自然を克明に描く写実油彩画家「橋本直行」。
カルチャー
2021.03.15
ある画家さんの存在を知って、ホームページを探してみると、開いたページにはいくつもの写真が並んでいました。「……あれ? 絵を描いているはずなのに」と思いながらよく見てみると、それは、まるで写真のような油絵だったんです。今回は、写真と見間違えてしまうほどの写実技法によって新潟や沖縄の風景、人物などを描いている寺泊在住の画家・橋本直行さんにインタビューしてきました。

橋本 直行 Naoyuki Hashimoto
1962年長岡市生まれ。寺泊在住の油絵画家。巻高校卒業後、創形美術学校造形科に進学。卒業後はアルバイトや絵画教室をしながら制作活動に励む。現在は画家としての活動に加えて、新潟デザイン専門学校 NCADの非常勤講師としても活躍。
美術の選択授業で触れた、初めての油絵。
――橋本さんは、どんなキッカケで油絵と出会ったんですか?
橋本さん:はじまりは中学の美術の教科書です。古典的な油絵が載っていて、その描き方がすごいと思ったんです。それで高校の選択授業で美術を選んで、初めて油絵を描きました。
――高校を卒業してからの進路も美術系の大学とかですか?
橋本さん:東京藝術大学に行きたかったけど、受験に失敗して当時通っていた「すいどーばた美術学院」の系列校である「創形美術学校」へ入りました。その造形科で油絵について本格的に学びはじめたんです。

――学校ではどんなことを学ぶんですか?
橋本さん:油絵に使う絵具は、顔料にリンシード油やポピー油などを混ぜて作ります。だからその材料についての座学や、デッサンなどの技法。基本的なことがほとんどですね。
――その中で、特に興味深かった学びってありますか?
橋本さん:ん~、それなら油の組成についてですね。リンシード油やポピー油というのは植物性油で、大きく分類するとサラダ油と同じグループです。これらの油と顔料を混ぜて絵具を作ったり、油の代わりに生卵を使ったテンペラ絵具を作ったり、画材についての深い知識を学べたのは面白かったですね。

新潟と沖縄の景色。そして自分が惹かれるモノたち。
――ホームページで、橋本さんの油絵を拝見しました。モチーフは風景画が多いんですね。
橋本さん:基本的に身の周りの自然を観察して、惹かれるモノを描きます。私は今、寺泊に住んでいるから周辺の自然、そして美術学校時代から通い続けている沖縄の風景などが主なモチーフです。
――沖縄の絵を描いているのは、どうしてですか?
橋本さん:創形美術学校に通っていたときに、奄美大島の熱帯自然を描いている田中一村が紹介されていたテレビ番組をたまたま観たんです。それで彼の絵に惹かれて、実際に沖縄に行って海の景色とか見てまわったんですよ。そのときに「こんな景色を絵にしたい」と思うようになりました。

――なるほど。それにしても、どの作品も写真みたいにリアルですよね。油絵ってこんな細かに描くんだって、とても衝撃でした。
橋本さん:絵を描きはじめた頃から写実的に描きたいと思っていて、創形美術学校を卒業してからフランスやベルギー、オランダといったヨーロッパの美術館をまわりました。本物らしく描いてある絵は、やっぱり実物を見てみないとって思ってね。その経験もあってか、自分の絵は、古典的なヨーロッパの写実が手本になっているんですよ。
――ヨーロッパの。写実画の世界もいろいろあるんですね。
橋本さん:そうなんです。でも、題材は沖縄を含めた身のまわりのモノ。主に私が好きな自然です。海だって観察しているといつも様子が違っているから、一度描いた風景でも、また新しい発見があるのが楽しいですよね。

描いているともっと描きたくなる。でも、描き過ぎるとダメになる。
――ちなみに、1枚描くのにどのくらいの時間がかかっているんですか?
橋本さん:キャンバスのサイズによるから一概には言えないけど、1年にすると大体6~7枚ぐらいのペースで描いていますね。今描いている人物画のキャンバスサイズは50号です。縦横が1mぐらいかな。これです。

――おお! 大きい! そして、これも写真みたいで素敵ですね。もう完成しているんですか?
橋本さん:いやいや、これは未完成ですよ。腕の辺りはほぼ仕上がっているけど、カーテンなんか下書きだし。今、ちょうど顔を描いている最中ですね。
――これで未完成……。どのタイミングで描き終えるのか、想像ができないですね。
橋本さん:描いていると描きたくなるし、描き過ぎてダメにしてしまうことだってあります。折り合いをつけるというか、欲求をそこで終わらせるというか、筆を置くタイミングって自分で決めるしかないんですよね。時間が経ってから良く見えたり悪く見えたりするんじゃなくて、いつ見ても同じように「いいな」って思えることを目指して。絵って難しいですよね。
――沖縄や新潟の景色など、今までにいろんな絵を描いてきたと思いますが、これから先、一度は描いてみたい題材ってあるんですか?
橋本さん:そこに行っていいと思ったら描いているから、「こういうのを描きたい」「これを描いてみたい」っていう思いはないんですよね。抽象的だけど、あえて描きたいものがあるとしたら、今までに積み重ねてきたことからの新たな発見かな。光や時間によって自然はいろんな表情を見せてくれるから、そんな面白さを絵にしたいですね。

橋本直行
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