ワクワクする形を、紙で表現。
「のの製作所」の清野さん。

ものづくり

2025.12.02

text by Ayaka Honma

紙を使ってアクセサリーや作品を制作している「のの製作所」。代表の清野さんは、形の異なる円や三角を重ねたものや、幾何学模様を使った個性的なアクセサリーを制作しています。今回は、先日三条市の「丸井今井邸」で開催された個展、「◯展」にお邪魔して、清野さんが制作をはじめたきっかけや、作品のことなど、お話を聞いてきました。

Interview

清野 朋子

Tomoko Seino(のの製作所)

1982年三条市生まれ。大学卒業後、食品の商品開発や事務、経理の仕事を経験する。子育て中に紙を使ったアクセサリーの制作をはじめ、現在は紙アクセサリーの販売や作品の制作などを行う。今年7月には東京で、11月には三条市で個展を開催。二児の母。

紙だから実現できた、
人と被らなくて、軽いアクセサリー。

――今日はよろしくお願いします。まず、清野さんがアクセサリーづくりをはじめた経緯を教えてください。

清野さん: 紙を使ってアクセサリーをつくりはじめたのは、5年前くらいなんです。それまでは食品の商品開発や、事務仕事をずっとしていました。手芸が好きだったわけでも、経験があったわけでもなくて、むしろ細かい作業は苦手なほうだったんです。

 

――紙のアクセサリーをつくりはじめたきっかけは?

清野さん:同窓会のために、久しぶりにピアスを買ったのがきっかけです。子育て中でおしゃれに気を遣う余裕があまりなかったんですけど、新しく買ったピアスをつけたら、とても気持ちが明るくなって。自分が自分じゃないような、そんな気さえして、「アクセサリーってすごい」と実感しました。そこから、他にもアクセサリーがほしいと思ったんですけど、いまいちピンとこなくて。

 

――あらら、どうしてそう感じたのでしょう。

清野さん:せっかく買うなら普通のじゃ面白くないし、かといって大ぶりのピアスは重くてつけ続けるのも大変だったし。あとは、金属アレルギーの症状が出ることもあったので、市販のピアスを買うのも難しくて。そんなときに紙のアクセサリーのつくり方が載っている本を見つけたんです。

 

――ふむふむ。

清野さん:試しにその本を買って、アクセサリーをつくって身につけたら、感動しました。びっくりするくらい軽くて、痒くもならなくて、しかも自分の好きな形をつくれる。はじめてつくった後に、「売ってみよう」って思いました。そこからアクセサリー制作をはじめましたね。

 

――清野さんのアクセサリーは、「ペーパークイリング」と呼ばれるつくり方だそうですね。

清野さん:この技法は歴史が古いみたいで、教会で使われなくなった聖書の切れ端を巻いて、装飾しはじめたのがきっかけとも言われています。私はこの技法を使って、丸や四角、三角などをつくって、アクセサリーを制作しています。

 

――技法はどこかで学ばれたりしたんですか?

清野さん:それが、ほとんど独学なんです。最初に買った本もその通りにつくってはいなくて。「ペーパークイリング」の技法を取り入れつつも、自分の好きな形を自由につくっています。我が道を進んでいるって感じですね(笑)

 

 

小ぶりでも、存在感のあるブローチ。光の当たり方によって変わる、影のかたちも楽しめます。

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頭の中に浮かんだ形を、
大きさにとらわれず、自由に表現。

――今日お邪魔している「◯展」では、いろんな「◯」の作品を見ることができます。

清野さん:「◯展」は今年の夏に東京でも開催しました。この個展のテーマを考えているとき、丸と三角と四角の3つの形で作品をつくろうと思っていたんです。でも、丸だけでもつくりたい作品がたくさん浮かんできて。それだったら、丸だけの作品を集めた個展を開こうと思いました。

 

――丸だけでもいろんな表現があるんだと、作品からも実感できます。

清野さん:天井から吊るしている作品も畳めば丸になりますし、いろんな大きさの丸を重ねた『コラージュA』や、円を切って並べた『切断』など、ここにある作品はすべて丸いパーツだけで構成しています。アクセサリーだけじゃなくて、大きな作品や天上から吊るして動かす作品も面白いかなと思って、今回の展示にあわせつくってみました。

 

──丸の大きさや重ね方など、バリエーション豊かな組み合わせはどのように思いつくのでしょうか。

清野さん:小さい頃から、形の組み合わせを考えるのがとても好きだったんです。和室の天上の木目をボーッと見ながら、「これとそれを組み合わせたら、こんな形ができるな」って考えたり、オセロを使って模様をつくったり。そんなことをずっと考えているので、つくりたいものがどんどん出てきちゃうんです。

 

――小さい頃からのクセが、今の作品に活きているんですね。

清野さん:そうなんです。制作期間中も、目を閉じて寝ようとするんですけど、「丸をこうすると、いい形ができる」みたいに考えて寝られないこともあって(笑)。でも、いざつくってみると、なかなか上手くできなくて試行錯誤することもよくありますし、完成までに至らないものもあります。そういうときは、次はどうしたら上手くできるかを考えて、とにかくやってみることを大事にしています。

 

――創作すること自体に楽しさを感じられているのが、よく伝わります。

清野さん:自分のつくりたいものを形にすることって、とてもワクワクすることじゃないですか。イメージにピタッとハマったらすごく楽しいですし。それを、個展や展示会でお客さんに見てもらって、リアクションをもらえたときはすごく嬉しいですね。

 

『コラージュA』

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「まずは、やってみて」と、
誰かの背中を押せる存在に。

――清野さんの作品づくりを体験できるレッスンがあると聞きました。

清野さん:私の作品を見て、「つくってみたい」を言ってくださる方がいて。ひとつのアクセサリーがつくれる体験レッスンと、全部で12個の作品をつくりながら「ペーパークイリング」の技術を学べるコースレッスンをやっています。どちらも解説動画を見ながら制作していただくものになるので、場所や時間を問わず受けていただけますよ。

 

――自分でつくれるって、ワクワクしますね。

清野さん:一見、細かくて難しそうに見えるかもしれないですが、巻いて組み合わせるだけなので、初心者の方でも楽しく取り組んでいただけますよ。コースレッスンでは、ちょっとしたテクニックもお話しているので、ご自身なりにアレンジして作品づくりを楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

――清野さんが感じている楽しさを、私も体験したくなってきました。清野さんの今後の目標を教えてください。

清野さん:これからも作品をつくり続けて、新潟や東京だけではなく、全国で個展を開いてみたいですね。そしていつかは、海外でも個展ができたらって思っています。次は形の美しさやデザインなんかをもっと見てもらえるような、作品づくりをしていきたいですね。

 

――作品への創作意欲がとても伝わってきたインタビューでした。清野さんのこれからが楽しみです。

清野さん: ありがとうございます。私自身、アクセサリーをつくるために何かを学んではいなかったんですけど、「まずはやってみよう」という気持ちで、今までの活動を続けています。自由に何かをつくったり、描いたりしてみたいと思っている方の、背中を押すきっかけになれば嬉しいです。

 

『切断』はブローチとしても使えるんだとか。

のの製作所

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