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ご当地グルメのさといも麺で、五泉を盛り上げる「日の出食堂」。

全国チェーンの飲食店の進出の波に押され、昔ながらの小さな飲食店が今、どんどん少なくなってきています。そんななか、ご当地グルメを開発して地元を盛り上げようと奮闘しているのが、五泉駅前にある「日の出食堂」です。今回は店主の柴野さんを訪ね、昭和初期から続く食堂の歴史やご当地グルメ「さといも麺」について聞いてきました。

 

 

日の出食堂

柴野 秀行 Hideyuki Shibano

1964年五泉市生まれ。東京の中華料理店、洋食店、フランス料理店、スナックで修業を積み、22歳のときに新潟に戻って三代目店主として「日の出食堂」を継ぐ。DIYが趣味で店内のテーブルや棚も自作している。

 

五泉駅前で三代続く老舗食堂の歴史。

——「日の出食堂」さんはいつから続いているお店なんですか?

柴野さん:私の祖父がはじめたお店なので、昭和ひと桁から続いています。当時は甘いお菓子が少なかったので、アイスキャンデーが飛ぶように売れたそうです。二代目の父は新宿で修業をして、当時最先端だったハヤシライスやオムライス、ポークソテーといった洋食を勉強して「日の出食堂」で提供をはじめました。まだ五泉には飲食店が少ない時代だったから、店は大変繁盛したようです。

 

 

——じゃあその時代ごとに新しいことを取り入れて続いてきた食堂なんですね。柴野さんは子どものときから三代目としてお店を継ごうと思っていたんですか?

柴野さん:最初は食堂を継ぐつもりも、料理の仕事をするつもりもなかったんですけど、私が15歳のときに父が亡くなってしまい、長男の私が継がなければならなくなってしまったんです。

 

——それはお気の毒でした……。

柴野さん:とりあえず腕を磨こうと東京に出て、中華料理店、洋食店、フランス料理店、スナックといろいろなお店で修業をしたんです。それぞれの職場で勉強したことは今でも役に立っていて、人気メニューのしょうが焼き定食、からあげ定食、パスタはこのとき覚えたことを参考にして作っているんです。「やがて血となり肉となる」ということわざがあるように、どんな経験も無駄にはならないと思いますね。

 

 

——食堂を継いだのはいつ頃だったんですか?

柴野さん:食堂を続けていた祖父が体調を崩したので、22歳のときに新潟へ戻って食堂を継ぎました。当時はまだバブル景気の最中だったから五泉のメリヤス産業も活気があって、工場への出前が忙しかったんです。でもバブルが弾けて不景気になって、その上、全国チェーンの大手飲食店がどんどん進出してきたので、個人経営の飲食店はどんどん衰退していきましたね。そんななかでも、「頑張って地元の飲食業界を盛り上げていきたい」と思って営業してきました。

 

地元を盛り上げるために開発した「さといも麺」。

——「日の出食堂」さんのおすすめメニューを教えてください。

柴野さん:今までじっくりと育ててきた、しょうが焼きと唐揚げは自信のあるメニューです。しょうが焼きは洋食店時代に学んだポークソテーがベースになっています。豚ロース肉を150g使って、火加減に気をつけながら、できるだけ肉を柔らかく焼き上げるようにしています。唐揚げはブラックペッパーを効かせたスパイシーな味で、コチュジャンを使ったピリ辛の「韓国からあげ」もあるんですよ。

 

——柴野さんはどんなことにこだわって料理を作っているんでしょうか?

柴野さん:時代に合わせたメニューを作るように心掛けています。昔からある「食堂」のイメージを脱却して、何か新しいことをやる店を目指しているんです。

 

——新しいこととは、例えばどんなことを?

柴野さん:以前から五泉市内の食堂が力を合わせて地元を盛り上げることができないかと考えていたんです。そうしたら五泉特産品の里芋「帛乙女(きぬおとめ)」が有名になってきたので、それを生かした「さといも麺」を作って、それぞれのお店で麺料理を提供したらどうかと、開発に携わりました。

 

 

——「さといも麺」って、どんな特徴があるんでしょうか?

柴野さん:「帛乙女」を粉にして練りこんだ麺で、茹で時間はかかるものの時間が経ってもふやけにくくて、クセがないからどんな料理にも合わせやすい利点があります。

 

——今までどんな料理に使ってきたんですか?

柴野さん:けんちん汁やクリームパスタ、ちゃんぽんなんかに使ってきましたね。2015年に開催された「第4回国際ご当地グルメグランプリ」で審査委員特別賞をもらったこともあるんです。

 

 

——受賞歴まであるんですね。

柴野さん:「さといも麺」のメニューを目当てに、市外から足を運んでくれるお客様もいるんですよ。最近は新型コロナの影響で食べ物関連のイベントがめっきり減ってしまいましたけど、「さといも麺」はまだ終わってないと感じることができて、とても勇気をもらえますね。

 

——長く親しまれているグルメなんですね。ちなみに「日の出食堂」さんの他にも提供しているお店ってあるんでしょうか。

柴野さん:周辺の飲食店がどんどん閉店してしまって大手飲食店ばっかりになったこともあって、「さといも麺」の提供店は今は3軒だけになってしまいました。五泉本来の食文化が風前の灯になっているような危機感があります。

 

 

——五泉の食文化を守るためにも、地元を盛り上げていく必要があるということでしょうか。

柴野さん:いろいろなイベントに参加してきた経験を通して、食はたくさんの人を呼ぶことができると感じています。特に「さといも麺」というのは、使い方によってまだまだ伸びるグルメだと思っているんです。もっと「さといも麺」を利用して、みんなで五泉を盛り上げていきたいですね。

 

 

 

日の出食堂

五泉市駅前1-8-4

0250-42-2331

11:00-14:45/11:00-14:45

水曜休

 

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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