新しい武器は、手打ち蕎麦。
新発田駅前の「ながしま」
食べる
2026.08.07
新発田駅前の「ながしま」が、昨年の秋に新たなスタートを切りました。これまでお店の看板メニューだったお寿司に代わり、主役となったのは手打ち蕎麦。関川村産のそば粉に惚れ込み独学で腕を磨いた店主の長嶋さんに、日本料理店での修業のことや蕎麦作りについてなどいろいろとお話を聞いてきました。
長嶋 拓実
Takumi Nagashima(ながしま)
1995年新発田市生まれ。新潟調理師専門学校卒業後、古町の料亭「行形亭」で5年間修業。その後、東京の日本料理店で約3年間学ぶ。2023年に新発田へ戻り、家業「ながしま」へ入る。2025年9月から新体制となり、手打ち蕎麦を新たな看板メニューに据えて料理を提供している。最近はオーディブル習慣を取り入れている。
代々続く料理店に、
新しい武器。
――ながしまさんのメニューが変わったと聞いて、あらためて取材にお邪魔しました。
長嶋さん:どうもありがとうございます(笑)。去年から地元の食材と手打ち蕎麦をお届けする店として、新たなスタートを切りました。
――お寿司が得意なお兄さんの直人さんは独立して「すし 黒衣」をオープンされたんですよね。
長嶋さん:曽祖父が創業し、祖父の代から寿司を提供していたので、兄が独立するときは、「ながしまの武器がなくなってしまう」と危機感がありました。寿司がないと「ながしま」の印象がぼやけてしまうんじゃないかって。なので蕎麦を勉強していてとてもよかったと思っているんです。新しい主役になってくれると思っています。
――どうしてお蕎麦で勝負することにしたんですか?
長嶋さん:東京の日本料理店で修業をしているとき、親方がコースの締めに出す蕎麦を手打ちしていたんです。親方の仕込み作業を近くで見ていたので、「僕もいずれ蕎麦を打ってみたいな」とずっと思っていて。2023年に「ながしま」に入るために新潟に戻ってきて、「地元にどんな食材があるんだろう」と探っていたとき、関川村のそば粉を知りました。「身近にこれほど美味しいそば粉があるなら」と、独学で蕎麦作りを学んだんです。
――そのそば粉のどんなところに惹かれたんでしょう?
長嶋さん:味と香りがしっかりしていて、なおかつ甘さが感じられるんですよね。これだけよい素材なんだから、ちゃんと打てるようになりたいな、という気持ちになったんですよ。
――風味豊かなお蕎麦なんですね。
長嶋さん:関川村産のそば粉を使った蕎麦は、コース料理で提供しています。ランチはまた別で、北海道産のそば粉を使っています。それから水は、赤谷の湧き水です。熊にビビりながら汲みに行くんです(笑)
――メニューを刷新したあとの反響はどうですか?
長嶋さん:ありがたいことに「美味しい」の言葉をいただいています。僕が魅力に感じている、旨みと香りの強さに気づいてくださる方もいらっしゃって。2種類のそば粉を食べ比べて、「関川村の蕎麦をお願いします」とリクエストいただくと、腕が鳴りますね。
――他にも自慢のメニューはありますか?
長嶋さん:「鰻の筒焼き」もぜひ召し上がっていただきたいです。開かずに骨だけを取り除いた鰻を炭火でじっくり焼き上げて、ぶつ切りにしてお出しするメニューです。これから「ながしま」の名物として育てていきたいですね。

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知るほどに奥深い、
手打ち蕎麦の世界。
――蕎麦打ちの技術はどんなふうに磨いていったんですか?
長嶋さん:最初はほんとうに下手くそで。数ヶ月経ってようやく「これであれば食べたいな」と自分が思える蕎麦が打てるようになりました。
――日本料理店での経験が豊富な長嶋さんですが、それでも蕎麦作りにはまた別の難しさがあったのでしょうか?
長嶋さん:水の量や茹で具合がほんのちょっと違うだけでも出来上がりがぜんぜん違うものになるんですよね。満足に蕎麦が打てていると思っているわけじゃないのに、蕎麦のことを知れば知るほど頭を抱えてしまいます(笑)
――どういうお蕎麦に仕上げているんですか?
長嶋さん:実を殻ごと挽いた「挽きぐるみ」という方法で製粉されたそば粉を使っているので、蕎麦には黒い粒が残っています。そば殻ごと挽かれている分、香りやそば本来の味がしっかりしているんです。
――おつゆはどうです?
長嶋さん:返しと鰹出汁を合わせたつゆです。お塩でも召し上がっていただけるように、村上の塩を添えています。関川村産のそば粉は自分でも納得できる素材なので、自信を持ってお出ししています。素材の良さをそのまま感じてもらいたいです。

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料理人から、
店を守る存在へ。
――これまで日本料理店で経験を積んできた長嶋さん。修業時代のことも教えてください。
長嶋さん:専門学校を卒業してから「行形亭」で5年間働きました。今振り返っても、とてもいい経験をしたと思っています。見習いと呼ばれる1年生から5年生の若手がいて、5年を過ぎると別の場所で修業を積むというシステムができあがっていて。小さい規模ながら歴史のある料亭で、たくさんのことを学ばせてもらいました。
――それから東京へ行かれたんですね。
長嶋さん:カウンター越しにお客さまと向き合う日本料理店でした。それまでお客さまの前に出ることがなかったので、ぜんぜん違う働き方を経験して。しばらく悩みが尽きなかったです。でもそこで手打ち蕎麦と出会えたことが、今の「ながしま」につながっているんですよね。
――お兄さんから店主をバトンタッチして、これまでとはまた違う思いをされているのでは?
長嶋さん:これまでは兄とふたりで食材の管理や価格設定、売上管理などをしていたのに、去年からは完全に仕入れからひとりです。毎月の数字に向き合う責任も大きくなりました。順調なときはやりがいを感じますし、思うようにいかないと難しさも感じます。独立した兄も、きっと同じような責任を背負っているんだろうと思います。
――これから「ながしま」をどんなお店にしていきたいですか?
長嶋さん:もっと夜のコース料理を知っていただきたいな、と思っています。コースメニューでは手打ち蕎麦だけでなく、これまで僕が学んできた日本料理もお出ししています。蕎麦も含めて、「ながしま」の料理をまるごと楽しんでいただきたいです。



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