狭く、深く、続けていく。
西堀通「PROVEN」の遠藤さん。
カルチャー
2026.01.10
南浜通から西堀通へ抜ける小路の途中に、「PROVEN」というセレクトショップがあります。オーナーの遠藤さんは、お店の他に、ラジオ番組のパーソナリティーやDJとしても活動されている方。遠藤さんのこれまでのことや、お店のこと、「発信者」としての遠藤さんの考えなど、いろいろとお話を聞いてきました。
遠藤 博美
Hiromi Endo(PROVEN)
1974年新潟市出身。10代の頃から音楽とファッションに興味を持ち、アパレルで働きはじめる。24歳のときに自身のお店である「PROVEN」をオープン。現在は、ラジオパーソナリティーやDJとしても活動している。
「まずは行動してみる」。
遠藤さんが、お店をはじめるまで。
――遠藤さんは、ご自身のセレクトショップの運営だけではなく、他にも幅広い活動をされていますよね。
遠藤さん:アパレルの仕事がメインで、西堀通で「PROVEN」というお店を25年ほどやっています。他には「FM KENTO」さんで週1回ラジオ番組をやっていたり、市内のイベントやいろんな場所でDJとして活動したりしています。
――どうして、ファッションや音楽を仕事にしようと?
遠藤さん:10代の頃から音楽とファッションが好きだったんです。小学生のときに、当時まだ普及していなかったミリタリーのアイテムに惹かれていましたし、パンクの象徴と言われている「SEX PISTOLS」のブートスウェットを学校に着て行って問題になったりもしました。ファッションの仕事を目指したきっかけってあまり覚えていないんですけど、その当時からなんとなくファッションは好きだったのかなって思っています。
――音楽はいつ頃から?
遠藤さん:音楽は明確に覚えていますよ。今思うと、当時から旋律が暗めでテンポの速いマイナーコードの曲が好きで。深夜にやっていた小林克也の『ベストヒットUSA』で、「Metallica」というバンドのMVを観て衝撃を受けたんです。速い、暗い、怖いって感じだったんですけど、「自分が求めていたのはこれだ」って思いました。今まで買った音源はひとつも手放してないくらい、ずっと音楽は好きでしたね。
――ファッションもアパレルも、そのときからアンテナを張っていたんですね。
遠藤さん:それを意識したことはあまりなかったかもしれないです。どっちかっていうと、何かしらでちょっと目立ちたい、モテたい、みたいなのがあったんだと思います。勉強もスポーツも上位には食い込んでもトップにはなれなかったので、何か飛び抜けたものがほしかったのかもしれません。
――それが原動力だったんですね。ファッションの仕事をすることにしたのは、どんな経緯が?
遠藤さん:ファッションと音楽、どっちを仕事にするかって考えたときに、音楽のほうが好きだったから洋服を選んだと思います。2番目に好きなことを選んだら、バランスがいいかなって思って。それからアパレルで修業を積んで、24歳のときに自分のお店を出しました。
――独立する方の中では、かなり早い方だったのでは。
遠藤さん:特に目標にしていたというわけではなかったんです。目標とか未来予想図をつくると、それに向けてやりたくないこともしなきゃいけなくなるのが嫌で。ここがポツンと空いているのをたまたま見かけて、インスピレーションだけで「借りよう」って思って、すぐ電話したんです。
――ためらわず、行動に移しているのがすごいです。

