Things

四季を感じる空間で料理と風情が楽しめる「瑞雪楼」。

料理はもちろん雰囲気も大切にしている「瑞雪楼(みゆきろう)」というお店が新潟市南区にあります。コンクリートの塀に囲まれた、トンネルのような通路を抜けた先に現れるのは、四季を感じる和空間。着物姿が素敵な女将の小林さんがお出迎えしてくれました。

 

 

瑞雪楼

小林 敬子 Keiko Kobayashi

新潟市南区生まれ。金属加工の会社で働いた後、1999年に「瑞雪楼」で働きはじめ、2003年から女将となる。現在の趣味はもっぱら食べ歩きだが、若い頃は車やバイクが好きだった。

 

飲食業を初めて経験した女性が、女将を任される。

——入口まで続く曲がりくねった通路が、ちょっと隠れ家みたいですよね。

小林さん:交通量の多い国道8号線に面しているので、少しでも静かな非日常空間を守りたいという思いがあって、コンクリートの塀で囲んでいるんですよ。エントランスから客室へも、わざわざ遠回りして入る造りになっているんです。

 

 

——だから静かで落ち着く空間になっているんですね。こちらのお店はいつ頃オープンしたんでしょうか。

小林さん:1996年にオープンしました。その前は中央区で「雪国家」というお店をやっていたんです。

 

——ああ、知ってます! 県庁の近くのお蕎麦の美味しいお店でしたよね。お店をはじめたいきさつをご存知でしょうか。

小林さん:社長は5人兄弟の末っ子だったんです。争いを避けるために兄弟が別々の仕事をすることになり、誰もやらなかった飲食業を社長がやることになったそうです。それで横浜のお蕎麦屋さんで修業をして、19歳のときに自分のお店を横浜にオープンしたんですよ。そこで貯めた開店資金を元に、新潟へ帰ってから「雪国家」をオープンしました。県庁が移転してきたことも重なって繁盛していたので、南区に姉妹店として「瑞雪楼」をオープンしたんです。

 

——ずいぶん離れたところで姉妹店をはじめたんですね。

小林さん:ゆったりとお料理を楽しんでもらえる空間を求めていたので、自然豊かな広いお庭が造れる場所で「瑞雪楼」をオープンしたんです。

 

 

——小林さんは社長さんのお身内なんでしょうか?

小林さん:血縁でもなんでもないので「雇われママ」みたいなものです(笑)。以前は金属加工業の会社に勤めていたので、飲食業はまったくの初体験でした。このお店で働くことになったのは、以前食事したときに雰囲気の良さが印象に残っていたのと、求人情報に「社長秘書」と記載されていたからなんですよ(笑)。だから最初は接客ではなく事務仕事をやっていたんです。

 

——それがどうして女将さんに?

小林さん:私が入社してすぐに新井店がオープンして、社長がそっちに行っちゃったんです。その間は経験の浅い板長と私のふたりで頑張ってお店を支えたんですが、そのときの頑張りを認めてもらえたのか、社長から女将をやってほしいと頼まれたんです。

 

——経験の浅い小林さんが女将としてスタッフをまとめるのって、最初はかなり大変だったんじゃないですか?

小林さん:お料理を盛り付ける葉っぱはよく洗ってから使っているんですけど、たまたま見た目の汚いものが混ざっていたことがあったんですよ。それを見つけたので板長に「この葉っぱに盛り付けたお料理を、貴方だったら食べられるの?」と言って注意したんです。ところがスタッフの間ではそれが変なふうに伝わっちゃって、私が「この皿を舐めてみろ」と言ったことになっていたんですよ(笑)。それを聞いたスタッフたちは、私に協力してくれるようになりました(笑)

 

自然のままにこだわっている庭園や生け花。

——席から見えるお庭の眺めに癒されますね。

小林さん:いわゆる日本庭園とは違って、自然の雑木林を意識しているんですよ。だからブナの木も小千谷の山まで採りにいったんです。岩に生えている苔もみんなで川まで採りにいってきました。冬以外は四季を通していろいろなお花が咲くようにしています。

 

——よく見ると、あちこちの岩の上に亀の置物があるんですね(笑)

小林さん:生き物がいた方がより自然を感じてもらえると思うんですけど、さすがに本物は難しいので置物で代用しています(笑)。今は冬眠していますけど、暖かくなると蛙も現れるんですよ。いる場所も変わっていることがあるので、そんなところも楽しんでいただきたいですね。

 

 

——「自然」といえば、エントランスにある生け花も見事ですね。あれはどなたが生けているんですか?

小林さん:あの花は私が生けているんです。最初は社長のいとこにお願いして、週に一度メンテナンスしてもらっていたんですけど、夏場になると枯れやすくなって一週間も持たないので、私が代わりにやるようになったんです。

 

——女将さんは以前生け花をやっていたことがあるんですか?

小林さん:花嫁修業の一環でお茶や生け花を習っていたことがあるんです。生け花では雅号もいただいたんですよ。当時はそれほど興味もなかったんですけど、後になって役立つようになるとは思ってもいませんでした(笑)

 

——経験は財産ですね(笑)。花を生ける際に意識していることがあったら教えてください。

小林さん:お庭と同じように、できるだけ自然のなかに生えているものを使うようにしています。近所のお庭で枝を剪定しているのを見かければいただいてきますし、土手や畑に生えている雑草も使っています。最近ではご近所の方から「生け花に使うようなら持っていっていいよ」と譲ってもらえるようになりました(笑)

 

 

——ご近所の方とのコミュニケーションも取れちゃうんですね。お客さんの反応はいかがですか?

小林さん:生け花を楽しみにしてご来店くださるお客様も多いんです。梅のつぼみやススキの穂に春や秋を感じて喜んでくれる方もいます。生け花の前で記念写真を撮影するお客様も多いですよ。お客様の大切な思い出のなかに、私の生けたお花が残ってくれるのは嬉しいですね。

 

——よ〜く見ると、生け花にも小鳥がいるんですね。しかも卵まで生んでるじゃないですか(笑)

小林さん:庭から丸い石を探してきて卵に見立てたんです。最初は3つだったのに、いつの間にか4つに増えているんですよ(笑)

 

料理はもちろん、生け花や着物にこだわり続ける。

——こちらではどんなお料理が楽しめるんですか?

小林さん:お蕎麦や懐石料理を楽しんでいただけます。ポン酢ひとつ取ってみても、既製品を使わずにしっかりと手作りしているんです。味はもちろん見た目でも楽しんでいただけるよう、盛り付けや彩りにも気を使っています。お酒の器もおかわりのたびに変えているんですよ。

 

 

——お料理にも気配りを感じますね。

小林さん:お料理もお店も時代に合わせて変えていくこともありますけど、変わらずに守り続けたいこともあるんです。最近では生け花を飾ったり着物を着たりしてお客様をおもてなしするお店が少なくなりましたけど、「瑞雪楼」ではこだわり続けていきたいと思っています。生け花を造花にしたり、着物を作務衣にしたりして簡略化するんだったら、いっそやめた方がいいとさえ思いますね。

 

——本物には本物の良さがありますよね。

小林さん:ありがとうございます。お客様をおもてなしする気持ちにこだわりながら、これからも安らげる空間を守り続けていきたいですね。

 

 

 

瑞雪楼

新潟市南区保坂293-1

025-372-0800

11:30-15:30(14:30L.O.)/16:30-21:00(20:00L.O.)(月火曜は昼営業のみ)

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP