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1本ずつじっくり味わいたい、焼きたての串焼料理「炭火焼鳥 備長」。

柏崎市に「炭火焼鳥 備長」というお洒落な串焼料理のお店があります。重厚な蔵戸を開けて中に入ると、アットホームな雰囲気のスタッフさんたちが迎えてくれました。「非日常を日常に」がテーマになっているスタイリッシュな店内で、店主の猪俣さんにお店のこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

炭火焼鳥 備長

猪俣 豊 Yutaka Inomata

1963年柏崎市生まれ。地元のレストランで働いた後、フリーのトラック運転手を経て、東京の焼鳥店で修業。1998年に柏崎で「炭火焼鳥 備長」をオープンする。趣味はゴルフと自前の船で楽しむ海釣り。

 

タイムリミットは1年間。無償で焼鳥の住み込み修業をする。

——とてもお洒落で綺麗なお店ですね。

猪俣さん:ありがとうございます。以前の店舗が老朽化してきたことや、今後の世代交代も見越して2019年に建て直したんですよ。ところがリニューアルオープンしたばかりでコロナ禍がはじまって大変でした。テイクアウトや昼営業など新しいことをやる上で、若い頃に働いていたレストランのチーフにはいろいろと相談に乗ってもらいました。

 

 

——若い頃はレストランで働いていたんですね。

猪俣さん:昔から料理が好きだったので、外食したときに美味しい料理に出会うと、家に帰ってから自分で再現していたんです。それで高校を出てすぐに、当時はまだ珍しかった地元のレストランに勤めました。でも忙しくて労働時間が長いわりに収入が少なかったので、転職することにしたんです。

 

——次も飲食店で働いたんですか?

猪俣さん:家族を養っていかなければならなかったので、フリーで長距離トラックの運転手をはじめました。12年くらいやっていたと思います。

 

——洋食の料理人からトラック運転手ですか。がらりと職種が変わったんですね。

猪俣さん:料理も好きだけど、車の運転も好きだったんですよ。でも大型二種免許を取ろうと思って試験を受けたんですけど、視力が原因で不合格になったので諦めることにしたんです。そこで妻子を柏崎に残したまま上京して、今度は焼鳥店での住み込み修業をはじめたんです。

 

——ちょっと待ってください。急に焼鳥店で修業する流れになりましたけど、どうしてそうなったんでしょう?

猪俣さん:飲みに行ったときに食べた焼鳥の美味しさに感動して、料理人への憧れにふたたび火がついたといいますか……。自分でも美味しい焼鳥を焼いてみたいと思ったので、東京にある焼鳥店で無償の住み込み修業をさせてもらうことになりました。巻き込んでしまった妻や子どもたちには申し訳ないことをしたと思っています。

 

 

——どのくらいの期間、無償で働いていたんですか?

猪俣さん:1年間です。修業中は収入がありませんし、家族の生活もかかっているので、とにかく一刻も早く仕事を覚えようと必死でしたね。「仕事は見て覚えろ」と言われていたので、まわりの仕事を見ながら図や寸法を記入してメモを取っていました。その間は、お店の座敷席にせんべい布団を敷いて寝泊まりしていたんです。

 

——なかなか大変な修業だったんですね。その後は柏崎に戻って「炭火焼鳥 備長」をオープンしたんでしょうか。

猪俣さん:はい、当時はまだ炭火で串焼きをするお店が少なかったので、そのまま店名にしました。それが受けたのか、オープン早々繁盛したんですよ。修業先や巻き込んでしまった家族をはじめ、協力してくれた方々には感謝しています。

 

鮮度や炭火……そして、それ以上にこだわっていること。

——どんなことにこだわって串を焼いているんですか?

