Things

アートをググッと身近にする、イラストレーターの「ひろきぽ」さん。

ほんの少しでいいからイラストを上手に描けるようになりたいと、最近思うようになりました。そうすればイラストで記事を補足することもできるし、アクセントにもなるような気がします。でも実際はすごく絵が下手……。今回は三条市で活躍するイラストレーターの「ひろきぽ」さんに、絵を上達させるためのヒントや、活動をはじめたときのエピソード、実績を重ねて気がついたことなどいろいろとお話を聞いてきました。

 

イラストレーター

ひろきぽ

1996年三条市生まれ。大学を卒業後、長岡市の会社に就職。4年間営業職を経験した後、2022年にイラストレーターとしての活動をはじめる。影響を受けた作品はスラムダンク。ラーメンとグミが好物。

 

20代で失敗する不安と、早くスタートを切る期待。

——「ひろきぽ」さんがイラストレーターの活動をはじめるまでのことを教えてください。

ひろきぽさん:小さい頃からずっと絵を描いていました。でも自分の実力を客観視できるようになった頃から、「絵は好きだけど仕事にはできないだろうな」と思っていて。大学4年生のとき、いちばん下の賞ではあるんですけど、週刊少年チャンピオンの漫画賞をもらったんです。それでケジメがついて、清々しい気持ちで就職しました。

 

——それはすごい。ちょうど学生最後の年に結果を残せたわけですね。

ひろきぽさん:これからは頑張って働いて、休日にでも絵を描こうって割り切れたんです。でも働きはじめて2年目くらいのときにモヤモヤした感情が湧いてきて。「もう1度絵を描きたいんだな」って自覚がありました。でもその気持ちは抑えなくちゃって思っていました。

 

 

——わかるような気がします。社会に出たばかりだし、判断がつかないみたいな感じですよね、きっと。

ひろきぽさん:「今さら絵が仕事になるわけじゃないし、どうしようっていうんだ」って。そんなとき、今制作場所として使わせてもらっているコワーキングスペースの創業者の方に背中を押してもらったんです。「別に働きながらでもできるでしょ」って。

 

——それは「副業とか趣味とかで、ちょっとずつはじめる道もあるんじゃない?」ってこと?

ひろきぽさん:それがひとつのやり方で、もうひとつは「思い切って仕事にしてしまおう」って選択肢です。当時25歳で、40歳くらいまでに仕事にできればいいなと思っていたんですけど、「たぶん、それって本心じゃないよね」とズバリ言われまして。その言葉に何も言い返せませんでした。当時は、もし絵を仕事にして失敗したら人生終わりだと思っていたから。

 

——わかる、わかります。20代で失敗してこれからどうするんだっていう気持ち。

ひろきぽさん:そしたら「日本には何百万も会社があるんだから、絶対にまたどこかに就職できる。体力がある今のうちにやっといた方がいいんじゃない」とも言われて、一気に気持ちが軽くなったんですよね。逆に早くスタートを切ってやろうと思えました。そこから1年半後に退職、開業しました。

 

好きを仕事にして生まれた葛藤。

——ひろきぽさんの活動は、主にオーダーアイテムの制作とご自身の作品づくりですか?

ひろきぽさん:アイコンに使っていただくようなものから、ドーンと飾ってもらう大きなものまで、いろいろご依頼をいただいています。個人のお客さまから似顔絵をお願いされることも多いです。それと好きな作品を制作して個展を開く、そこでグッズを販売することもしています。

 

——そういう活動にしようって当初から計画されていたんですか?

ひろきぽさん:そうではないんです。1年目はオーダー案件のみでした。仕事にするんだから、当然ご依頼いただいたものを作らなくちゃと思っていたんです。でもしばらく経って、好きを仕事にしたはずなのに満たされていないっていうか、楽しくないなって。贅沢な悩みですよね。

 

——そういう壁もありますよね。

ひろきぽさん:それでオーダーを受けつつ、個展に向けても動こうと思いました。昨年は3回個展を開きました。だんだんとバランスがわかってきて、もうすぐイラストレーター3年目を迎えます。

 

 

——やっぱり子どもの頃から絵は得意でした?

