混ざり合い、熟成し、まちが動き出す。
三島地域に開校する「かんもす大学」
カルチャー
2026.05.15
長岡市旧三島町で、新しい学びの場が立ち上がろうとしています。地域の人も、外から訪れる人も、年齢や立場を越えて混ざり合いながら学ぶ、市民大学「かんもす大学」です。きっかけとなったワークショップのことや「かんもす」という言葉に込めた思いについて、学長の大島さんと企画を担う内藤さんにお話を聞いてきました。
左/大島 真之
Masayuki Oshima(かんもす大学)
1986年長岡市三島地域生まれ。「かんもす大学」学長。高校卒業後、東京で生活。ヒップホップカルチャーに魅了され、クラブイベントを開催するなどしていた。2011年に地元に戻り、家業の「大島鉄工所」に入る。2025年に代表取締役に就任。カレーとコーヒーがマイブーム。
右/内藤 千裕
Chihiro Naito(かんもす大学)
1997年燕市生まれ。「かんもす大学」理事で、企画担当。2019年から地域を旅する「さとのば大学」をはじめとする市民大学の運営に携わる。現在はブランディング事業を行う合同会社フロート執行役員。3年前に新潟にJターンし、三島地域在住。
学長大島さんの気づき。
他者と関わる、これこそが地域。
――まずは、どういう経緯で「かんもす大学」が生まれたのか教えてください。
大島さん:2022年から約3年間、旧三島町の地域づくりプレイヤーを育成するためのワークショップに参加しました。そこで最終的に「何かかたちにしよう」と生まれたのが、市民大学「かんもす大学」の構想です。
――大島さんは、どうしてそのワークショップに参加することにしたんですか?
大島さん:家業の「大島鉄工所」は「地域の暮らしを支える機械を扱う会社」で、自動車の他にも農業機械や除雪車の整備、販売をしています。地域に密着している仕事なのだから、三島地域のことを理解していなくてはいけない。そうでないと会社は続かないだろうな、と考えていた頃にお誘いをいただいたんです。それでワークショップに参加しました。
――地域を大切に、事業をされているんですね。
大島さん:お客さまは三島地域の方がほとんどです。お年寄りが多く、ほんのちょっとしたことでも、車のことであれば連絡をいただきます。以前は正直、こうした対応を「効率が悪い」とも感じていて。でも独自の商品やサービスがあるわけでもなく、立地に恵まれているわけでもない「大島鉄工所」が地域の信頼を得るには、日々の対応を積み重ねていくしかないんです。
――ワークショップには、どんな心持ちで取り組んだんでしょう?
大島さん:主催者側からは、地域にとって意味のあるものを「かたち」にしてほしいとリクエストされていました。でも、本心では「そんなつもりで参加しているわけじゃないんだけどな」と思っていて。たとえば現状の課題や困りごとがあったとして、周りの人と連携すると動きが鈍くなっちゃう。それであれば、ひとりでできることを実践した方が早くゴールにたどり着くんじゃないのかな、と思っていたんです。
――効率も大事だ、と考えていたわけですね。
大島さん:みんなで進んでいるはずが、ときには後ろに下がったり、違う方向へ進んでしまったりもする。そこで実感したんです。「うわ、これが地域だな」と(笑)。大勢が関わるとなかなか前進しないんだけど、うまくまとまることができれば、ものすごい力になる。自分、もしくは自社だけではたどり着けない場所にきっといける、と思える場面が何度もありました。「かんもす大学」を立ち上げるまでに、いろいろな人と連携する大切さに気づけたんですね。
――3年間の取り組みで、転機となったようなことはあったんですか?
大島さん:内藤さんを含め新しいメンバーが加わり、検討が加速した手応えがありました。子どもたちへ、地域の歴史、文化、生活のための知恵や技術を教えられるんじゃないか、というアイディアが生まれてきたんです。先生みたいに教えられる人はこの地域にたくさんいるし、学校という場所でなくても、公園などの屋外で授業をやってもいい。自由な発想から「かんもす大学」は生まれました。

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新しい視点で見えてきた、
三島地域の可能性。
――内藤さんは、市民大学の運営に長く関わってこられました。
内藤さん:三島地域には祖母の自宅があり、祖母の介護を機に家族でそこへ住みはじめました。日本全国を旅してここに行き着いて、今はもう地元のような感覚で愛着を持って暮らしています。
――内藤さんがワークショップの中で意識したことは?
内藤さん:参加した時点では、大学をどのように作り上げていくか話し合っていました。市民大学は全国に数多くあります。カメラやライティングが学べる場所、移住体験や農業体験ができる場所などさまざまです。その中でどう差別化するのか、何を目指すのかをはっきりさせましょう、とメンバーのみなさんにお伝えしました。
――取り組みの中で、何か発見はありましたか?
内藤さん:驚いたのは、ワークショップがスタートする前に実施された住民アンケートの回答率が8割ととても高かったこと。一般的に回答率はもっと低い傾向にあるので、多くの方が三島地域に愛着を持っているのだな、と感じました。これまでもマルシェなどのイベントがあるとたくさんの人が集まっていたので、「なるほど、そういうことなんだ」と腑に落ちました。
――大きなパワーがありそうだ、と期待されたわけですね。
内藤さん:長岡市に合併してからも「三島」という単位でこのまちのことを思っている人が多いんだろうな、と以前から感じていて。それをどう「かんもす大学」に生かすか、コンセプトをどう策定するか、これまでの経験が役立ったと思っています。

