新発田の夏の風物詩。
「朝顔ぼんぼり」ってどんなもの?

カルチャー

2026.08.12

text by Ayaka Honma

みなさん、お盆のお墓参りには行かれましたか? 先日、新発田市内を車で走っていると、お店の軒先に赤、緑、白で彩られた円錐形の飾りを見つけました。「あれはいったい何だろう」と気になって調べてみると、新発田市民にはおなじみの「朝顔ぼんぼり」なのだそう。今回は、このぼんぼりを広める活動をしている「しばた朝顔ぼんぼりの会」の3人に、ぼんぼりのこと、会のことなど、いろいろお話を聞いてきました。

Interview

渡辺 えいこ

Eiko Watanabe(しばた朝顔ぼんぼりの会)

画像中央/「しばた朝顔ぼんぼりの会」を立ち上げたひとり。ご夫婦で「橙〜daidai〜」として音楽活動も行っている。

木村 あやこ

Ayako Kimura(しばた朝顔ぼんぼりの会)

画像右/「しばた朝顔ぼんぼりの会」の写真担当。新発田市内で「こらぼかふぇ たけくん」を営んでいる。

鈴木 やすえ

Yasue Suzuki(しばた朝顔ぼんぼりの会)

画像左/「しばた朝顔ぼんぼりの会」のイラスト・商品考案担当。「株式会社花安」取締役をつとめるほか、地域のイラストレーターとしても活動している。

100年前から作られている、
夏の風物詩、「朝顔ぼんぼり」。

――早速ですが、「朝顔ぼんぼり」がどんなものか教えてください。

渡辺さん:新発田市では、13日の夕方から夜にかけてお墓参りに行くことが多いんです。そこでこの「朝顔ぼんぼり」をお墓の両脇に立てて、灯りをともします。夕焼けとぼんぼりの灯りが合わさった光景は、とてもきれいなものでした。

 

木村さん:「朝顔ぼんぼり」は、およそ100年前から作られていたそうで、戦前には朝顔のぼんぼりの他に、蓮の花型のものもあったそうです。戦後は、蓮の花型のぼんぼりを作る職人さんがいなくなって、朝顔だけになりました。当初は、提灯屋さんがこのぼんぼりを作っていたそうで、提灯屋さんならではの筆さばきでこの模様を描いていたんですよ。その後、葬儀屋さんや造花屋さんもぼんぼりを作るようになって、多いときには十数件のお店で作られていました。

 

――歴史のあるぼんぼりなんですね。どうして、朝顔の模様をぼんぼりに描いたのか気になります。

木村さん:それが本当のことがまだ分かっていなくて。新発田藩の溝口家が広島の浅野家と親交があって、広島の『朝顔灯籠』という、朝顔型の灯籠が新発田に伝わったという説もあります。歴史図書館で調べても、記事にしてもらおうと新聞記者の方に調べていただいても、確かなことはわかりませんでした。

 

鈴木さん:「わからない」ということ自体、「朝顔ぼんぼり」の面白いところかなとも思っています。私たちが聞いている話の中には、後付けかもしれないけど、朝顔である理由にまつわる、とても素敵なお話もあって。歴史を伝えるというよりも、このぼんぼりを親しみやすいかたちで残すことができたらいいなと思っています。

 

――そのお話、ぜひ教えてください。

木村さん:朝顔のつるが上に向かって伸びることや、朝早くに花が咲くことから「早くご先祖さまが帰ってきてほしい」って言う思いを込めて、ぼんぼりに朝顔を描いたんじゃないかといわれています。本当かどうかわからないけれど、これはこれでいいお話だなと思います。

 

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子供の頃から当たり前のようにあった、
ぼんぼりの灯りを絶やさないように。

――みなさんにとって、「朝顔ぼんぼり」はどんな存在なのでしょう。

木村さん:私が小さい頃から、お盆になると必ずぼんぼりをふたつ持ってお墓参りに行っていました。私がまだ幼稚園に通っていたときは、身体が小さくてぼんぼりを持たせてもらえず、すごく悔しい思いをしました(笑)。ぼんぼりを持ちたいがために「早く大きくならいかな」と思っていたほどです。

 

渡辺さん:新発田駅前の商店街のいろんなお店で、夏になると「朝顔ぼんぼり」が販売されていて。町の至る所に、ぼんぼりがあるのが当たり前だったんです。実は、叔父の造花屋でもぼんぼりを販売していて。夏休みになると、お小遣いがもらえるって理由で店番をしたものです(笑)。叔父の繊細で力強い手仕事を見るのが大好きで、学校帰りは毎日のように作業を見に行っていました。大人になって、私もぼんぼりの紙を貼る手伝いをしたこともありました。私のとってのぼんぼりは、叔父との思い出ですね。

 

――「朝顔ぼんぼり」ってどうやって作られているのでしょう。

木村さん:一本の竹から、長さを揃えて切って、洗って、節や綿を取って、そこから一定の長さに割いて、周りに紙を貼ってかたちを作っていきます。ぼんぼりの中のロウソク立てになる部分も、同じ竹から作られるんですよ。残念ながら今ではぼんぼりを作る職人さんが少なくなって、高齢化も進んでいて……。

 

