますよ。
――へぇ~。じゃあ、当時はまだおせんべいの量産が珍しかったんですね。
新野さん:きっとそうだと思いますよ。機械で製造するおせんべいとしては、「網代焼」がいちばん古いかもしれませんね。

――「網代焼」は、「食べ飽きない味」だと思っているんですよね。
新野さん:「素朴で食べ飽きない」ですよね(笑)。最近の主流のお菓子は、個包装されていて、ひとつひとつしっかりインパクトがありますよね。単体でしっかり主張があるから、それだけで満足できちゃう。でも「網代焼」は、1匹じゃ足りないと思いますよ(笑)
――ついつい食べすぎちゃって、困ります。でも、なんで魚の形をしているんですか?
新野さん:今の「網代焼」には、えび粉を加えています。でも、開発当初は魚粉を使っていました。それで、魚の形にしたそうです。

いつまでも「まちのお菓子屋さん」が基本。
――新野さんのこれまでのことも教えてください。大学卒業後は、しばらく東京で暮らしていたそうですね。
新野さん:若い頃って、田舎に閉塞感があるじゃないですか。とにかく都会に行きたくて。 大人になって新潟に戻る決心がついたのは、いくつかきっかけがありました。ひとつは、コツコツと書きためた詩集を出版できたこと。それから中越地震、中越沖地震、東北大震災が発生して、改めて家族のことを考えたからです。自分が家業に入らなかったら、「新野屋」はどうなるんだろうという思いもありました。

――お家の仕事をはじめて、びっくりしたことはありませんか?
新野さん:「お菓子づくり」というと、ケーキや和菓子の職人さんが、お菓子に丁寧な細工を加えているような工程が頭に浮かぶと思うんです。ひとつずつお菓子を作っているイメージって言えばいいかな。でも羊羹づくりは、とにかく体力勝負なんですよ。大きい鍋で、大量の羊羹を作りますんで。そういうギャップはありました(笑)
――今日初めて「新野屋」さんのお店にお邪魔しました。実は、もっと大きい工場をお持ちなのかと思っていたので、びっくりしたんです。「まちのお菓子屋さん」みたいな懐かしい雰囲気がします。
新野さん:おっしゃる通り、「新野屋」はまちのお菓子屋です。柏崎の皆さんに利用していただくのは、すごく大事なことだと思っています。「新潟の味だ」「郷土のお菓子だ」と言っていただきますが、それには地元の皆さんに愛していただかないといけませんからね。

新野屋
柏崎市駅前1-5-14
0257-22-2337
日曜日定休(12月無休)
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