今年3月、三条市吉田にオープンした「MEETS STUDIO」は、「高山電気株式会社」という電気工事の会社がはじめたシェアスペースです。その中にあるカフェ「杢|MOKU」では、目の前に広がる田んぼを眺めながら、ちょっと変わった組み合わせの焼き菓子やチーズケーキが楽しめるんだとか。「高山電気株式会社」代表取締役の高山啓二さんと、「杢|MOKU」を任されている奥さんのえみ子さんにお話を聞いてきました。
高山電気株式会社
高山 啓二 Keiji Takayama
1981年三条市生まれ。「高山電気株式会社」代表取締役。2023年3月に三条市でシェアスペース「MEETS STUDIO」をオープン。]
杢|MOKU
高山 えみ子 Emiko Takayama
1980年加茂市生まれ。2023年3月より、「MEETS STUDIO」内のカフェ「杢|MOKU」を担当。お店の入り口付近に飾られている絵は自身の作品。
——「高山電気」さんは電気工事の会社なんですよね?
啓二さん:そうです。住宅、工場、店舗といろいろやっているんですけど、僕はもともと建物とかのデザインが好きで。店舗のお仕事をさせてもらう中で、具体的に提案をするにも、まずは自分で実験的に店舗を作るのが手っ取り早いなって考えたんです。こちらの思いも伝えられますしね。
——「こちらの思い」というのは?
啓二さん:照明とか空調って、建物の予算を決めるなかでも優先度を下に見られがちなんです。だけどデザイン性とかを突き詰めていくと重要なことなんじゃないかなって思うので、照明や空調設備に先に目を向けてもらえるようにしたいんです。
——重要性に気づいて欲しかったんですね。
啓二さん:店舗に限らず、人が生活していく中で暗いからつける明るさだけの安易な照明ではなく、そこにあるヒトやモノをフォーカスするように、灯りは木材や塗壁と同等の建築素材として、照明器具はひとつの道具であると捉え、豊かな生活を創造していく空間にとっての重要性を感じて貰えたらと思います。
——ショールームではなく、シェアスペース「MEETS STUDIO」を作ることにしたのはどうしてなんでしょう?
啓二さん:小さな電気工事店ですが、多くのお客様に支えられながら今までやってこられたので、恩返しの意味も込めて、業者さん同士の出会いやつながりが生まれたり、みんながアイデアを持ち寄ってモノが生まれたりする場所を作りたかったんです。
——空間づくりにもこだわりがあると思います。
啓二さん:普遍でタイムレスなデザインのものを意識して空間作りをしました。流行り廃りもありますし、ソリッドかつミニマルなものを探して置いています。
——カフェを併設することにしたのは?
啓二さん:妻のえみ子がカフェをはじめる前から焼き菓子を作って販売していたので、せっかくだから週数回でもこの場所でカフェをやってもらえたらいいんじゃないかなって思ったのがはじまりですね。
——えみ子さんは「いつかカフェをやってみたいな」と思っていたんですか?
えみ子さん:ぜんぜん思っていませんでしたが、子供の頃は、母親の手作りお菓子で育ちました。家には常に製菓用品が揃っていて、その影響もあって、学生の頃からお菓子を作るのは好きでした。ずっとお菓子に関わる仕事をしていたわけではなかったんですけど、以前、焼き菓子を作って販売していて、本を読んだり、色んなお店のお菓子を食べたり、とにかく作る回数を増やしたら、段々とお菓子作りの理屈がわかってくる様な気がして。それで「やっていけるかもしれないな」と思ったときにこの話が来て、カフェをはじめることになりました。
——「杢|MOKU」という店名を決めたのはおふたりで?
えみ子さん:主人です。数秒とかで決めたよね(笑)
——即決だったんですね(笑)。どんな意味が込められているんですか?
啓二さん:「杢グレー」っていう、アパレルに使われる生地の名前に由来しています。昔から杢グレーが好きで、Tシャツとかもよく着ていて。店内の素材にも杢グレーを使っていたので、ここに立ち寄る人たちが糸を織りなすように交流して、新しい出会いや挑戦が生まれて欲しいという思いと、ここがお客さんにとって杢グレーのTシャツみたいに着心地の良い場所になって欲しいという思いでつけました。
——いろんな焼き菓子がありますね。おふたりのおすすめを教えてください。
えみ子さん:三条の土地柄なのか、馴染みがあるんですかね、「檸檬ケーキ」が人気ですね。昔から檸檬ケーキを食べてきた方も多いみたいで。私も反響があると作っていて楽しいですし、自分が作りたいものと同時に、やっぱり皆さんが「美味しい」と求めてくださるものを提供したいなと思っています。
啓二さん:僕も子どもの頃に檸檬ケーキを食べていた気がする。うちで出しているものとは違いますけどね。僕は「スパイスジンジャーローフ」も好きです。スパイスが入っていて、お酒にも合う感じなんです。
——大人なお菓子なんですね。
えみ子さん:あとはチーズケーキをいろんな食材の組み合わせで作っていて、それも人気です。例えば小豆とエスプレッソとか、チョコレートとパルメザンチーズケーキとか。シナモンとパルメザンチーズを合わせてみて、ちょっと味見して「いいかも」と思ったら作ってお店に出しちゃいます(笑)。だからメニューは日替わりなんです。
——それはお客さんもお店に来るのが楽しみになりますね。
えみ子さん:お客さんにリクエストされたものとかは、また作るようにしていますけどね。素朴なんですけど、意外とあるようでないような組み合わせで、ちょっとびっくりしてもらえるように意識して作っています。
啓二さん:えみ子はお客さんの顔を本当によく覚えるんですよ。人と喋ることが好きなんですよね。
——へ~、それは意識して覚えようとしているんですか?
えみ子さん:自然と覚えちゃいます(笑)。お客さんとは近い距離感で運営していきたいので、自分からコミュニケーションを取るようにしています。気軽にメニューのことを聞いたり、「あのお菓子をまた作ってほしい」ってリクエストしたりできる関係性になれたらいいなって思うので、本当に何でも話しかけてもらいたいです。
——スペースとしては今後どのような展開を考えているんでしょうか。
啓二さん:今月末にワークショップとしてこの場所を借りてくださる方がいるんですけど、そういう方がチャレンジショップとしても活用してもらえる場所になればいいですね。「杢|MOKU」とコラボとか、いろんなことができるようになると思うので、そのために設備や環境を整えていく予定です。
——カフェとしてはいかがですか?
えみ子さん:今は焼き菓子中心なんですけど、料理も好きなので、スープ類とかも出してみたいんです。今は焼き菓子に反響があるのでそっちに重きを置いてやっているんですけど、落ち着いたら食事系のものも出してみたいなって思います。
啓二さん:今の時期、田園風景がすごく綺麗なので、ぼーっとしに来てもらえたらいいよね。「カフェに行くぞ!」っていうより、ゆっくり休みに来てもらえたら嬉しいです。
杢|MOKU
三条市吉田99-3 髙山電気株式会社 MEETS STUDIO内
営業時間 10:00-15:00
定休日 火木土日