――そこで立ち上がったのが「しばた朝顔ぼんぼりの会」になるんですね。

渡辺さん:12年ほど前に、私の旦那さんと友人の3人で「朝顔ぼんぼり」を作る小さなワークショップをはじめたんです。小さな「朝顔ぼんぼり」を自分で作ってもらって、それをお盆になったらお供えしてもらう、というものでした。

 

木村さん:私はこのワークショップに参加していたんだよね(笑)

 

――過去には一度、活動がストップしてしまったこともあったのだとか。

渡辺さん:コロナ禍だったことや、一緒に活動をしていた友人が亡くなってしまったこともあって、活動をしていない時期もありました。それでも、木村さんが活動の写真を撮ってSNSで発信してくれたおかげで、またワークショップを開くようになったり、「しばた寺びらき」というイベントに出させてもらえたりして。その中で、「朝顔ぼんぼり」が大好きな鈴木さんが活動に参加してくれて、同じくぼんぼりが大好きな綾音ちゃんや私の旦那さん、新発田市の蒲木さんという素敵な仲間にもサポートしてもらって、今の会のかたちになりました。

 

ぼんぼりの中をのぞくと、ロウソク立てが。細かい、細かいです。

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同じものを作るのは、難しい。
なら、違うかたちで残したい。

――「朝顔ぼんぼり」が大好きという鈴木さんですが、そのきっかけは?

鈴木さん:実は私の実家は葬儀屋さんで、仏具やぼんぼりをずっと販売してきました。だから、お盆にぼんぼりがあるのが当たり前なんですよ。でも、近年はいろんな問題があって、ぼんぼりの本数を制限されるお寺さまも増えてきました。職人さんもご高齢になってきて、「俺もあと2年くらいかな」なんて言うくらい。本物をぼんぼりを作るには、修業と職人さんの技術が必要なんですよね。だったら、別のかたちでもいいから「朝顔ぼんぼり」のことをまだ知らない方に伝えていきたいと思って、活動に参加させてもらうことにしたんです。

 

――「朝顔ぼんぼり」を新しいかたちで伝えようとしたわけですね。

鈴木さん:実際に、「朝顔ぼんぼり」の模様でうちわやバッジを作って販売しています。それと、今年はポスターも制作させていただきました。職人さんである渡辺さんの叔父さんから、「ぼんぼりのポスターを作ってほしい」と依頼をいただき、お墓参りに向かっている家族を描きました。ポスターに入れている言葉は、渡辺さんの叔父さんが考えてくださったものなんです。

 

――へぇ〜、 そうだったんですね。

鈴木さん:話を聞いてみると、ぼんぼりへの思いが強くて、この言葉を作るのには何年もかかったそうなんです。ぼんぼりを広めたいというよりは、ぼんぼりを持って家族みんなでお墓参りに行く、っていう家族のつながりや、絆を伝えたいとおっしゃっていました。その思いがかたちになったポスターになっているんじゃないかなって思っています。

 

――ポスターを作る中で、思わぬつながりもあったのだとか。

鈴木さん:いろいろとお話をしている中で、渡辺さんの叔父さんと、私の祖父は昔一緒に仕事をしたことがあったそうなんですよ。祖父は私の小さい頃に亡くなっていたので、祖父の仕事をしているときの話はとても新鮮で。ぼんぼりを通じて、祖父とのつながりをあらためて感じることができましたし、天国から「がんばれよ」って言われているみたいだなって思っています。

 

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毎年お盆にお墓参りに行く。
そこに「朝顔ぼんぼり」があればいい。

――今年から「しばた朝顔ぼんぼりの会」として本格的に活動をはじめられました。実際、活動をされていて、いかがですか。

渡辺さん:新発田市外の方からもぼんぼりを買っていただくこともあって、びっくりしています。わたしたちは、お参りのときにお墓にさすものだと思っているけど、市外の方はそうじゃなくて。「かわいい」って言って買っていってくれているのが、とてもおもしろいんです。

 

木村さん:今は新発田に住んでいない人も、帰省したときにこのぼんぼりを買ってお参りにいかれる方が多くて。正直、ぼんぼりを買わなくてもお参りはできるじゃないですか。でもわざわざ買ってくれるって、とても嬉しいことだなとあらためて実感しています。

 

――この活動を通じて何か伝えたい思いはありますか?

鈴木さん:「朝顔ぼんぼり」をこれからも残していきたい、という思いはもちろんあるのですが、お盆にご先祖さまに手を合わせて思いを伝えるっていうことを、忘れちゃいけないなと感じていて。その思いが皆さんにも伝わればいいなと思っています。お盆の時期にお墓に手を合わせるときに、「朝顔ぼんぼり」が常にある、そんな光景がずっと続いてほしいんです。

 

――最後に、「しばた朝顔ぼんぼりの会」のこれからを教えてください。

鈴木さん:まだ構想段階ですが、ぼんぼりの色や形をヒントに、グラスやランプなど別の商品に展開できたら面白いなと思っています。将来的には、障害者福祉施設や高齢者福祉施設と連携して商品化して、新しい仕事につながるようなことができたらとも考えています。「朝顔ぼんぼり」は私たちだけではなく、新発田のものですので、みなさんと一緒に活動の幅を広げていきたいなと思っています。

 

新発田市内で、うちわとピンバッチを販売中。お墓参りのお供にどうぞ。

しばた朝顔ぼんぼりの会

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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