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本物とそっくりな色と質感。藤井さんのつくる、食品サンプル。

レストランやカフェの入口に置かれている食品サンプルを見て、何度お腹を鳴らしたことか。田上町を拠点に、食品サンプルアーティストとして活動している藤井さんのつくる食品サンプルは、とてもリアル。思わず手にとって食べてしまいそうです。活動を始めたきっかけや、制作へのこだわり、6月に開催されるイベントについて、藤井さんにいろいろ聞いてきました。

 

メコ☆しろSweets

藤井 裕子 Yuko Fujii

1976年田上町出身。SEとして働いていた経験を持つ。子育てをしている中で樹脂粘土の楽しさに気づき、食品サンプル作りをはじめる。その後食品サンプル作家として活動し、企業の食品サンプルやワークショップ、講座を開くなど幅広く活動している。魚と和食が大好き。

 

きっかけは、子どもと遊んだ樹脂粘土。

――部屋いっぱいに食品サンプルがありますね!どれも美味しそうで、お腹が減ってきました……。

藤井さん:ありがとうございます(笑)。実は今、お茶と一緒に出したこれも食品サンプルなんです。最近のお気に入りで、本物と間違えてしまう人もいらっしゃいますよ。

 

――本物だと思ってしまいました……。藤井さんが食品サンプルをつくりはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

藤井さん:子育てをしている中で、子どもと樹脂粘土で遊んでいたんです。子どもはすぐに飽きちゃったけど、私はハマっちゃって(笑)。その後もずっと樹脂粘土でミニチュアサイズの作品をつくっていたんですけど、そのうち「どうせつくるなら原寸大でつくりたい」って思うようになって。横浜までつくり方を学びに行くことにしたんです。

 

――横浜まで!

藤井さん:横浜では、型の取り方や色付けなど、基礎中の基礎を教えてもらいました。それから自分でつくりながら、理想の色や形になるように、考えて、つくってを繰り返しました。習ったことを踏襲するというより、やり方を自分なりに変えていったんです。

 

 

――そこまで没頭できるなんて、好きじゃなければできないですね。

藤井さん:小さい頃からずっとものづくりが好きだったのが大きいかもしれませんね。妹とシルバニアで遊ぶときも、まずはシルバニアにあわせて道具からつくっていたくらいです(笑)。

 

――その頃からすでにクリエイティブだったんですね(笑)。そもそも、食品サンプルはどうやってつくられているのでしょうか。

藤井さん:樹脂を使っている場合、ざっくりとですが型に樹脂を流して、固めて、色を塗るっていう感じです。意外と簡単と思うかもしれませんが、球体のものや複雑な形状のものは、型から抜くのが難しかったり、無理に抜こうとすると型が壊れちゃったり……。今まで何度も失敗してきました。

 

――それでもやめようとは思わなかったんですね。

藤井さん: 思わないですよ、だって面白いから。同じ食品だとしても、まったく同じものを二度はつくれないんです。色もそうですが、気温や湿度によっても樹脂の状態が変わってきますし。トライアンドエラーを繰り返して、いちばんいい方法を今も模索しています。

 

リアルを追求した作品は、まさに「食品模型」。

──藤井さんが食品サンプルを作っているときにこだわっていることを教えてください。

藤井さん:色と質感をリアルにつくることです。言葉では簡単に言えるんだけど、とっても難しいんですよ。まず色は、実物みたいに色をつけていくのはもちろん、手に取ってもらった後に長持ちするように、何回も試行錯誤を繰り返しました。自分に合った方法を探すために、ホームセンターに何軒も行って材料を探したこともありましたね。

 

――色を保つために、そこまでしなきゃいけないんですね。

藤井さん:色持ちもそうですが、変色にも気をつけなきゃいけないんです。パーツを何個かまとめて保存していたときに、色移りしたり、変色してしまったりしたことがあったんです。基礎は勉強してましたけど、こればっかりは原因がわからなくて。とにかく経験を積んで、対策を考え続けているんです。

 

 

――質感についても聞いてもいいですか?

