沼垂に昨年オープンした洋菓子店「patisserie PALETTE(パティスリー パレット)」。親しみのあるお菓子に少し色付けを加えたような、作り手のこだわりが感じられるお菓子が並びます。甘い香りが漂うかわいいお店のなかで、オーナーの渡辺さんに、沼垂でお店をはじめたいきさつや店名に込めた思いについてお話を聞いてきました。
patisserie PALETTE
渡辺 友也 Tomoya Watanabe
1987年新潟市中央区生まれ。「にいがた製菓・調理師専門学校 えぷろん」卒業。「ホテル日航 新潟」や「ガトーシェフ三昧堂(さんまいどう)」で修業を重ね、2022年「patisserie PALETTE」をオープン。趣味は釣り、ゲーム、アニメ。
——渡辺さんがお菓子作りに興味を持ったのはいつ頃ですか?
渡辺さん:自分の進路を考えはじめた高校3年生の頃です。僕はサラリーマンには向かないと最初から思っていたので、まず手に職をつけようと思いました。両親とも料理の仕事をやっていたので、僕は被らないようにお菓子作りの道に進んだんですよね(笑)。それで「にいがた製菓・調理師専門学校 えぷろん」でお菓子作りを学んだ後、「ホテル日航 新潟」のパティスリーで10年経験を積んで、27歳でシェフを務めさせていただきました。そこはいろいろと自由にやらせていただける職場だったので、とても勉強になりましたね。
——特にどんなことが勉強になりましたか?
渡辺さん:3ヶ月ごとにメニューを入れ替えるので、お菓子メニューを開発する力がつきましたし、季節感や彩りの大切さを学ぶことができました。様々な素材を組み合わせることで複雑な味わいを出したり、他にはないような面白いメニューを考えたりしていたんですけど、でもその後に勤めた「ガトーシェフ三昧堂」では、その考えを覆されたんです。
——えっ、それはどういうことですか?
渡辺さん:僕の作ったケーキはまったく売れなかったんですよね(笑)。僕の作りたい、いくつもの素材を組み合わせた複雑な味のケーキよりも、名前や見た目だけで味が想像できる、昔ながらのベーシックなケーキの方が売れたんです。パティシエが作りたいケーキと、お客様が食べたいケーキとは違うんだとそのときに思い知りました。
——お客さんは意外性よりも安心感を求めるんですね。独立して「patisserie PALETTE」をオープンするのはその後ですか?
渡辺さん:そうです。その頃は、専門学校の同期たちがお菓子作りをやめて、どんどん転職をはじめていたんですよ。僕も将来を考えるようになって、独立してお店を開くか、他の業種に転職するかで迷っていたんです。それでお店をオープンするための物件探しと転職のための就職先探しを両方同時にやってみたら、先に物件が見つかってしまったので「patisserie PALETTE」をオープンする決心がつきました(笑)
——人生の賭けみたいなところもあったんですね(笑)
渡辺さん:すでに独立している先輩に相談してみたら「失敗したからって死ぬわけじゃない」という心強い言葉をかけてもらって、背中を押されました。何よりも自分の思うようにお菓子作りができる環境を求めていたのかもしれませんね。
——繁華街や新興住宅地でオープンしようとは思わなかったでしょうか?
渡辺さん:このエリアは周辺に老舗のお菓子さんはあるけど、うちのようなパティスリーはなかったので、ライバルがいないと思ったんです。ただ、街に若々しさや活気がないイメージを持っていたので、ちょっと心配はあったんですよね。それを不動産屋さんに相談してみると、最近は世代が変わって若いファミリーも住みはじめ、新しいお店もできはじめているので、これから変わっていくのではないかということだったので、ここでオープンすることに決めました。
——「patisserie PALETTE」を、どんなお店にしたいと思っていますか?
渡辺さん:僕はホテル時代にウェディングケーキを作っていたこともあって、ケーキって人生の節目を彩る、思い出に残るものでもあると思っているんです。だから記念日やお祝いのシーンを彩るお手伝いができるお店でありたいと思っています。
——もしかして「PALETTE」という店名は、そういう意味でつけたんでしょうか?
渡辺さん:そうなんです。「日常生活や人生に彩りを添えるお店」っていう意味なんですよ。
——「patisserie PALETTE」のお菓子は、どんなことに気をつけて作っているんでしょう?
渡辺さん:味を複雑にしすぎず、今まで皆様に親しまれてきたお菓子にちょっとだけ色づけしたようなお菓子作りを心がけているんです。あとは季節感を大切にしています。
——どんなものが特に人気がありますか?
渡辺さん:生クリームがあっさりしていて食べやすいとご好評いただいているので、生クリームを使ったショートケーキやロールケーキは人気がありますね。
——そういう声はお客さんから直接聞けるんでしょうか?
渡辺さん:そうなんですよ。ホテルにいた頃は接客をすることがなかったんですけど、今はお客様と直接お話しできる機会も多いので、ダイレクトに反応を知ることができるのは嬉しいですね。お手紙をいただいたことまであって感激しました。
——ファンレターじゃないですか(笑)。店頭のショーウィンドーに子どもの描いた絵が貼ってありましたよね?
渡辺さん:あれは近くにある「長嶺小学校」の職業体験授業で来てくれた子どもたちが、うちの店のカルタを作ってくれたんです。そんなふうに地域に根ざした、地元の方々に愛されるお店を目指していきたいと思っています。そしていつかは「地元でケーキを買うなら『パレット』」と言われるように頑張っていきたいです。
patisserie PALETTE
新潟市中央区沼垂西1-2-26
025-250-0864
10:00-18:30
月火曜休