「変わらない」を継続し、地域に根付く二代目「キッチンテーブル」。
食べる
2024.04.12
2021年9月に「キッチンテーブル」というお店をご紹介しました。当時お店を営んでいたご夫婦は「30周年まであと2年。それまで頑張りましょう」と話されていて、「あれからどうされたかなぁ」「今も営業を続けているのだろうか」と気になっていました。久しぶりに店舗の前を通ると目に飛び込んできたのは「営業中」の看板。去年の10月から「二代目キッチンテーブル」としてリニューアルしたのだそうです。今回はお店を引き継いだ水科さんにいろいろとお話を聞いてきました。

キッチンテーブル
水科 夢丸 Yumemaru Mizushina
1990年三条市生まれ。長岡造形大学に入学。リラクゼーション業やスポーツクラブで働いた後に転職。イベントの企画、運営や飲食業に携わる。2020年に勤めていた会社を退職し、新潟市内にあるクラブの店長職を担う。2023年4月から半年間「キッチンテーブル」で修業し、同年10月にリニューアルオープン。二代目店長を務める。とにかくポジティブで、知人から「コミュニケーションお化け」と呼ばれている。

コミュニケーション力を生かせる飲食の仕事で、30年続いた文化を守る。
——まずは、水科さんのこれまでのキャリアをお聞きしたいと思います。
水科さん:大学を途中で辞めて、なんだか何もしたくないなって時期があったんですよね。そんなときスリランカ人の知人が「家に来る?」って誘ってくれて。少しの間スリランカにホームステイしました。異国の文化に触れて、すごく刺激を受けたんですよね。それから香港にも行きました。それが20歳くらいの頃です。
——それからは?
水科さん:リラクゼーションの仕事に就いたんですけど、体調を崩してしまって。胸を開くほどの手術をしました。その後、リハビリも兼ねて通っていたスポーツクラブに1年半くらい勤めました。それから2015年か2016年だったかな、イベントの運営をする会社に転職しました。ずっと飲食の仕事をしたいって希望を持っていたので、しばらくして飲食業も経験させてもらいました。2020年に勤めていた会社を辞めて、それから新潟市にあるクラブの店長を務めていたんですけど、でもやっぱり飲食業に戻りたくて。初代「キッチンテーブル」からオーナーを任された知人の誘いで、僕が二代目店長となりました。
——いろいろな経験をされたことは水科さんの強みですね。
水科さん:僕の根っこにはずっと「飲食の仕事がしたい」って気持ちがありました。コミュ力の高さが自分の強みで、それをいちばん生かせるのは飲食業だと思っています。とにかく人との関わりが大好きだし、誰かと誰かがつながって新しいものを作り出す、あの感じがすごく好きで。

——初代「キッチンテーブル」さんは約30年営業されていたお店ですよね。お話が来たときは、どんなお気持ちでしたか?
水科さん:三条市出身だし、正直なところお店のことは知りませんでした。今のオーナーから誘われて、よくわからないけどふたつ返事でオッケーしたって感じ。去年の10月にリニューアルオープンを迎えて、それまでの半年間は前オーナーの大泉ご夫婦からみっちりいろいろなことを教えてもらいました。ご夫婦とは年の差もあるし、「今、何を教わっているんだろう」と思うときもありました(笑)。メニューがたくさんあって、お客さまとの距離がすごく近いっていうか「近すぎる」お店でしたね。
——ふふふ。何度かお店にお邪魔したことがあるので、よくわかります(笑)
水科さん:もうすぐ「キッチンテーブル」に関わらせてもらって1年経ちます。お客さまはこの周辺にお住まいの家族連れの方であったり、近くの会社の方であったり、とにかく地域に根付いたお店なんだなって改めて感じています。「小さい頃から来ていたんだよ」とか「高校生の頃から通っている」とかってエピソードをお話しくださる方もたくさんいました。それが「キッチンテーブル」の強みだし、これからもそういうお店であり続けたいと思います。だから内装はあまり変えていません。
——確かに、お店の雰囲気は以前のままって感じがします。
水科さん:畳だった床をフローリングに変えたくらいですかね。あとちょっと塗装を直したくらいです。看板もそのままですよ。だから代替わりしたことを驚かれることも多いです。

