Things

新しい「好き」に出会える古本屋、沼垂テラスの「FISH ON」。

最近、本屋さんでワクワクする本に出会えない……と思うことありませんか? そんなときは、町の個性的な古本屋さんを訪ねてみるのもひとつの手です。沼垂テラスの一角にある小さな古本屋「FISH ON」の店長の三原さんは、何度も移転を繰り返しながら、かれこれ10年以上も古本を売り続けているんだとか。今回はそんな三原さんに、古本屋を始めるまでの経緯やお店のこと、古本を選ぶ楽しさなど、いろいろとお話を聞いてきました。

 

FISH ON

三原 洋介 Yosuke Mihara

1982年新潟市生まれ。長岡工業高等専門学校卒。卒業後は大阪市内の会社に就職。2005年に新潟に戻ってからは「ヴィレッジヴァンガード」などの書店勤務に従事し、2007年古町で「FISH ON」をオープン。何度か場所を変えながら営業を続け、2014年に沼垂テラスへと移転。

 

授業中にこっそり読んだ村上春樹。それが本を好きになったきっかけ。

――三原さんは本がお好きだと思うんですけど、やはり昔からたくさん本を読まれていたんでしょうか?

三原さん:小学生の頃までは、親が月に一回、本屋で好きな本を一冊買ってくれました。でも中学校に上がると、親と一緒に出かけるのが億劫になって、その習慣はなくなりました。なので、中学生のときにたくさん本を読んでいた記憶はありません。

 

――でも、そこからまた本を読むようになったんですよね?

三原さん:工業系の学校(高専)に通っていたのですが、そのとき村上春樹の小説に夢中になりました。

 

――それはまた、どうして?

三原さん:工業系の勉強が自分には合わないと気づいてから授業に身が入らなくなってしまって。それで授業中に本を読みはじめました。寝ていると先生に怒られるけど、本を読んでいれば目立たないと思って。

 

ヴィレッジヴァンガードと出会い、本に関わる仕事へ。

――本の仕事に関わりはじめたのは、どんなきっかけが?

三原さん:高専を卒業して工業系の会社に就職したものの長続きせずに辞め、その後仕事を転々としていました。そんなとき、短期間だけ工場で働く「期間工」の仕事で静岡へ行ったんです。会社が借りたアパートに半年間住み込みで。全然知らない土地なので、友達もいないし工場の仕事が休みの日は暇でした。そこで偶然面白い本屋と出会って、そこが「ヴィレッジヴァンガード」でした。「この本屋面白いな」と思って休日には通うようになりました。それで期間工が終わって、新潟に帰ってきて「今度は何をしようかな」と考えたときに、社会人になってからも本はずっと好きだったし、「本屋で働いてみたい」と思いました。たまたま新潟市のヴィレッジヴァンガードでアルバイトを募集していたので応募したら運良く採用されて働けることになりました。

 

――ヴィレッジヴァンガード、私も大好きです。そこではやはり書籍を担当されて?

三原さん:書籍は店長が担当していました。その店長のことは今でも尊敬していて、僕の中では「師匠」と思っています。本の選び方もすごく影響を受けました。僕は雑貨の担当でしたが、まわりには本があるし、それも自分が尊敬する人が選書した本棚だったので、環境としてはすごく恵まれていました。

 

――店長さんのどんなところを尊敬されていたんですか?

三原さん:本の選び方と、POPの作り方です。当時のヴィレッジヴァンガードはあまり専門的過ぎず、でもちょっとマニアックな本を置いていました。店長はその分野のことをまったく知らない人でも入りやすいような誘導の仕方と、POPの言葉のセンスが抜群でした。

 

 

――独立して自分のお店を始められたのはいつですか?

三原さん:2007年です。古町の西堀ローサに「ヨリナーレ」という、商工会議所がやっていた新規事業立ち上げを応援するチャレンジショップがあり、そこで古本屋を始めました。ヴィレッジヴァンガードを辞めてから漠然とですが「個人で本屋をやりたい」と考えて、いろいろな書店で働いたり、書店に関する本を読みました。それで、とてもじゃないが新刊書店は金銭的に個人でできるレベルじゃないなと感じました。そんななか、松浦弥太郎さんの『最低で最高の本屋』という本を読んで「古本屋なら個人でもぎりぎりできるかも」と思いました。

 

 

――古本なら自分で本の値段を決められますもんね。この場所にお店を構えられたのはいつですか?