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いよいよ6月開校!
「かんもす」ことで生まれる学び。
――この6月から「かんもす大学」が開校するとのことですが、お話いただける範囲でカリキュラムなど教えてください。
大島さん:三島地域全体をキャンパスにして、月1回ほどのペースで体験型の授業を行う予定です。開校式は6月6日ですが、その日に入学手続きをお願いするというわけではなく、カリキュラムごとに参加していただくことができます。
――都度参加ができるのはいいですね。
大島さん:気軽に参加してもらいたい、と思っているんです。三島地域の方であるかどうかは問わず、お子さんもお年寄りも「かんもす大学」で学べるようにしたいんですよね。あるタイミングで入学しないとダメですよ、という仕組みでは「混ざりきらない」ので。
――混ざりきる?
大島さん:「かき混ぜる」という言葉の方言「かんもす」が、「かんもす大学」の由来です。醸造文化のある三島地域にちなんだ「醸す」にも重ねています。
内藤さん:ワークショップではメンバーから「三島地域以外のみなさんにここに来てほしい」という声が上がっていました。住んでいる場所や年齢を問わず、いろいろな人が「混ざり合って」学びを深めることができる場所が「かんもす大学」です。発酵を促す微生物のように、外部からの刺激が三島地域にやってくることで町が停滞せずにいられるのでは、と思っています。
――それで「かんもす大学」と名付けられたんですね。
内藤さん:ただ学ぶのではなく、いろいろな要素を掛け合わせた授業を行う予定でいます。若者と年配が一緒に取り組んだり、三島地域の方とそうでない方が交流したり。味噌作り体験をしながら、味噌の栄養や効能、三島地域の歴史についても学べるようにする、というふうに。

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誰でも気軽に参加可能。
ユーモアあふれる授業に注目!
――大島さんは「かんもす大学」の学長に就任されました。開校間近の今、どんな気持ちですか?
大島さん:そうっすね……、「うぉ~」と気持ちが昂っている感じではないかも。「醸される」ようにゆっくりじっくり「かんもす大学」が熟成していくイメージでいるので。慌てても仕方ないのかな……と思いつつ、今は少しだけあたふたしています(笑)。でも「500人集めるぞ」というような取り組みではないので、長い目で見て育てていければいいかな、と思っています。
――きっと三島地域のみなさんは楽しみにしていますね。
大島さん:そうであると嬉しいですね(笑)。建物が新しくなる、人口が増える、経済が発展するなどと期待しつつ、現実はそう簡単にはいかないもの。それでも新しい取り組みが地域のみなさんの希望になるかもしれないですよね。さっき内藤さんが話した住民アンケートの結果を見ると、三島地域に愛着はあるけど期待はしていないのかな、と感じられる部分があって。これから少しずつ前向きな変化が広がっていくといいな、と思っています。
――「かんもす大学」の注目ポイントを教えてください。
大島さん:楽しくて、おもしろおかしい授業をするつもりです。流しそうめんをするのであれば、そこでDJイベントもしちゃう、みたいな(笑)。「ノートを絶対に忘れてこないように」という授業ではないです。気軽に参加ができて、ユーモアのある授業を作り上げたいですね。
――最後にそれぞれにお聞きします。まず内藤さん、今回のプロジェクトは今までの市民大学とはどこが違うと思いますか?
内藤さん:新しいことをはじめるときって、それに反対する人がいるものなんですよね。でも「かんもす大学」はみなさんから応援されています。それにプロジェクトメンバーは経歴も年齢もさまざまなのに、きちんと互いを尊重し、貢献しようという意思がある人たちばかり。そんなふうに自然と手と手を取り合って共創できていることが、とても素晴らしいことだと思っています。
――では大島さん、改めて開校に向けての意気込みをお願いします。
大島さん:学長という立場でいろいろな場所に顔を出させてもらうようになって、改めて「俺たちがはじめようとしていることってめちゃくちゃ大変だよな」と感じました。大勢の人を巻き込み、場合によっては誰かや何かの都合に「合わせなくちゃいけない」、ある意味修羅の道だぞ、と。でも「まちづくり」って、そういうものなんだろうと思うんです。それに立ち向かう覚悟はできています。

かんもす大学
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