猪俣さん:まずは素材ですね。冷凍したものは使わず、新鮮な生肉だけを塊で仕入れて使っています。肉のカットから自分たちでやっているので、仕込みには時間がかかるんですよ。でも、そのこだわりもあって美味しい串焼を提供することができるんです。うちのレバーは臭みがないので苦手な人でも食べることができるんですよ。私もレバーが食べられなかったんだけど、うちの店のレバーは食べられます(笑)

 

——へぇ〜、よっぽど新鮮なんですね。他にもこだわっていることはありますか。

猪俣さん:次にこだわっているのは炭火で焼くことです。備長炭に他の炭をバランスよく混ぜて使っています。ガスに比べて火起こしに時間がかかりますけど、その分強い火力で一気に肉汁を閉じ込めることができるんです。場所によって火力が違うので、レバーは低温になる端でじっくりと焼いて、もも肉は火力の強い真ん中で一気に焼いて油を閉じ込めます。

 

——火加減が均一じゃないところが便利だったりするんですね。

猪俣さん:そうなんです。もっともこだわっているのは、焼きたてを召し上がっていただくことです。お客様の食べるタイミングに合わせながら、1本ずつお出しするようにしています。ときどき、せっかちなお客様からは「注文した串が全部揃っていない」なんて催促されることもあるんですけど、あったかい串焼きを、ゆっくりと味わいながら食べてほしいんです。

 

 

——いちばん美味しい状態で、串焼を食べさせてもらえるんですね。

猪俣さん:そのためにカウンターをフラットにして、お客様を見渡せるようにしているんです。お客様からも焼いている様子が見えるから安心だし、待っている間も調理のライブ感を味わっていただけると思います。小上がりのお客様は目が届かないので、ホールスタッフに状況を聞きながらタイミングを計っています。

 

——徹底したこだわりが伝わってきます。

猪俣さん:私はお客様の食べている姿を、カウンター越しに見ることが好きなんです。美味しいときには嬉しそうに頷きながら食べてくれるんですよ。それが見たいから、こだわって串を焼いているんです。

 

お客様のために心掛けているのは「耳で聞く接客」。

——料理以外のサービスに対して、心掛けていることはあるんでしょうか?

猪俣さん:サービスで心掛けていることは「自分がお客様の立場だった場合にやってほしいと思うことを、そのままお客様にやってあげてほしい」ということです。それから「耳で聞く接客」というのも心掛けていることです。

 

——「耳で聞く接客」というと?

猪俣さん:お客様の立てる音に注意していると、呼ばれたときはもちろん、箸を落とす音やグラスの氷が鳴る音が聞こえてきます。そうしたら呼ばれる前に代わりの箸をお持ちしたり、お水を注ぎにいったりできるんです。

 

 

——かなり意識の高い接客ですね。ちなみに、どんなお客さんが来るんでしょうか?

猪俣さん:いろいろなお客様がいらっしゃいますよ。小上がりがあるので家族連れで来られる方も多いですね。お祝いの食事をするときに、どこの店に行きたいかを尋ねると「備長」と言う子どもも多いそうなんです。小学生からファンレターを貰ったこともあります(笑)。本当にありがたいですね。

 

——大人だけじゃなく、子どもにもファンがいるんですね(笑)。これからはどんなことに力を入れていこうと思っていますか?

猪俣さん:柏崎の美味しい地酒はもちろんなんですけど、これからはワインにも力を入れていきたいと思っていて、先日ワインセラーを導入したばかりなんです。串焼きとワインってよく合うんですよね。あと串焼き以外のサイドメニューも充実させようと、息子たちが頑張ってくれています。

 

 

——お酒がさらに進みそうですね。

猪俣さん:それから月に一度くらいのペースで、ご予約いただいたお客様だけをお招きして、限定コースメニューを味わっていただきたいんですよ。いろいろな産地のブランド肉だけを使って、本当に美味しい串焼きを心ゆくまで楽しんでほしいんです。お寿司と同じように、焼鳥もそういう楽しみ方をしてみてもいいんじゃないかと思っています。

 

 

 

炭火焼鳥 備長

柏崎市半田2-3-33

0257-32-5330

17:00-23:00

日曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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