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お店を続ける中で、
変わったこと、変えないこと。
――お店のオープンから25年が経って、このお店はどんなふうに変化したんでしょう。
遠藤さん:お店やスタッフの数に変化があったり、オンラインでの販売をはじめたりはしましたが、根本的な考え方は変わっていないと思います。「こうしたら儲かる」みたいな方程式は分かるんですけど、それを使おうとは思わなくて。扱っているブランドの数は、特にこの考え方が色濃く出ていますね。
――と、いいますと?
遠藤さん:今のセレクトショップって、たくさんのブランドのアイテムを少しずつ取り扱う、みたいなのがセオリーだと思うんです。それに対して、ここで取り扱っているブランドの数は驚くほど少なくて。売れるから商品を入れるっていう考え方じゃなくて、好きなブランドだけを扱いたいって思っています。
――徹底して、やりたいことをする、という考え方なんですね。
遠藤さん:お店をやってきた中で、ちょっとした変化もありました。障がいを持つ方が「さをり織り」を使ってつくった、ヘアゴムやコースターなども販売をはじめたんです。これについては、応援したいという気持ちと、アイテムの可愛さが等価交換をしている感覚でやっていて。これはきっと、オープンした当初にはできなかったかもしれないな、と思います。
――長くお店を続けられてきたからこその変化ですね。お客さんの層は今、どんな感じですか?
遠藤さん:修業時代から数えると30年弱通ってくれているお客さまもいます。中には独身から結婚して、子どもができて家を建てて、みたいにライフステージが変化してもずっと来てくださる方もいらっしゃいます。もちろん、最近お店を知ってくれた若い子も来てくれます。僕のお店のスタイルが、一周回って新鮮なのかもしれないですね。
――新鮮、ですか。
遠藤さん:お店の見方は人それぞれですけど、今のスタンダードなセレクトショップをM-1グランプリとするならば、僕のお店は浅草の劇場でやっている落語なのかなって思うんです。このスタイルをいいと思ってついてきてくれるお客さまに「変わらないですね」って言われるようにしていきたいです。


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ラジオは音楽を知るきっかけに。
発信者としての遠藤さんのこれから。
――遠藤さんは20年以上、ラジオ番組をされていますね。
遠藤さん:FM KENTOさんで週に1回番組をさせてもらっています。企画からゲストの選定、アポイントまでひとりでやっています。この番組は音楽のことをお話する番組ですが、音楽好きだけのものにはしたくないんです。たまたま聴いてくれた人でも、どこかに笑いがあって、置いていかれないように番組をつくることは、すごく大事にしています。
――不特定多数の人に聴いてもらう、ということを意識していると。
遠藤さん:音楽を知らない人に「面白いな」って思ってもらいたいんです。僕の番組は、音楽のことを深く知ってもらうものではなくて、それを知る入口になるようなものにしていきたいんです。これは、DJとしての活動でも同じで、たまたま僕が流している音楽を聴いて「こんな音楽があるんだ」って思ってもらえたら、それで十分だと思うんです。
――なるほど、そんなふうに考えて発信をされているんですね。
遠藤さん:この歳になると自分を前面に出すのは少し違うかなって感じるようになりました。だから「こんなことをやりたいな」って思ったときも、自分でやるより、誰かと一緒にやる方が面白いんです。東区の「bond…」さんで不定期でやっている「WEEKEND CLUB」っていうイベントはリーダーがいなくて、ただ3人の同等の仲間で各持ち場を担当していて、僕が前に出る必要もあまりないから、すごく楽しいんです。
――リーダーというよりはプレイヤーになりたい、みたいな感じですね。
遠藤さん:コマとして使われる、っていう方が近いかもしれないですね。「遠藤さんってなんでもできますよね」って言われることもあるんですけど、今の年齢になって、人に使われたいなって思うようになったんです。「こんな企画をやるので、遠藤さん取材してもらえませんか」、みたいな。こっちの方が楽しいし、表に出やすいなって思うんです。
――なるほど。そんな遠藤さんの今後の目標を教えてください。
遠藤さん:特にないですね、数週間先を考えるくらいで十分です。その先の目標を立てちゃうと、目標のためにやりたくないこともしないといけないですから(笑)。たまたまの出会いや、その時々で浮かんだことを、すぐにかたちに出来たらなって思っています。

PROVEN
新潟市中央区西堀通6番町887 1F
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