藤井さん:リアルに近づけるために、本物から型をとっているんです。だったら本物みたいにできると思うかもしれないのですが、食品の柔らかさを出すのがとても難しいんです。食パンのしなり具合とか、お寿司のネタのカーブとか……。よりリアルな柔らかさを出すために、いろんな工夫をしているんです。

 

――食品サンプルって、見た目を重視して色を鮮やかにしすぎているものもありますが、藤井さんの作品を改めて見ていると、より本物に近い色や質感になっていますね。

藤井さん:そうかもしれませんね。私が今作っているのは、食品サンプルっていうより、模型に近いんじゃないかなと思っています。私は魚が好きで、本物を釣ったり、スーパーの魚売り場をウロウロすることもあって。基本的には、図鑑に載っている写真を立体にしたいと思って魚のサンプルをつくっています。他の食品も、模型としてつくっている感覚に近いかもしれません。

 

 

――そんな「食品模型」を体験できる教室も、ここでは開催されているんですね。

藤井さん:ネットから予約してもらうかたちで、募集・開講しています。お子さんと一緒に受ける方、旅行のついでに受けてくれる方もいます。教室で受けるのが難しい方も多いので、ワークショップもやっていますよ。外部で開くワークショップでは、誰がつくってもきれいな状態でできるように、メニューを考えています。

 

和食への愛を語る、「和食展」が6月に開催。

――藤井さんの主催する展示会が、6月に開催されるんですよね。

藤井さん:「和食展」というものをミニチュアフード作家の古川さんと一緒に開催します。三条の「まちやま」さんと新津の「石油の里」さんの2箇所で展示させてもらえることになりました。

 

 

――実寸大とミニチュア、どちらも楽しめるイベントなんですね。どうしてこのイベントをしようと思ったのでしょうか。。

藤井さん:今までの展示はイベント会社の方にお声がけいただいていました。そのときは万人受けするように作品を作っていたんですけど、自分の好きなものをつくって展示がしたい!と思うようになったんです。それで、同じく和食が好きな古川さんを一緒に展示をすることにしました。

 

――このイベントの見どころを教えてください。

藤井さん:「まちやま」さんでは「いただきます編」、「石油の里」さんでは「おかわり編」というかたちで開催します。この2箇所では展示方法が違っていて、「まちやま」さんでは作品をより近くで見れるように、「石油の里」さんでは博物館のように作品を見てもらうことができます。

 

 

――会場ごとで、それぞれの楽しみ方ができるんですね。

藤井さん:展示の他にも「まちやま」さんではクイズラリー、「石油の里」さんではポストカードのプレゼントがあります。ワークショップもそれぞれの会場で開催するので、ぜひどちらも来てもらって、いろんな楽しみ方をしてもらえると嬉しいですね。

 

――最後に、藤井さんの今後の目標を教えてください。

藤井さん:食品とは少し離れてしまうかもしれないですが、水をサンプルで表現できたらいいなと思っています。そしたら魚を泳がせることができるでしょ(笑)。あとは、新しい試みとして、お寺で子どもたちにサンプル作りを体験してもらうこともしています

 

――お寺、ですか。

藤井さん:不登校の子や発達障がいを持っている子が対象で、好きになってまでは言わないけど、まずは体験してみて、好きか嫌いか知ってもらうことを目的にしています。この作業は集中力がいるので、なにも考えずに没頭できるし、親戚のおばさんみたいな感じで悩みを聞くこともしています。この秋にも開催する予定なので、気になる方は気軽に来てもらえると嬉しいです。

 

 

 

和食展

いただきます編

6月7日、6月8日 図書館等複合施設 まちやま

おかわり編

6月14日〜6月22日 石油の里

入場無料

 

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