ひろきぽさん:大好きでしたし、自分では得意だと思っていました。あの頃はSNSで人と比べることもしなかったし、自分がいちばんだと思っていました(笑)

 

——どうしたら絵が上手になるんだろうってすごく不思議なんですよね。絵を描く習慣があるから上達するんでしょうか。

ひろきぽさん:やっぱり「描く量」は必要だと思います。僕もそうとう描いていました。小さい頃はコロコロコミックしか読んでいなかったけど、スラムダンクを読んで「こんなかっこいい漫画があるんだ」って衝撃を受けたこと、よく覚えています。世界が広がると比較作業を行うようになって。「肩幅はもうちょっと狭い方が女の子はかわいいな」とか、お手本と見比べて描くようになるんです。そうなるまでに「量」がいるんじゃないですかね。

 

——「あれ、友達より上手だぞ」と思ったのはいつくらいですか?

ひろきぽさん:中学生のときですね。抜群の自己肯定感で「はい! うますぎる」みたいな(笑)。でも高校生の頃にものすごく絵がうまい友達に会ってしまって。そこで「がーん。俺って下手だったんだ」ってしばらく絵が描けなくなっちゃいました。その頃からどうしたらもっと上達するのか具体的に考えるようになりました。

 

普通の感覚でイラスト制作ができるって強い。

——「ひろきぽ」さんらしいテイストというと、どういうものなんでしょう?

ひろきぽさん:大事にしているのは初見のインパクトと「何度見ても飽きない」を両立させることです。はじめてイラストが目に入ったときのインパクトってめちゃくちゃ大事だと思っていて。ただそれだけじゃなくて何年も飾ってもらうものなので、ずっと新鮮さを感じてもらえるようにしなくちゃいけないと思っています。よく見ると遊び要素がある、全体を見て迫力があるっていうのを繰り返したくなるイラストを目指しています。

 

——ご自身の作品づくりとなると?

ひろきぽさん:今はテーマをひとつに絞って3、4ヶ月描いています。去年の春から夏に描けては「海」をテーマに新作を描いていました。夏からは「和」をテーマにして。年内最後の個展は「歌」がテーマでした。

 

 

——好きを仕事にしたこの2年はいかがでしたか?

ひろきぽさん:やっぱり早くスタートを切っておいてよかったなって思います。初めて取り組むことがたくさんあるので、課題と悩みにぶち当たるんですけど、ぜんぶ「自分の仕事」として直面しなくちゃいけない。こういう立場じゃなかったら経験できないことだとポジティブにとらえています。会社員の頃は言い訳をいっぱいしてきましたけど、今はそうできませんしね。

 

——作風や心持ちは変わりました?

ひろきぽさん:依頼してくれた人、プレゼントされた人が嬉しく思う絵かどうかっていう視点をだいぶ持てるようになったと思います。例えば似顔絵のオーダーをいただいたとして、最初は「似ていればそれが似顔絵だ」と思っていました。でもだんだんとこちらが良かれと思って表現にした部分が、その方にとってはコンプレックスかもしれないし、ただ「似ているからいいわけじゃないんだ」「オーダーされたものを描けばいいわけじゃないんだ」と気がつきました。だってそんなもの、AIで描ける時代ですもん。相手は何を描いて欲しくて、なぜ自分にお願いしてくれたんだって、その思いを汲み取って、自分なりにかたちにする。それでトッピング程度に遊び心をのせてお渡しするっていうのが、やっとできるようになってきたかな。

 

——受け手に思いを寄せるってことですね。

ひろきぽさん:僕のすべてのはじまりはコロコロコミックで、もうあのマンガ雑誌が好きで好きで、擦り切れるまで読みました。子どもの頃のあの感覚をずっと大事にしたいって思っています。なんていうか、アートって人生を確実に豊かにするものではあると思うんですけど、ちょっととっつき難い、わかり難いって感じる人もたくさんいると思うんです。僕は美大出身でもデザイン会社を経験しているわけでもないから、一般的な視点を持って作品づくりができているのかなと思っています。アートと何かをつなげるくらいの立ち位置でいたいし、たくさんの人が楽しめる作品を作り続けたいんです。

 

——それを踏まえて、これからはどんなふうにステップアップしたいですか?

ひろきぽさん:もっとパフォーマンス力を上げたいって思っています。例えば、描きながらトークするとか。それには単純な画力だけじゃなくて、即興で描く力とか描きながら喋る力、対面で描く力ってスキルアップしなくちゃいけないことがたくさんあります。でもこのパフォーマンス力がアップしたらできることがめちゃくちゃ増えるし、三条市のいろいろなサービス、魅力的なみなさんともっと関われると思うんです。

 

 

 

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP