個人経営の古本屋さんの商品には、店主の趣味が反映されることがよくあります。今回ご紹介する「ニュースナック四ツ目長屋(よつめながや)」も、そんな古本屋さんのひとつ。赤や青の照明に照らされたアングラムードの店内には、マニアックな古本や危なげなインテリアが並び、カウンターではお酒を楽しむこともできます。今回は店主の藤田さんにお店のことについていろいろとお話を聞いてきました。
ニュースナック四ツ目長屋
藤田 泰輔 Taisuke Fujita
1984年五泉市(旧村松町)生まれ。服屋、美容室、古本屋、アダルトショップ、飲食店、雑貨店など様々な職種で経験を重ね、2021年4月、新潟市中央区に「ニュースナック四ツ目長屋」をオープン。読書やお酒が趣味だったが、今では趣味が仕事になっている。
——古本屋さんにしては、怪しいムードが漂ってますね。
藤田さん:僕が若かった頃の古町には、こんな怪しい感じのお店がいっぱいあったんですよ。ちょっと変なお店に紛れ込んじゃうと、パンクのおっさんとかレゲエの危ない人なんかがいて……。僕はそんなお店に憧れがあったんです。
——確かに、以前は少しあった「毒っぽさ」が失われてきていますね。藤田さんはどうして古本屋さんをやろうと思ったんですか?
藤田さん:あくまで僕のイメージでしかないんですけど、東京の小さな個人経営の古本屋さんって、ご主人が暇そうにぼーっとしているイメージがあったんです。そんな姿に憧れていて、一度やってみたいと思っていたんですよ。かといってずっと続けるつもりもなくって、半年くらい続けられたらいいなと思っていました(笑)
——なかなか脱力系のいきさつなんですね(笑)。置いてある本もなかなかマニアックな気がしますけど、本を選ぶ基準ってあるんですか?
藤田さん:他の古本屋では扱わないようなものを意識的に選ぶようにしています。最初は僕個人の蔵書を置いていたんですけど、お客様が僕の趣味に合わせたものを持ってきてくれるようになりました(笑)
——見事にカラーが統一されているような気がします。古本屋さんと一緒に酒場をやろうと思ったのはどうしてなんですか?
藤田さん:ここはもともと「三味線バー」だったので、最初からカウンターがあったんですよ。せっかくカウンターがあるなら古本屋だけじゃなくお酒も出した方が面白いかなと思ったので、酒場もはじめただけなんです。僕自身お酒が好きですし。
——お酒が飲める古本屋さんって、そんなにないですよね。
藤田さん:古本屋なのに8割がお酒を飲みに来るお客様なんです。僕は「お酒のある古本屋」として営業しているのに、お客様からは「古本のある酒場」だと思われているんですよ。いくら「うちは古本屋だから」といってもネタだと思われちゃうんです(笑)
——店名にも「ニュースナック」ってついていますからねぇ(笑)。ちなみに「四ツ目長屋」というのは、どんな意味があるんでしょうか。
藤田さん:江戸時代に「四目屋(よつめや)」というお店があって、精力剤の他に媚薬や淫具なんかも売っている日本最古のアダルトショップだったらしいんですよ。最初は古本屋とアダルトショップが一緒になったようなお店をやりたかったので「四ツ目」というフレーズをいただき、マンションで営業しているので「四ツ目長屋」と名付けたんです。
——アダルトショップは諦めたんでしょうか。
藤田さん:流通が面倒だったので、アダルトショップは雰囲気だけにしています。
——先ほどのお話にもありましたけど、古本を探しに来るお客さんよりお酒を飲みに来るお客さんが多いんですよね。どんな人が飲みに来るんですか?
藤田さん:いろんな……変な人がやってきます。いい意味での変態が多いですね。クリエイターやアーティストも多いんですよ。そんなお客様達と話していると、自分が恥ずかしくなってきます(笑)
——じゃあ、クリエイティブな話題が出たりするんでしょうね。
藤田さん:そういう話もたまに出ることはありますけど、ほとんど下ネタばっかりです(笑)。下ネタには罪がありませんからね。
——平和といえば平和ですね(笑)
藤田さん:ここって僕がやっているわけじゃなくて、お客様がやってくれているお店なんですよ。勝手に貼り紙を作って貼っていったり、持ってきたステッカーを貼っていったりするんです。だから僕にも意味はわかりません(笑)。お客様が持ってきてくれた差し入れのお酒やお菓子を、お店で提供させてもらったりすることもあります。
——お客さんが作り上げるお店って感じですね。
藤田さん:僕なんか何もしなくて本当にいるだけですよ。僕がお酒を飲んで潰れちゃうと、お客様が代わりに接客してくれてます。朝方に目が覚めると食器やグラスが綺麗に洗ってあって、お会計もちゃんと済ましてあるんです(笑)。だから自分のお店っていう実感がないんですよね。
——そこまでセルフサービスだと、お客さんもお店に対して愛着が湧くんじゃないでしょうか。それにしても、半年だけやってみるつもりが2年続いてきたわけですよね。
藤田さん:お店に置いてある本やインテリアのなかには持ち主の方が亡くなっている「遺品」もあるから、なかなか辞められないんですよ。代わりにやってくれるお客様がいたら、お店を引き継ぎたいんですけどね(笑)
ニュースナック四ツ目長屋
新潟市中央区上大川前通6番町1211-5
050-3748-4278
20:00-24:00
不定休