味と仕入れを変えない。手頃に上質なお肉を楽しめるのが「キッチンテーブル 」。
——そのまま引き継ぐ面もあれば、新しい試みもあるのでは?
水科さん:いい意味で「昭和っぽい」感じは残しつつ、やっぱりイマドキに変えたところもあります。新メニューを用意しましたし、SNSでの発信もはじめました。
——以前と変わらず、焼肉もあればお好み焼きもあればと、たくさんのメニューがあるんですか?
水科さん:少しだけメニューを絞りましたけど、焼肉もお好み焼きもありますよ。A5ランクの山形牛など、以前と同じルートで美味しくて手頃に提供できるお肉を使っています。
——これだけのメニューを覚えるのは大変だったのでは。
水科さん:お肉の切り方から、サイドメニューの味付けまでぜんぶ教えていただきました。基本のレシピはあるんですけど、最後に味を決めるところは感覚的なところもあって難しかったですね。お母さん(調理を担当していた大泉夫人)のひとつまみと僕のひとつまみは微妙に違う、みたいな。代替わりをして「味が変わった」と言われたこともありました。そこはもう、分量が正確に決まっているものではないし、機械が作るものじゃないから100%同じにはできないかもしれません。でも、できる限りお母さんの味に近づけることを意識しています。

——焼肉屋さんと言ってよいのかってくらいメニューが豊富ですよね。
水科さん:本当ですよ(苦笑)。サイドメニューの数がハンパなくて。覚えることがいっぱいでパンクするかと思いました。実際、パンクしましたけど(笑)
——長年のファンがいらっしゃるお店を引き継ぐ重圧はありませんでした?
水科さん:そういうプレッシャーはないですね。ただお店を引き継ぐ難しさは感じています。これまで何度も飲食店のスタートには関わったんですけど、どれも新規にオープンするってケースでした。「あれもこれも」ってどんどん必要なタスクをこなす作業には慣れているんですけど、引き継ぐっていうのはまたちょっと違いましたね。
——二代目らしさも出したいですもんね。
水科さん:そうは言っても、まずは味をできるだけ変えないことが大事なのかなと思いますね。値段に関しては、材料が値上がりしているので、以前と同じにできなくて。それでもリーズナブルで美味しいお肉が食べられるのが「キッチンテーブル」なので、ギリギリの金額を攻めていると思っています。いいお肉をいい値段で提供するのは簡単ですけど、「できるだけ手の届く範囲で召し上がっていただきたい」って思いは変わりません。それも「キッチンテーブル」が選ばれる理由なんだよなって、引き継ぐときに感じたんですよね。

新しい試みは二の次。まずは「変えないことを継続する」。
——改めて、新メニューをご紹介いただいてもいいですか?
水科さん:「山形牛A5ランクの極上牛丼」は、安い・うまい・早いっていう牛丼のイメージを変える一品です。上質なお肉にこだわり卵を絡めて召し上がっていただきます。それから「厳選山形牛 和牛丼寿司」も新しくメニューに加えました。

——お料理はおもしろいですか?
水科さん:おもしろいですね。もともと僕は、厨房じゃなくてホールを得意としてきたんです。40人くらいのお客さまをひとりで切り盛りしていたくらい。それが今すごく役に立っています。どんどんオーダーが入ってきても厨房で慌てずにさばけるのは、ホール経験があるからだよなって思います。
——さて、リニューアル2年目に向けてチャレンジしたいことを教えてください。
水科さん:「変わらないを継続する」って大変だと思うんです。「キッチンテーブル」は昔からの常連さんがたくさんいるお店なので、「変えずに続ける」ことがいちばん大切だと思っています。新しいことを積み上げるのは、そのあとかな。個人的には、ひとつの場所に留まるのはあまり得意ではないので、ここでの経験を次につなげたいって思いはあります。でもまずは「キッチンテーブル」の味、文化を継続することが第一ですね。

キッチンテーブル
新潟県新潟市中央区姥ヶ山6-5-18
TEL 025-286-0577
営業時間:11:30〜14:00、17:00〜22:00
第1・第3日曜14:00〜22:00
店休日:毎週水曜、第2、第4日曜
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