花束みたいなよろこびを。
キッチンカー「クレープガート」
食べる
2026.05.10
県内各地のイベントやショッピングモール、雑貨店などで見かけるキッチンカー「クレープガート」。その見た目から「花束みたいなクレープ」と呼ばれるここのクレープは食べてびっくり。ホイップクリームは生地からあふれそうなほどボリュームたっぷりで、最後のひと口までフルーツが詰まっています。会社員からキッチンカーオーナーに転身した石黒さんに、仕事のこと、クレープのこと、いろいろと聞いてきました。
石黒 雄太
Yuta Ishiguro(クレープガート)
1987年燕市生まれ。新潟大学を卒業後、一般企業へ就職。何度か転職を経験。2023年にキッチンカー「クレープガート」をはじめる。
子どもに誇れる仕事を。
会社員からキッチンカーオーナーへ。
――石黒さんは、これまでどんなお仕事をされてきたんですか?
石黒さん:お世話になった会社は5社で、いちばん長く携わったのは営業職です。
――どうしてキッチンカーをはじめることにしたんでしょう?
石黒さん:大きなきっかけは、子どもが生まれたことですね。以前から自分は「こうありたい」という理想があって、子どもの誕生がそれを実現する後押しになりました。
――会社員時代は理想を追い求めてもたどり着けなかったわけですね。
石黒さん:「もっと自分に合う仕事や会社があるんじゃないか」という考えで、何度か転職を経験しました。今となっては、「どの会社でどんな仕事をしていても関係なくて、要は自分の捉え方次第だ」と思えるんですけど、当時はそうではなくて。
――そのお気持ち、よくわかります。
石黒さん:それで転職しても、いつも少なからず不満があるんです。「このまま定年まで会社員でいいのか」と考えたり。でも、子どもが生まれて、「俺の仕事はかっこよくてやりがいがあるんだぞ」と誇れるようになりたい、と思い直したんです。
――会社員をやめてからの選択肢は、いろいろあったと思います。
石黒さん:子どもの頃から「お店をしてみたい」という気持ちがあったんですよね。それが飲食店だったわけではないんだけど、当時の自分にできる仕事、収益的にもリスクが少なそうな仕事はキッチンカーかな、と思ったんです。というのは、開業する1年ほど前に、たまたまテレビでクレープのキッチンカーさんが取材を受けているのを見て、「なるほど、こういう仕組みなんだな」「やっていけそうだな」とイメージを持てたんですよね。あの番組を見ていなかったら、今は違うことをしていたかもしれないです。
――大きな決心が必要だったのではないですか?
石黒さん:思いついたらすぐに動かないと気が済まない性格で、新しい趣味をはじめるみたいな感覚だったかもしれないです(笑)。もし事業が失敗しても借金を抱えているわけじゃないから、またどこかに勤めに出ればいいじゃない、と思っていました。

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最後のひと口まで
美味しい、楽しい、嬉しい。
――石黒さんのクレープって、フルーツが下の方まで入っているし、ホイップクリームもたっぷりですよね。相当なこだわりがあるのでは?
石黒さん:せっかく楽しみにクレープを買って食べるのに、最後のひとくちが生地とクリームだけになっちゃうのって寂しいじゃないですか。バナナでもイチゴでも、「予想していなかったけどまだあったのね」と、よい意味で期待を裏切りたいな、と(笑)。ホイップクリームの量も多いから「デカ盛りだ」と驚かれます。でもボリュームを出そうとしたんじゃないんです。このかたちがかわいいかな、と作ってみたんですよ。
――それが「花束みたいなクレープ」ですね。
石黒さん:お客さまから「花束みたい」と言っていただくことが多かったので、このキャッチフレーズをつけさせてもらっています。自分では思いつかなかった言葉ですし、実物と違うと思われたらどうしようって不安もありました。でも最近思い切って「花束みたいなクレープ」と書かれた看板を置くようにしたんです。お客さまの声から生まれた言葉であることが、とても自信になっています。
――目指しているのは、どんなキッチンカーですか?
石黒さん:キッチンカーなので、決まった場所だけで営業しているわけではありません。それでもみなさんが何度も足を運びたくなるお店にしたい、と思っています。定期的に「いつもの場所」で出店して、リピートしてくださる方を増やしていくことが目標です。

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確かなやりがいを感じる日々、
その先には……?
――働き方を変えて、気持ちの変化などはありましたか?
石黒さん:今は「毎日やりがいと喜びしかない」と言い切れるくらい充実しています。「おいしかった」「また食べたい」という声は、とても力になりますね。
――ハードな面も、もちろんあると思います。
石黒さん:営業時間の他に下準備や買い出しなどするわけなので、働いている時間は以前より長くなっていると思います。自宅でちょっとした事務作業をすることもあるので、まったく仕事をしない日となると……月に1日くらいかもしれないですね。でもむしろ、仕事がしたくてたまらない、という感じです(笑)
――飲食の仕事をどう感じていますか?
石黒さん:ある程度わかっていたつもりですが、やっぱり厳しいですね。売れるか売れないか、なかなか読めないですから。当たり前のことではありますが、常に同じクオリティのものを提供しなければならないと肝に銘じています。
――これまでいくつかのお仕事をされてきたと思います。それが役に立っている実感ってありますか?
石黒さん:営業職を長く経験してからトラックドライバーをしたり、自動車部品の製造をしたりと、まったく違う業種で働いてきました。でも不思議と営業時代のノウハウがトラックドライバーの仕事に生きたりもするんですよ。これまでお世話になった会社、いろんな業界で得た知識はぜんぶキッチンカーの仕事に役立っています。
――お子さんにかっこいい姿が見せられているんですね。
石黒さん:会社員時代は残業が多くて、これでは家族と過ごす時間がほとんどないじゃん、と思っていました。キッチンカーであれば16時くらいに店を閉めて家族とのんびりできるかも、なんて想像していたんですけどね。実際は片付けに準備にと、22時くらいまでかかることもよくあります。唯一ちょっとストレスに感じているのは、あまり子どもと遊べないこと。でも年間を通じて出店回数を調整できるので、メリハリをつけて、家族の時間もちゃんと作るつもりです。息子は「大きくなったらパパの仕事を手伝いたい」って言っています。今だけだとは思うんですけど、かわいくて、かわいくて(笑)
――最後にこれからどんなふうに仕事をしたいと思っているか、教えてください。
石黒さん:キッチンカーってすごく特殊な仕事だと思うんです。飲食業以外の要素もたくさん含まれているというか。提供しているのは「食べもの」ですが、アミューズメントに近い部分があると思っているんですよね。それをどう表現するかもそうですし、出店先を見つける営業力やマーケティングの知識だって必要です。これまでいろいろな経験を積んだことが自分の強みだと思っています。今はキッチンカーでクレープを売っているけど、せっかくだから今の仕事で得たことを次につなげてみたいな、って思いも、少しだけ気持ちの奥底にあるんです。5年後、10年後は、もしかしたらまったく違う仕事をしているかもしれないです。
――そうやって次のことを考えるのがお好きなんですね。
石黒さん:常に新しいことをやっていたいタイプなので(笑)。美味しいって喜んでもらえる理由があるとすると、「満足してもらえますように、と願いを込めてクレープを焼いています」と、自信を持って言えるところかもしれません。

クレープガート
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