三原さん:2014年からです。それまでに何度も移転していて、ここに来てからもお客さんに「もう引っ越さないの?」と、からかわれたこともあります(笑)

 

――そんなに何度も(笑)。お店の名前はその度に変えられて?

三原さん:店の名前はずっと一緒です。開高健の著書に『フィッシュ・オン』という本があります。外国では魚が釣れたときに「フィッシュ・オン」と言うらしくて、そこから「いい本を釣り上げてください」という意味を込めて店名にしました。店を始めた当時は、「~ブックス」や「~書店」のようなありきたりな名前は嫌だなと思っていました。でも今は一目で本屋とわかる店名にしておけばよかったと後悔しています。

 

――「FISH ON」、とても素敵だと思いますよ。

三原さん:いやいや。店名だけだと釣具屋だと思われたり、「何屋かわからない」と言われたりします(笑)。でもまあ、一度決めた名前だし、と思って変えずにきています。

 

読むことで気持ちが動いて体も動くような、ワクワクする本を。

――お店を始められたときに何かコンセプトはあったんですか?

三原さん:うちはジャンルに特化していなくて。ただ、本によってワクワクしたり、気持ちが動いて身体も動かされたりとか、そう感じてほしいです。コンセプトはどこかに書いてあった気がするんですけど…。えーっと、「1日の終わり、そっと本を開くたのしさ。思いがけない本と出会い、自分の可能性を拓くたのしさ。本も魚も、ひらくと味わいが深まります。」です。

 

――恥ずかしそうにされているので、あまり突っ込まないでおきます(笑)。お店の本棚を見ていて、本に馴染みが無くてもとっつきやすい、面白い本が多いなと思ったんですけど意識されているんでしょうか。

三原さん:ここに来るお客さんって若いんですよ。それに、皆さん沼垂テラスに来るのであって、この店を目当てに来られる方は少ないので。だから、ジャンルへの入り口を広くするためにキャッチーな本を多く揃えています。店の外に置いている本はよりその傾向が強いですね。

 

 

――三原さんが思う、古本屋で本を選ぶ面白さってなんだと思いますか?

三原さん:お客さんから「私の家の本棚とすごく似ている」と言われることがあります。僕はすごくフラットな気持ちで本を置いているつもりですが、好みや趣味が自然と出ているみたいです。人の本棚を見ている感じ。普通は見たくても見られないじゃないですか。そういう面白さはあるかもしれない。

 

――わかる気がします。お店をされていて嬉しいのはどんなことですか?

三原さん:当たり前のことですけど、本が売れることです。特に10代、20代前半の若い人に買ってもらえるとより嬉しいです。今はスマホや面白いアプリなど、数多くの娯楽があります。その中から「それでも本を選んでくれた」というのは本当にありがたいと思います。

 

 

――「FISH ON」で今後やってみたいことはありますか?

三原さん:最近、坂口安吾や西脇順三郎、良寛、會津八一など、新潟の作家や郷土の偉人に興味が出てきたんです。お店を始めたばかりの頃はそこまで興味もなかったし、本も置いていませんでした。けれどせっかく新潟で古本屋をやっているのだからもっと勉強して、お客さんに紹介していきたいなと思うようになりました。

 

――コーナーを作るとか?

三原さん:それもそうですけど、郷土の作家のZINEを作ったり、読書会をやったりとか。まだ漠然とですが「なにかしたいな~」と模索中です(笑)

 

 

今は本が売れない時代だと言われていますが、三原さんによると新潟市内では古本屋さんが増えてきているらしいです。お店によって置いている本の系統がまったく違うのも、古本屋さんの面白さ。「FISH ON」に行けば、いつもの本屋さんでは出会えない、あなたの好奇心を刺激する一冊に出会えるかもしれません。

 

 

FISH ON

新潟市中央区沼垂東3-5-18

12:00-17:30

月-木曜定休

  • She
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード


TOP