東区にある手打ち蕎麦の店「柳都そば ひだか庵」が、昨年、お蕎麦だけでなくビーガン料理も楽しめる「ベジカフェ 手打ちそば ひだか庵」に生まれ変わりました。今回は「ひだか庵」を営む竹内さんに、お店をリニューアルした経緯やビーガン料理のことなどいろいろとお話を聞いてきました。
ベジカフェ 手打ちそば ひだか庵
竹内 紀幸 Noriyuki Takeuchi
1968年村上市生まれ。新潟市のホテルなどで料理人として経験を積み、2001年に「柳都そば ひだか庵」をはじめる。共同経営者の阿部利幸さんとともに、2021年「ベジカフェ 手打ちそば ひだか庵」をオープン。釣りが趣味で、新潟近海でまぐろを釣り上げたこともあるそう。
——「ひだか庵」さんは、もともと手打ち蕎麦のお店でしたよね。まずは、お蕎麦屋さんをはじめたときのことを教えてください。
竹内さん:社会に出てからずっと料理人として働いていたんですけど、蕎麦に興味があって、趣味として蕎麦打ちを習っていました。そしたら師匠に「ここまでの腕があるんだから、お店もできるんじゃない」と後押ししてもらって、21年前に師匠と義理の父と3人で「柳都そば ひだか庵」をはじめたんです。うちの蕎麦は、山形の蕎麦粉を使ってつなぎを極力少なくした「外二蕎麦」ですよ。
——去年リニューアルしたそうですが、今はどんなお店に?
竹内さん:これまで通り手打ち蕎麦もあるんですけど、「ベジ料理」もメニューに加えました。15年くらい前から年に3回ほど、20〜30名のお客様が集まって、うちの店でビーガン料理を楽しむ会が開かれていました。そこで今の共同経営者である阿部さんと出会って、一緒に「安全な野菜で作ったビーガン料理が食べられるお店をやってみたい」と数年前から動き出したんです。店舗を改装したり、いろいろ準備して、去年「ベジカフェ 手打ちそば ひだか庵」として再スタートしました。
——21年続いたお蕎麦屋さんからシフトチェンジされたのには、どんな思いがあったんでしょう?
竹内さん:阿部さんには病気を患った経験があって、それをきっかけに野菜中心の食事に変えたんだそうです。そしたら免疫力が高まり、身体の調子も落ち着いてきたんですって。それを知って、僕も「野菜が免疫力を高めるってどういうこと?」って2年ほど前に関心を持ったんですよ。ちょうどコロナ禍になったこともあって、「免疫力が上がれば新型コロナウイルスに限らず、身体にメリットがあるんじゃないか」と考えるようになったんです。
——それでリニューアルを決断されたんですね。ところで、お店で出されている「ベジ料理」というのは?
竹内さん:「ちょっと緩いベジタリアン料理」という感じでしょうか。ビーガン料理は予約制で提供しているんですけど、今お昼のメニューで出している「ベジプレート」もビーガンの皆さんに召し上がっていただけるものです。
——カレーや天ぷら、カツ丼もあるようですが。
竹内さん:カレーには動物性の材料は一切使っていません。野菜から「ベジブロス」というスープを作って、そのスープをベースにスパイスと煮込んだ野菜を加えて仕上げています。天ぷらはえび天と野菜天から選んでもらえるようにしています。野菜天も意外と人気で、半分のお客様が野菜天をチョイスされます。カツ丼は大豆ミートを使ったものもありますよ。
——お肉やお魚を使ったメニューがまったくない、というわけではないんですね。
竹内さん:「ビーガンの方も、そうでない方も、みんなで一緒のテーブルで食事を楽しみましょう」というコンセプトなんです。ビーガン料理もあるよ、そうじゃない料理もあるよ。そして今まで通り手打ちそばもある。そんなお店です。
——コーヒーも充実しているようですね。
竹内さん:店内で豆を焼いているんですよ。お店をリニューアルする際にコーヒーの専門家と出会って、メニューにコーヒーとスイーツを加えたんです。以前は昼の2時〜5時はお休みしていたんですけど、その時間もカフェタイムとして楽しんでもらおうと思いまして。
——こういったお料理が食べられるところって、案外少ないんじゃないかと思うんですが。
竹内さん:そうみたいですね。お客様からは「ビーガン料理を食べられる場所が少ないから、もっとお店のことを発信してほしい」とよく言ってもらいます。遠方からうちの「ベジ料理」を食べに来られるお客様もいますね。でも、野菜だけの料理はまだまだ知名度が低いジャンルです。ビーガン料理に特化すると、いらっしゃるお客様が限定されるので、知人からは「長続きしないんじゃないか」と心配されたこともありました。でもうちは「野菜だけじゃなくて、蕎麦も天ぷらもカツ丼も食べられるお店です」というふうにやっていこうと思っているんです。今までのお客様も来てくださいますし。
——素人考えですが、「野菜だけで満足できるだろうか」と気になります。
竹内さん:「野菜だけだから」と思われないように、ボリューム感や味付けに工夫をしています。先日うちのお店で、建設系の会社の食事会があったんです。社長と奥様がビーガン料理を推奨しているようでお越しいただいたんですね。でも、従業員の方は「どうせ野菜でしょ」という感じで、いまひとつの反応だったんですよ。ところが食事を終えて帰る頃には、だいぶ満足されていました。
——やっぱりビーガン料理って、家庭で作るのは難しいんでしょうか?
竹内さん:野菜だけで作るメニューは時間と手間がすごくかかるので、ご自宅で作るのは大変かもしれませんね。時間をかけて野菜の旨味を引き出す作業が必要で、ごぼうの煮物なんかでも、ゆっくりゆっくり長い時間煮るんです。お肉やお魚を使った方が、旨味を引き出すのは簡単ではありますね。
——なるほど。
竹内さん:ただ旨味の成分であるアミノ酸は、手間をかければどんな素材からでも出てくるんです。それが長持ちするかしないかは別問題ですけど、一生懸命作ればお肉やお魚を使わなくても旨味は出てきてくれるんですよ。
——改めて「ベジ料理」のいいところを教えてください。
竹内さん:僕は「ベジ料理」に出会って、「お肉を食べたい」と思う頻度が少なくなりました。野菜を中心とした食事だから「コレステロールが気になる」なんて心配もないです。満腹でもまったくもたれませんし、身体が軽くなりましたね。食生活が変わって、高かった血圧も落ち着いてきたんですよ。
——さて、最後にこれからやりたいと思っていることを教えてください。
竹内さん:ビーガン料理のフルコースを作ってみたいと思っています。ホテルで働いていた頃、懐石料理を作っていたんですよ。リニューアル前も蕎麦懐石として、前菜、お魚、お刺身、シメのお蕎麦というコース料理をご用意していたんです。これまでの得意分野を生かしてビーガン料理のコースメニューを考える時間が楽しいですね。
ベジカフェ 手打ちそば ひだか庵
新潟市東区松崎1-18-6
TEL 025-256-7711
営業時間 11:00〜21:00
定休日:水曜日